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京大上海センターニュースレター
第284号 2009年9月21日
京都大学経済学研究科上海センター
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目次
○ 「中国経済研究会」のお知らせ
○ 中国自動車シンポジウム:中国農村におけるモータリゼーション
○
中国・上海ニュース 2009.9.14-2009.9.20
○ 09年8月:暴動情報検証
○ 【中国経済最新統計】(試行版)
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「中国経済研究会」のお知らせ
2009 年度第5回目の研究会は日本を代表する経済学者大塚啓二郎教授を迎えて開催されますので、大勢のご参加を心待ちにしています。
記
時 間: 10月20日16:30-18:00
場 所: 京都大学吉田キャンパス・法経済学部東館3階第3教室
報告者: 大塚啓二郎(国際開発高等教育機構研究員、政策研究大学院大学教授)
テーマ: 「産業集積の発展過程:中国、ベトナム、アフリカの比較」
講師紹介:
■略歴:1971年北海道大学農学部農業経済研究学科卒、74年東京都立大学社会科学研究科修士課程修了、79年シカゴ大学経済学研究科博士課程修了、同年エール大学経済成長研究所ポストドクトラルフェロー、80年東京都立大学経済学部講師、81年同助教授、86-89年国際稲研究所客員主任研究員兼任、91年東京都立大学経済学部教授、93-98年国際食糧政策研究所客員研究員兼任、2001年本学連携教授、03年FASID大学院プログラムディレクター(現在に至る)。
■現在の研究対象:1.日中台の産業発展パターンの比較研究、2.貧困の動学的変化の研究
■受賞:1993年、アメリカ農業経済学会賞 (The Quality of Research Discovery);1995年、日経・経済図書文化賞; 1999年、日本農業経済学会誌賞; 2004年、NIRA大来政策研究賞;2004年、日経・経済図書文化賞など
■著作:『中国のミクロ経済改革』(共著)日本経済新聞社、1995年;『産業発展のルーツと戦略:日中台の経験に学ぶ』(共著)知泉書館、2004年;The Emergence of Land Markets in Africa: Assessing the Impacts on
Poverty and Efficiency.(共著) Baltimore, MD: Resources
for the Future, forthcoming in 2008 。他、著書や国際雑誌論文多数。
注:本研究会は原則として授業期間中の毎月第3火曜日に行います。2009年度における開催(予定)日は以下の通りです。
前期: 4月21日(火)、 5月19日(火)、 6月16日(火)、7月21日(火)
後期: 10月20日(火)、11月17日(火)、12月15日(火)、1月19日(火)
(この件に関するお問い合わせは劉徳強(liu@econ.kyoto-u.ac.jp)までお願いします。なお、研究会終了後、有志による懇親会が予定されています。)
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京都大学上海センター・東京大学ものづくり経営研究センター
共催
中国自動車シンポジウム
中国農村におけるモータリゼーション
――多元的発展プロセスの下での参入戦略――
後援:京都大学上海センター協力会
2009年11月7日(土) 13時
京都大学百周年時計台記念館百周年記念ホール
総合司会 京都大学大学院経済学研究科教授 徳賀 芳弘
13:00-13:10
挨拶 京都大学大学院経済学研究科長
八木紀一郎
東京大学ものづくり経営研究センター 新宅純二郎
13:10-13:30
京都大学大学院経済学研究科 教授 塩地 洋 汽車下郷と参入戦略
―テーマと報告構成―
[第1部 中国農村における多元的発展プロセス]
13:30-14:00
桃山学院大学経済学部 教授 厳 善平 中国農村の経済社会構造
14:00-14:30
東京大学社会科学研究所 教授 田島 俊雄 軽型車から農用車へ―中国的モータリゼーションの展開過程―
同現代中国研究拠点・北京研究基地代表
14:20-14:40
小島衣料 元社長 小島 正憲 農村の交通事情
15:00-15:20
同志社大学商学部 准教授 西川 純平 農村における販売店・修理工場・中古車
[第2部 いかに農村に参入するか]
15:40-16:00
大阪商業大学経営学部 教授 孫 飛舟 石家庄市近郊農村でのアンケート調査
16:00-16:20
