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京大上海センターニュースレター

296号 20091214
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

○ 「中国経済研究会」のお知らせ

○ 西安・重慶ツアーのご案内

○ 中国・上海ニュース 2009.12.7-2009.12.13

○ OMAベトナム・カンボジア視察旅行の報告

○ 間違いもよくある新聞記事

○ 読後雑感 : 09年8・10月発行本-その3 

○ 【中国経済最新統計】(試行版)

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「中国経済研究会」のお知らせ

 

2009 年度第7回目の研究会は、この度、日本に滞在中のキューバ経済研究所副所長で、東アジア経済に深い関心をお持ちのオマール・エベルレ二氏に上記テーマでご報告いただくこととなりました。めったにない機会として是非ご参加ください。

 

 

  時  間: 1215() 16301800 

  場  所: 京都大学吉田キャンパス・法経済学部東館3階第311教室

 報 告 者: オマール・エベルレ二(キューバ経済研究所副所長)

テ ー マ: 「中国、ベトナムとの比較におけるキューバの経済改革」

使用言語: スペイン語。但し、通訳有。(森口舞:神戸大学博士院生)

 

【講師紹介】

オマール氏は1984年からずっと国立ハバナ大学キューバ経済構造及び経済担当教授、国立ハバナ大学付属キューバ経済研究所副所長もされ、また1999年~2002年にはハバナ市経済担当副市長顧問をされています。

 また、社会主義をめざすキューバにあって、氏は、一貫して「経済開放」を追求されてきた著名な国際派経済学者です。氏は内外の多くの経済専門誌からの執筆依頼を受けるほか、キューバ国外で開催される経済関連国際会議にキューバ代表として頻繁に参加しており、名実ともにキューバを代表する経済学者の一人です。

 

【主要著書】

Miguel Alejandro Figueras y Omar Everleny Pérez Villanueva, La Realidad de lo imposible: La Salud Pública en Cuba, Editorial de Ciencias Sociales, La Habana, 1998.キューバの医療制度を全面的に解明したもの。

Omar Everleny Pérez Villanueva ed., Cuba: Relexiones sobre su economía, Universidad de La Habana, La Habana, 2002. キューバ人経済学者による現状分析。

Omar Everleny Pérez Villanueva ed., Reflexiones sobre economía cubana, Editorial de Ciencias Sociales, La Habana, 2004. キューバ経済の現状分析論文集

Jorge I. Domínguez, Omar Everleny Pérez Villanueva and Lorena Barberia ed., The Cuban Economy at the Start of the Twenty-First Centuy, Harvard University Press, Cambridge, 2004. アメリカとキューバ人学者による論文集

Omar Everleny Pérez Villanueva ed., Relexiones sobre su economía cubana, Editorial de Ciencias Sociales, La Habana, 2006. 2002年版の改定新版。

 

注:本研究会は原則として授業期間中の毎月第3火曜日に行います。2009年度における開催(予定)日は以下の通りです。

 前期: 421日(火)、 519日(火)、 616日(火)、721日(火)

  後期: 1020日(火)、1114日(土)1215日(火)119日(火)

 

(この件に関するお問い合わせは劉徳強(liu@econ.kyoto-u.ac.jp)までお願いします。なお、研究会終了後、有志による懇親会が予定されています。)

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大陸横断鉄道と三峡水運の中継点、西部大開発の中心都市

西安・重慶ツアーのご案内

開催日時 2009322()-27()

 日中友好経済懇話会が主催し、上海センター協力会、大阪能率協会、北東アジア・アカデミック・フォーラムなどの後援による中国視察ツアーが今年も企画されています。今回のこのツアーは

     連運港を起点とする大陸横断鉄道の中継点西安を中心とする西部の物流調査

     三峡ダムによって大型船舶の通航が可能になったといわれる重慶の河川物流の利用状況の調査

     西部開発の主要拠点である2都市の活力を昨年、一昨年の中部視察都市のそれと比較する。

     長島精工、ダイキン工業、長安フォードマツダ工場の現地視察

     京都大学との交流協定を持つ西安交通大学との交流

という5つのテーマをもったもので、協力会参加の三統株式会社など多くの会員様のご協力を得て企画準備を進めています。具体的な日程は以下のとおりです。

3/22

CA利用

関空から北京経由で西安入り。

西安交通大学のレクチャーを受ける

西安泊

3/23

長島精工、西安ダイキンを訪問

唐楽宮でディナー

西安泊

3/24

陝西省歴史博物館、始皇帝陵などを視察後、国内線にて重慶に移動

重慶泊

3/25

在重慶日本総領事館を訪問

長安フォードマツダと物流企業を視察

重慶泊

3/26

河川物流の視察

重慶市内戦争遺跡と世界遺産大足の視察

重慶泊

3/27

重慶-北京-関空で帰国

 

予定しています旅行費用は、189,000(概算、21室利用)です。ご希望の方は2010130日までに以下までご連絡いただければ幸いです。

602-8026 京都市上京区新町丸太町上る春帯町350 機関紙会館2F 日中友好経済懇話会訪中団事務局 竹内章 FAX 075-254-2341

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中国・上海ニュース 12.7-12.13

ヘッドライン

■ 中国:2010年度の中国経済における6つの主要政策

■ 中国:1-11月固定資産投資、32%増の218兆6600億円

      中国:収入格差が深刻、10%の高所得層が市民財産の45%占める

■ 鉄道:中国版新幹線、拡大急ピッチ=武漢~広州線、26日に開業-最高時速は350キロ

■ 社会:安価な労働力供給に限界=専門家は「第二子許可を」と提案

■ 産業:自動車保有台数、2020年に4倍増の2億台へ

            調査:中国本土の7割が「過去6か月で純資産が大幅増加」

■ 産業:神戸製鋼、上海に溶接材料・溶接システムの販売会社

      陝西:乳業会社の社長逮捕、メラミン混入品を偽装して5トン販売 

■ 新疆:新疆トップ更迭か=7月の暴動で批判

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京大上海センター協力会副会長の大森です。会員の皆様には、平素から京大上海センター及び同協力会をご支援下さいまして誠に有難うございます。改めて厚く御礼申し上げます。

 さて、私が京大関係以外にもう一つ力を入れております(社)大阪能率協会(京大上海センター協力会の法人会員)アジア・中国事業支援室で、私が団長として去る10月にベトナム・カンボジア視察旅行を行いましたので、報告させて頂きます。主な訪問先は、日本大使館、ジエトロ・ハノイセンター、現地パナソニック子会社、ダナン市外務局、ダナン進出の日系企業2社、ホーチミン在の元松下電器現地社長、アンコールワット等です。昨年のインド、ネパール視察結果も含め、簡単な3カ国の比較表を作りました。ご参考として頂ければ幸いです。又、本報告は(社)大阪能率協会の機関誌”産業能率”12月号に掲載したものをそのまゝ転載して頂きました。

 

OMAベトナム・カンボジア視察旅行の報告

(社)大阪能率協会 副会長 アジア・中国事業支援室 最高顧問

京都大学上海センター協力会 副会長 大森經徳 

 私達の(社)大阪能率協会(OMA)中国事業支援室は、中国内の主要工業地帯の視察を終了した2007年末に、その後の世界情勢を展望し、今後はアジアの時代だと読み、200841日から「アジア・中国事業支援室」と改称し、200810月に、先ずインド・ネパール視察を実施しました。今年2009年は日本・メコン交流年なのでベトナムとカンボジア視察を計画し10月に実施しました。結果は、2月に皇太子のベトナム初ご訪問に始まり、この911月は鳩山首相の「東アジア共同体」の国連演説、アンコールワットでの日本・メコン外相会議、東京での日本・メコン首脳会議、ASEANAPECの首脳会議、オバマ米国大統領のアジア政策東京演説とアジア歴訪等々新聞・テレビはアジアオンパレードでした。