東京大学ものづくりセンター 助教 李 澤建 民族系メーカーの農村戦略
16:20-16:40
熊本学園大学経済学部 准教授 三嶋 恒平 タイにおける日系自動車メーカーの農村戦略
16:40-17:10
伊藤忠商事 シニアフェロー 石岡 徹 日系メーカーによる中国農村戦略
17:10-17:15
閉会挨拶
17:30-18:30
懇親会 カンフォーラ
司会 京都大学大学院経済学研究科 教授 劉 徳強
挨拶 京都大学上海センター協力会 副会長 大森經徳
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中国・上海ニュース 9.14-9.20
ヘッドライン
■ 中国:国有企業の1-8月利益が19%減、業績改善傾向は続く
■ 新型インフル:中国各地で集団感染、香港では死者も
■ 経済:7月末の米国債保有高は8005億ドルに=6月の売却分ほぼ買い戻す
■ 商務部:8月、海外からの対中直接投資額が09年初のプラス成長
■ 企業:中国版ナスダック開設へ、上場企業の審査本格化
■
人口:2033年、人口15億人でピーク迎える
■ 産業:中国は世界一の商標大国、09年の申請数が100万越え
■
台湾:中国に配慮し国連加入を申請せず、代わりに実務的組織への加入を打診
■ 北京:新築住宅価格が6カ月連続上昇、不動産市場の回復傾向続く
■ 河南:「漢魏洛陽古城」の城壁900メートルが一般公開
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09年8月:暴動情報検証
09.SEP.09
美朋有限公司董事長
中小企業家同友会上海倶楽部代表
上海センター外部研究員 小島正憲
8月は実地検証が必要な規模の暴動は少なかったが、環境汚染に対する住民の抗議が目立った。
1.のみ検証ずみ。2.~8.は未検証、情報のみ。 ※暴動レベル基準は文末に掲示。
1. 8/31 福建省泉州市泉港区峰尾鎮で、工場汚水に住民1万人抗議。 暴動レベル2。
・峰尾鎮誠平村では、湄州港氣碱工場とその汚水処理場からたれ流されている汚水とその悪臭のために、8/04、2人の中年女性が病気になった。この2人の家族が、8/04以降、政府や汚水処理場や工場に抗議を続けていたが、政府からは明確な返答がなかった。また従来からこの村には癌患者が多く、浜辺では海産物が臭くて売り物にならなくなっており、住民の不満が高まっていた。8/31、住民の1人が癌で死亡したので、住民1万人以上が政府と汚水処理場に抗議のデモを行った。鎮政府の副鎮長がデモ隊の説得に 当たっているとき、激高して女性住民を殴ったため、住民側も副鎮長を車の中に押し込め監禁し、悪臭を実際に体験させようとした。2日後に釈放。
・武装警察が1600人出動し、騒ぎを鎮めようとしたが、住民側は投石したりパトカーを破壊するなどした。警察が催涙弾や空砲を撃ったので、住民数十人が混乱して負傷。
・峰尾鎮は人口7万人、誠平村は1万人。8/31、住民は政府に、工場を移転させるか、住民の移転先を確保するかのどちらかを迫った。9/10の段階で、政府からの解決策の提示はない。住民は汚水処理場の前で寝起きして、24時間監視を続行中。同地区では、2007年4月にも化学工場の汚染問題をめぐり、8千人規模の抗議事件が発生。
2. 7月末~ 湖南省瀏陽市鎮頭鎮で、カドミウム汚染。村民連日抗議。 暴動レベル0。
・鎮頭鎮では、村人2人が湘和化学工場のカドミウム汚染の疑いで異常死。村民が鎮政府と公安局派出所を包囲し、原因の究明を訴えて、連日大規模な抗議を続けている。当局は、8/01、環境保護局長と副局長を停職処分、工場の閉鎖、生産停止処分を決定。
3. 8/11~15 河南省濮陽市の林州鉄鋼有限公司で3000人のストライキ。 暴動レベル0。
・国営企業:林州鉄鋼有限公司の従業員約3000人が、公司の私営企業への売却に伴う大幅人員削減やその補償金を不服として、11日から政府や公司幹部を人質に取り、工場を占拠していた。地元政府が武装警察を出動させ、15日未明に収束させた。また地元政府は民間売却を一時凍結して説得に当たった。
・先月、吉林省では同様の鉄鋼業の再編にからんで、新社長が労働者に殴り殺されており、中国鉄鋼業界での企業の買収や合併が問題視されている。
4. 8/08 湖南省武岡市 住民約1000人、鉛汚染に抗議。 暴動レベル1。
・武岡市に鉛汚染が広がっていることがわかり、住民約1000人がマンガン精錬工場に抗議。道路を封鎖、パトカーを壊した。鉛中毒の疑いで検査を受けた子どもたちの7割近くが基準値を超えていた。
・汚染源とされるマンガン精錬工場は無許可営業をしており、公司の責任者2名が逮捕。政府との癒着が疑われており、現在調査中。
5. 8/11 吉林省 白山金鉱山で近隣農民が道路封鎖。 暴動レベル0。