私達の視察団はこの真最中の10/510/11迄ベトナムとカンボジアを視察していた訳で、“百聞は一見に如かず”で、視察中も、帰国後の現在も参加者一同に強烈な印象を与え、今後も与え続けるであろうことは間違いなく、その視察体験効果は計り知れないものがあると喜んでいる次第です。

 この視察で印象に残ったことや、昨年視察したインドや中国との比較を報告しておきます。

慢性的な貿易赤字(▲175億ドル、2008年)、一次産品輸出、工業製品輸入というモノカルチュアーからの要脱出、基幹産業、裾野産業の未発達、各種インフラの未整備等解決すべき問題は多い。

 が一方、勤勉で真面目、器用で視力も良く、創意工夫力もあり、且つインドと違って識字率も抜群に高く、よく勉強している若年労働力が豊富なことに加え、上昇中とは云え、賃金も中国の1/2と安く、政治的にも安定しているので、最近は日本も含めアジア中心乍ら外国からの投資も急増中です。更に日本はベトナムにとって最大のODA援助国でもあり、両国関係は政府間、一般国民感情共極めて良好。ダナン-バンコク間の東西回廊の最大の難所に、日本のODA援助で完成させたハイヴァントンネルなど大変感謝され、トンネル入口に大きな日の丸付石碑が建てられています。

 これらの結果、大学生の日本留学希望者も多いので、このほどベトナム国家大学ハノイ校に京都大学ハノイ事務所が開設されることになりました。

 

 

ベトナム

インド

中国

日本

人口(09年版国連人口白書)

0.86億人

11.98億人

13.46億人

1.28億人

人口政策

原則2人っ子政策

特に制限なし

一人っ子政策

 

25歳未満人口比率

50.2%

26歳未満50%

38.1%

24.9%

識字率

96%

64.8%

95%

 

GDP1人当たり、

実質成長率(2008年実績)

1024ドル、6.2%

1016ドル、6.7%

3315ドル、9.0%

38457ドル、-3.7%

土地国有制の有無

私有制

(ドイモイ(刷新)政策後)

私有制

国有制

(使用権を売買)

 

日経進出企業数(2008年末)

790

555

(2008/10)

23035

(2007/)

 

在留邦人数(2008年末)

7036

2819

(2007/10)

125928(2008/10)

 

直行航空便数/(日本発)

45便

20便

726便

 

ワーカー賃金(指数化)

JETROホームページ(今回調査)

49

84

(ニューデリー)

100

(深せん)

 

電力事情

いずれも不足気味で随時停電あり

 

交通渋滞

いずれも似たりよったりで渋滞ひどいが、中国が一番まし

 

()基準年2007-2009年。ベトナムは今回調査、他は昨年の在インド日本大使館訪問時の資料につきやや古い。

 

 最後に、①南北高速道路、②南北高速鉄道、③ホアラック・ハイテクパークの三大案件と④ホーチミン地下鉄計画につきコメントしておきます。

 ①、③、④は夫々必要且つ効果も大と思われるので積極的に進めるべし。②は1,560kmと長く、コスト、利用率等を考慮すると、時期尚早。むしろ、ハノイ-ハイフォン間とかダナン-フエ、ホイアン間等利用頻度の高い短い区間だけ優先建設するのが一番合理的と思う。港湾の整備も必要。

 これらのインフラの未整備や南北間の人の心にかなりの対立、対抗心があるなど30年に及んだベトナム戦争(内戦も含め)の傷跡は深く、総じて中国より20年以上遅れていると感じました。ホーチミン市在住の元松下電器現地社長は、南と北は別の国だと思って下さい、と言っておられました。

 又、反米感情はあまりない様だったが、中国に対しては、怖いお兄さん、とか、兄弟ゲンカ中の兄貴と言っており(北と南のガイドの言)、南沙諸島(ベトナムでは黄沙諸島)の領土・石油利権問題が大きく尾を引いている感じでした。

 このほか、在留邦人7,000人に対し、韓国人が80,000人もいるという日本大使館での話にびっくり。このほか多くのベトナム女性が韓国へ嫁入りしており、評判もよい、との話もあった。ベトナムのほか、ラオス、カンボジアへの中国人、韓国人の進出も活発だそうです。

 唐の時代に阿倍仲麻呂が安南節度使として治めていた国、御朱印船や山田長政(推測)等も立ち寄り、1000人以上の日本人町があったホイアンの港町があり、料理も日本的でおいしく、町を走っているオートバイの約8割、乗用車の約2/3(ハノイで見た感じ)は日本車という日本シンパの多いベトナムは、日本としても大いに大事にし、しっかり良い交流を続けたいと痛感した次第です。

 カンボジアは農業と縫製業と観光の国で、対日感情もよく、アンコールワット、アンコールトムともさすがに世界遺産の貫禄十分で見ごたえがあり、当時のクメール王朝の繁栄ぶりを想像させるに十分でした。途中生ゴムを素材とした家具の店とクッキーの店で、日本人女性が経営者及び販売員として逞しく活躍しておりうれしく思いました。

 カンボジアの最大の問題点は電力不足で、電化率は18%(ベトナム90%)にすぎず、国内電力の大半は小規模ディーゼル発電等でまかなっています。この為電力料金が1kwh当り約18セント(ベトナムは5セント)と極めて高いことです。

 

OMAアジア・中国事業支援室によるベトナム・カンボジア視察研修報告

日 時:平成21105日(月)~1011(日)

・訪問先:ベトナム及びカンボジア

・団 長:大森經徳(協会副会長、当支援室最高顧問。京都大学上海センター協力会副会長)

副団長:岩浅義昭(協会理事、当支援室顧問。三統(株)代表取締役)、

副団長:二宮信(協会常任理事、当支援室室長。元大和銀行東京国際業務部長)

・参加者:20

 

要  旨

 

 アジア・中国事業支援室恒例の海外視察研修旅行が去る105日(月)~1011日(日)の間行われ、総勢20名が参加しました。訪れたベトナムの3都市は近年の経済成長を反映して活気に溢れており、接した人達は皆さん勤勉で真面目という印象です。全体として、経済発展のエネルギーと共に、開放的

かつ友好的な雰囲気を感じました。

1.ハノイ視察と日本大使館等訪問

 5日夜、首都ハノイ到着。6日、パナソニックコミュニケーションズベトナム社を訪問、渡辺社長のご案内で通信機器の製造工程を視察。午後は日本大使館で相星公使より政治・経済などベトナム情勢全般について、更にJETROで酒井海外投資アドバイザーより日本との経済関係などについて説明を頂いた。ハノイは緑豊かな並木道に湖や公園が点在、フランス統治の名残りがある美しく落ち着いた雰囲気です。

 

2.ダナンにて日系企業と市外務局を訪問

 7日中部の商業都市ダナンへ。当団の松村幹事がかつて社長を勤められたVIJACHIP社を訪問、原木の搬入から木材チップ製造に至る工程を視察、トラックからそのままチップ裁断機への究極の在庫ゼロ方式に感心。続いてD&N Food社を訪れ、喜多社長のご案内で日本向け水産加工品の製造現場を視察した。ダナン市外務局ではL, M, サーム局長以下大勢の職員に迎えられ、インフラの整備状況、工業団地の開発、完成近いゴルフ場など説明を頂く。日本企業の誘致を望まれる。

 夜はダナン日本商工会の井上局長など主要メンバー7名を招待して、盛大な夕食会となりました。

 