・豪州の公司が保有している「白山」金鉱山への道路を、近隣農民20数名が封鎖した。公司は一時操業を停止した。
・農民側が、金鉱山の排出物を運ぶ河川の水質汚染に抗議したもの。
・公司側は、農民側の主張が不当であると発言しており、関係当局と調整の上、近日中に操業再開の予定。
6. 8/17 陝西省宝鶏市鳳翔県で鉛公害に、数百人の住民が抗議。 暴動レベル1。
・鳳翔県では、調査の結果、子どもたちが鉛中毒になっていることが判明したため、住民数百名が東嶺集団鉛・亜鉛精錬公司に押しかけ抗議をした。その際、住民が公司の柵を壊して敷地内に進入し、トラックなど10台ほどを壊した。
・約100人の警察が出動し、市長も駆けつけ、住民の移住や医療保障について解決する方向の提案をしたので収束。
7. 8/21 重慶市 警察幹部を拘束。 暴動レベル0。
・重慶市では、今年6月から市内の暴力組織の摘発を強化していた。主要暴力団の幹部100人余をはじめとして、地元経済界の顔役を含む1500人余、市司法局長や警察幹部少なくとも6人を拘束した。
・重慶市では、古くから暴力団がはびこり、政府幹部の汚職やそれに抗議する住民の暴動が頻発していた。昨年からの私の暴動情報調査でも重慶市の事件が多かった。
8. 8/22~9/03 湖南省娄底市冷水江市の鉱山で大ストライキ。 暴動レベル0。
・冷水江市の湖南省湘煤集団・金竹山鉱業有限公司で、退職金問題をめぐり労働者5000人余りがストに突入。現在も続行中。
・同企業は上場に伴う会社の再編で、労働者を一時解雇して、新会社で再雇用する方針。労働者は永年勤続者が多く、新会社に移行することによって既得の権益が失われることを恐れ、一時解雇時点での退職金の支払いを求めてスト。
附9. 8/27 全人代常務委員会 武装警察法を可決。
・全人代常務委員会は、武装警察部隊が行う保安任務の範囲を規定した人民武装警察法を可決した。
附10.ウルムチ市でラビア・カーディル氏所有のビル3棟、強制取り壊し開始。
≪私の暴動評価基準≫
暴動レベル0 : 抗議行動のみ 破壊なし
暴動レベル1 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以下(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ
暴動レベル2 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以上(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ
暴動レベル3 : 破壊活動を含む抗議行動 一般商店への略奪暴行を含む
暴動レベル4 : 偶発的殺人を伴った破壊活動
暴動レベル5 : テロなど計画的殺人および大量破壊活動 以上
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【中国経済最新統計】(試行版)
上海センターは、協力会会員を始めとする読者の皆様方へのサービスを充実する一環として、激動する中国経済に関する最新の統計情報を毎週お届けすることにしましたが、今後必要に応じて項目や表示方法などを見直す可能性がありますので、当面、試行版として提供し、引用を差し控えるようよろしくお願いいたします。 編集者より
|
① 実質GDP増加率 (%) |
② 工業付加価値増加率(%) |
③ 消費財 小売総 額増加率(%) |
④ 消費者 物価指 数上昇率(%) |
⑤ 都市固定資産投資増加率(%) |
⑥ 貿易収支 (億㌦) |
⑦ 輸 出 増加率(%) |
⑧ 輸 入 増加率(%) |
⑨ 外国直 接投資 件数の増加率 (%) |
⑩ 外国直接投資金額増加率 (%) |
⑪ 貨幣供給量増加率M2(%) |
⑫ 人民元貸出残高増加率(%) |
2005年 |
10.4 |
|
12.9 |
1.8 |
27.2 |
1020 |
28.4 |
17.6 |
0.8 |
▲0.5 |
17.6 |
9.3 |
2006年 |
11.6 |
|
13.7 |
1.5 |
24.3 |
1775 |
27.2 |
19.9 |
▲5.7 |
4.5 |
15.7 |
15.7 |
2007年 |
13.0 |
18.5 |
16.8 |
4.8 |
25.8 |
2618 |
25.7 |
20.8 |
▲8.7 |
18.7 |
16.7 |
16.1 |
2008年 |
9.0 |
12.9 |
21.6 |
5.9 |
26.1 |
2955 |
17.2 |
18.5 |
▲27.4 |
23.6 |
17.8 |
15.9 |
1月 |
|
|
21.2 |
7.1 |
|
194 |
26.5 |