3.ホイアン及び古都フエ観光

 8日、交易の要街として栄えたホイアンを訪れる。1617世紀に朱印船ではるばるこの地まで来て、日本人町を築いた先人達に思いをはせながら古い町並みを歩く。午後はベトナム最後の王朝の都が置かれた古都フエを訪れ、阮朝王宮、皇帝廟、七層八角形の仏教寺院など風格ある建築群を観光する。

 

4.ホーチミン視察

 9日、ベトナム最大の商業都市ホーチミンへ。中心部は高層ビルが建ち並び、道路は車とバイクで溢れており、市場経済進展の活気を感じる。昼食は当地でご活躍中の藤井孝男氏(元松下電器ベトナム・社長)をお招きし、ベトナム南部の経済情勢を伺う。南ベトナム時代の大統領官邸(統一会堂)、戦争証跡博物館、フランス統治時代に建てられた郵便局や市場等を視察し、夜カンボジアのシエムリアップへ。

 

5.アンコール遺跡を観光

 10日、915世紀に大帝国を築いたクメール王朝の栄華を物語るアンコールトム及びアンコールワットの遺跡群を観光する。神殿や王宮など歴代の王が残した石造建築群の規模の大きさと美しさ、軍事や生活をリアルに示す数々のレリーフ(浮き彫り)など、目を見張るものばかりです。

 夜は反省会を兼ねた夕食会で、旅行の感想や来年の希望など、賑やかに話合い、深夜シエムリアップ

を発ち、翌11日早朝、無事に関空に帰着しました。

 旅行にご参加頂いた皆様、今回もハードスケジュールでしたが、お疲れさまでした。当支援室の海外視察研修旅行を今後ともご支援頂きますよう、宜しくお願い致します。   

    (文責 二宮信)

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間違いもよくある新聞記事

2009/12/07

(社)大阪能率協会 アジア・中国事業支援室

  副室長 喜多忠文

(元広東松下エコシステムズ社長)

 

私は講演を頼まれるたびに、日本のマスコミである新聞や経済誌が、中国の記事に関し一面的なものの見方で書いているということを説明してきた。例えば、「最低賃金の上昇や労働契約法の施行で外資系企業が大変な状況になっている」といった記事が一時氾濫した。確かに労働集約的な輸出がメインの産業では大きなインパクトがあったと思われるが、中国市場を相手にした産業(自動車や電機)では何の問題もないと言っている。輸出型企業でもほとんど影響がないところが多い。それなのにマスコミの記事はある特定のカテゴリーの企業をとらまえて、それが全てだという書き方をする。あるいは、「江沢民の時に徹底的な反日教育が行なわれた」と言われているが、30歳前後の中国人に「そのような教育を受けたという意識はあるか」と聞くと、私が聞いた人は全て「反日教育というような感覚はまったくなかった」という返事であった。

ここから本論であるが、11月30日付の日本経済新聞朝刊の記事についての感想である。

見出しは「製造業の進出 低賃金を求め加速」で、サブタイトルが2つあり、「ASEAN後発国 カンボジアなど」と「衣料や靴 脱中国の動き」とある。その記事の中に「広東省の最低賃金は現在1500元で97年の6倍」と書いてある。どうしてこのような真っ赤な嘘を平気で書けるのか。誰かが言ったことを調べもしないで、そのまま記事にしているのだろう。ご丁寧にそれをドルベースに変換して、国ごとに比較している。中国広東省220ドル、ベトナム70ドル、カンボジア50ドルといった具合である。実際の最低賃金は広東省深圳市で1000元、広州市で860元、佛山市なら770元である。地方政府は毎年のように最低賃金を引き上げてきたが、上げ過ぎたと思ったのかこの2年間ほどは据え置いている。記事として比較するのであれば、広東省で製造業なら最近は郊外都市の佛山市あたりに進出するのが多いから、770元と比較すべきである。すると、113ドルになる。例えば中国とベトナムなら、道路や港湾のインフラや下請け企業群のレベルは先進国と低開発国ぐらいの差がある。この比較表を見て進出をどこにするか検討している企業があるとすれば、220ドルと70ドルもの差があれば、インフラは我慢してでもベトナムへと考えるかも知れないが、113ドルと70ドルなら、インフラのしっかりした中国と考えるかもしれない。この記事を読んだ人は経営判断を誤る可能性が大である。(深圳の1000元なら146ドルである) 

このような訳で、「新聞の中国記事が一面的でいい加減」というテーマに関して、また私の話の幅が広がる話題を提供していただいたようである。

以上

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読後雑感 : 09年8・10月発行本-その3 

 11DEC 09

美朋有限公司董事長

   中小企業家同友会上海倶楽部代表

上海センター外部研究員  小島正憲

 

1.「中国市場に踏みとどまる!」   2.「中国問題の核心」   3.「1冊でつかめる! 中国近現代史」

4.「中国分裂 七つの理由」   5.「なぜ日本が中国最大の敵なのか」

 

上記のほか、10月中に「チャイナ・アズ・ナンバーワン」、「発禁“中国農民調査”抹殺裁判」の2冊が発行されている。両著とも力作のため、それを読みこなし検証するのに、目下悪戦苦闘中である。若干賞味期限切れとなるが、12月末までには読後雑感を各位にお届けできると考えている。

 

1.「中国市場に踏みとどまる!」  上場大著  キャップス刊  2009年10月1日

上場氏は第1章から4章までを使い、いろいろな角度で中国の社会を分析している。中国の失業者の認識、北朝鮮問題、北京松下での争議などについては記述や解析が不十分な面もあるが、他の部分は法律面などをしっかり把握した上で、事業成功に必要な対応手段を具体的に書き、さらに撤退しようとしている日本企業には、「踏みとどまって、つぎのチャンスに備えよ」と、文中で檄を飛ばしている。その点では読み甲斐がある本である。

私は手に取った本を購入するかどうかに迷ったとき、その本の最後の部分を読みそれで決定することにしている。そこに著者の意図が凝縮されていることが多いからである。上場氏はこの本の最後で、「中国ビジネスに携わるにあたってのマインドセットについて」、「“中国を好きになる”ということだと思う」と書いている。私も同感である。この言葉につられて、私はこの本を購入し本文を読み進めていった。

この本の副題は「日本企業の勝ち残り戦略」となっている。この本からこの点を読み取りたいならば、第5章の「日本企業勝ち残りの法則」を読むだけで十分である。上場氏はその章で、まず勝ち残るためには、顔・関係・価格・管理の4Kが必要だと説き、その上で、「どんなに時宜を得た、よい製品でも、売れるようになるまでには、最低3年かかる。その覚悟がなければ、中国ビジネスに手を染めるべきではない」と説く。そして「3年かけて製品が売れるようになると、今度はニセモノや類似品が跳梁跋扈することになる」ので、「対策は淡々と現実的に行え」と続け、次にニセモノよりももっと警戒しなければならないのは「内部の敵」だと強調し、それらの「リスクを回避できるかどうか、競争に勝つかどうかの基本は情報にある」と書いている。そして素晴らしい日本のサービスを教育と訓練で中国人従業員に徹底すれば、中国市場で十分に勝てると結論付けている。さらに上場氏は「サービス業や流通と同様に、日本企業に商機があるのが、物流だと思う。とくにコールドチェーンだ」と具体的な提言もしている。そして最後に、上掲の「中国を好きになれ」という言葉でこの章を結んでいる。