27.6 |
▲13.4 |
109.8 |
18.9 |
16.7 |
2月 |
|
(15.4) |
19.1 |
8.7 |
(24.3) |
82 |
6.3 |
35.6 |
▲38.0 |
38.3 |
17.4 |
15.7 |
3月 |
10.6 |
17.8 |
21.5 |
8.3 |
27.3 |
131 |
30.3 |
24.9 |
▲28.1 |
39.6 |
16.2 |
14.8 |
4月 |
|
15.7 |
22.0 |
8.5 |
25.4 |
164 |
21.8 |
26.8 |
▲16.7 |
52.7 |
16.9 |
14.7 |
5月 |
|
16.0 |
21.6 |
7.7 |
25.4 |
198 |
28.2 |
40.7 |
▲11.0 |
38.0 |
18.0 |
14.9 |
6月 |
10.4 |
16.0 |
23.0 |
7.1 |
29.5 |
207 |
17.2 |
31.4 |
▲27.2 |
14.6 |
17.3 |
14.1 |
7月 |
|
14.7 |
23.3 |
6.3 |
29.2 |
252 |
26.7 |
33.7 |
▲22.2 |
38.5 |
16.3 |
14.6 |
8月 |
|
12.8 |
23.2 |
4.9 |
28.1 |
289 |
21.0 |
23.0 |
▲39.5 |
39.7 |
15.9 |
14.3 |
9月 |
9.9 |
11.4 |
23.2 |
4.6 |
29.0 |
294 |
21.4 |
21.2 |
▲40.3 |
26.0 |
15.2 |
14.5 |
10月 |
|
8.2 |
22.0 |
4.0 |
24.4 |
353 |
19.0 |
15.4 |
▲26.1 |
▲0.8 |
15.0 |
14.6 |
11月 |
|
5.4 |
20.8 |
2.4 |
23.8 |
402 |
▲2.2 |
▲18.0 |
▲38.3 |
▲36.5 |
14.7 |
13.2 |
12月 |
9.0 |
5.7 |
19.0 |
1.2 |
22.3 |
390 |
▲2.8 |
▲21.3 |
▲25.8 |
▲5.7 |
17.8 |
15.9 |
2009年 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
1月 |
|
|
|
1.0 |
|
391 |
▲17.5 |
▲43.1 |
▲48.7 |
▲32.7 |
18.7 |
18.6 |
2月 |
|
(3.8) |
(15.2) |
▲1.6 |
(26.5) |
48 |
▲25.7 |
▲24.1 |
▲13.0 |
▲15.8 |
20.5 |
24.2 |
3月 |
6.1 |
8.3 |
14.7 |
▲1.2 |
30.3 |
186 |
▲17.1 |
▲25.1 |
▲30.4 |
▲9.5 |
25.5 |
29.8 |
4月 |
|
7.3 |
14.8 |
▲1.5 |
30.5 |
131 |
▲22.6 |
▲23.0 |
▲33.6 |
▲20.0 |
25.9 |
27.1 |
5月 |
|
8.9 |
15.2 |
▲1.4 |
(32.9) |
134 |
▲22.4 |
▲25.2 |
▲32.0 |
▲17.8 |
25.7 |
28.0 |
6月 |
7.9 |
10.7 |
15.0 |
▲1.7 |
35.3 |
83 |
▲21.4 |
▲13.2 |
▲3.8 |
▲6.8 |
28.5 |
31.9 |
7月 |
|
10.8 |
15.2 |
▲1.8 |
(32.9) |
106.3 |
▲23.0 |
▲14.9 |
▲21.4 |
▲35.7 |
28.4 |
38.6 |
8月 |
|
12.3 |
15.4 |
▲1.2 |
(33.0) |
157.1 |
▲23.4 |
▲17.0 |
▲2.05 |
7.0 |
28.5 |
31.6 |
注:1.①「実質GDP増加率」は前年同期(四半期)比、その他の増加率はいずれも前年同月比である。
2.中国では、旧正月休みは年によって月が変わるため、1月と2月の前年同月比は比較できない場合があるので注意
されたい。また、( )内の数字は1月から当該月までの合計の前年同期に対する増加率を示している。
3. ③「消費財小売総額」は中国における「社会消費財小売総額」、④「消費者物価指数」は「住民消費価格指数」に対応している。⑤「都市固定資産投資」は全国総投資額の86%(2007年)を占めている。⑥―⑧はいずれもモノの貿易である。⑨と⑩は実施ベースである。
出所:①―⑤は国家統計局統計、⑥⑦⑧は海関統計、⑨⑩は商務部統計、⑪⑫は中国人民銀行統計による。