これらの上場氏の指示に従えば、十分、中国戦線に勝ち残ることが可能であると思うが、私はこれに次のような方法を付け加えれば鬼に金棒だと思う。私は日本企業に地元政府に対して提言力を持てと言いたい。つまり日本企業の持つ豊富な経験やアイディアを地元政府や関係機関にどんどん提案することである。彼らは予想外に柔軟なのでそれを受け入れることがあるし、場合によっては特区を作って試行するようになるかもしれない。私は日本のように既得権益が重なり合って身動きの取れない国よりも、中国の地の方が革新的なアイディアを実行しやすいと見ている。これが功を奏せば、地元政府とのパイプがしっかりつなげ、確実に勝ち残ることができる。

なお、日経ビジネスの11/30号は、この本を中国ビジネスの注意点がわかる1冊として紹介している。

 

2.「中国問題の核心」  清水美和著  ちくま新書刊  2009年9月10日発行

清水氏は「おわりに」で、この本を著すに至った心境を、「中国については、とかく感情論や色眼鏡で見る論調が多く、報道さえ偏見や反発から自由ではいられない。最低限、中国で起きていることを、感情に流されず事実に即して見るとともに複雑でわかりにくい情勢に自分なりの見解を示すことが必要ではないか。こうした考えから変幻する中国情勢に関する本を、新たに加えることになった」と記している。

しかしながら清水氏は、この本の中で「わかりにくい情勢に自分なりの見解を示す」ことに成功はしているが、「事実に即して見る」ことについては不十分さを残している。清水氏が自らの体験した具体的な事象に論及しているのは、冒頭の鉄道列車内の事件についてのみで、その他の部分については他者からの情報を根拠にした主張がほとんどである。したがって正確に事実が確認されておらず、残念ながらそこから導き出された結論には誤りが多い。たとえば随所で「金融危機の影響で、中国国内には2千万人以上に達する失業者が生まれ」と、できあいの情報を根拠にした主張を展開しているが、これは大きな誤りである。またチベットやウルムチ暴動への言及も、一般マスコミの報道を根拠にしているもので、清水氏独自の現場調査を踏まえたものではなく、事実誤認が多い。集団抗議事件についても、「公安省が認めただけでも、こうした集団事件は2006年に9万件以上に達した」(P.130)と、中国政府の発表を鵜呑みにしてそれに疑問を感じていない。ことに09年6月に湖北省石首市で起きた事件や、08年6月に起きた貴州省瓮安県の事件を引き合いに出し、「騒乱、デモ、陳情など集団事件は日常化している」との見解を示している。私はこの二つの事件現場に足を運び、自分の目で検証してきたが、現場を見ていない清水氏の主張はかなり的外れとなっていると見る。しかもこれに続いて、ここでは「国営通信新華社発行の時事週刊誌“瞭望”(08年9月8日号)によると、1993年に8700件だった集団抗議は2006年に9万件を超えた」(P.136)と書いている。清水氏の「集団抗議9万件」の根拠は、公安省発表なのか“瞭望”なのか、私は理解に苦しむ。

それでも清水氏は、中国経済の鈍化が五輪前から起きており、その原因を07年末の金融引き締めと改訂労働契約法の施行であると見抜き、しっかりそれを記述している(P.149~154)。他の多くの中国ウォッチャーが、中国経済の急減速を単純にリーマンショック以降として論を展開しているのと比べれば、清水氏は事態を正確に把握していると言える。

清水氏はまず第1章で、「再び高まる東シナ海のうねり」との見出しを掲げ、尖閣諸島問題を論じている。もちろんそこでは冷静な論が展開されており、多くの中国ウォッチャーの主張に見られるような愛国心に拘泥したものではない。しかしもしここで清水氏が、実際に尖閣諸島に足を運び、目で見た事実を踏まえてこの文章を書いていたならば、もっとインパクトの強いものになり、「中国問題の核心」に迫ったものになっていただろう。

 

3. 「1冊でつかめる! 中国近現代史」  荘魯迅著  講談社+α新書刊  2009年10月20日発行

荘氏はわかりづらい中国の近現代史を、読みやすい物語調に仕立てて書いており、この本を片手にソファーに寝転びながら読み進めて行けば、だれでも数時間後には中国通になれるのではないかと思うほどの仕上がりである。もちろん中国問題専門家の目で読めば、随所に疑問点も浮かびあがってくるが、日本人が書いたものではなく、中国人の荘氏が日本語で書いたものだけに、新たな視点が付け加えられており、多くの人に読んでもらいたい1冊である。

この本は、前半=アヘン戦争を描いた序章から蒋介石が台湾へ渡るまでの第8章までと、後半=新中国建設開始の第9章から鄧小平の南巡講話の第11章までに大別できる。前半は歴史的事実に沿って淡々と述べられているが、一転して後半は荘氏の憤りが文中からあふれ出てくるような筆致になっている。荘氏は幼かりしころ、文化大革命に遭遇し辛酸を嘗めてきただけに、冷静な記述にはなりえなかったのであろう。私も文化大革命の被害者であっただけに、その心情はよく理解できる。

荘氏はまずアヘン戦争を、イギリスが中国を市場として開放させるために仕掛けたものとして捉え、夜郎自大化していた清朝末期の為政者たちが右往左往し、その都度変わる指示に林則徐をはじめとする重臣が翻弄されていく様子をを活写している。太平天国の乱については、洪秀全など指導部の腐敗に言及し、「20世紀の50年代以降、中国は政治的原因により太平天国を農民革命として評価してきたが、近年はようやくその腐朽な本質に反省の目線を向け始めている」と新しい解釈を試みている。李鴻章などの「洋務運動」についても、彼らが掲げた「中体西用」の方針を「“褌にタキシード”というへんてこなファッションに似た改革」と、言い得て妙な表現を使って揶揄している。また康有為などの「維新変法」についても掛け声倒れだったとした。義和団の乱については、「ずばり過激な攘夷運動である」と言い切り、「抑制がきかなくなってしまったこの大群衆は至る所で教会を焼き払い信者を殺し、しまいには洋務派や維新派に同情した者まで槍玉にあげた。何よりもぞっとするのは、タバコ、メガネ、洋傘、鉛筆、洋書、ないしマッチといった舶来品を携帯、使用しただけで多くの人間が容赦なく叩き殺されたことである」とその残虐面を指摘している。そして「中国の歴史学界はこれまで、太平天国、洋務運動、維新変法、義和団を“4大改革”として見る向きがあった」が、それらはむしろ歴史の歯車を逆転させたのではないかと指摘している。

南京大虐殺については中国人の立場から、「…今になって数字にこだわり、被害者の心に新たな傷を加えるのは極めて非人道的ではないだろうか?30万という数字は恨みの記憶ではなく、言語に絶する戦争の苦難の象徴として中国人の心に刻まれたものだ。それ実数であれ、概数であれ、南京大虐殺は揺るぎない事実である」と書いている。私はこの見解に反対ではないが、日本人として何かとこの問題を鼻面に突き出されるのには閉口しているとは言いたい。それにしても日本に在住している荘氏が、保守論壇や右翼から幾多の妨害を覚悟の上で、このように堂々とした主張を記述していることに敬意を表する。

第9章以降は、毛沢東の悪政の記述に大半が占められていると言っても過言ではない。残念ながら資料などに未公開の部分が多く、証言者も亡くなっていたり口をつぐんでいたりして、依然として事態は謎に包まれた部分が多く、それらの記述がすべて真実であるとは言い難い。ことに建国後の幾多の政治闘争を毛沢東と劉少奇との間の権力争いに収斂していく思考方法には疑問を感じる。ユン・チャン氏の「マオ」ほどの憶測交じりではないにしても、今後の資料公開などの結果如何で、荘氏は記述を変更せざるを得ないかもしれない。読者には第9章以降を、そのような目で読んでもらいたいと思っている。

荘氏はこの本を近現代史と名付けているのだから、できれば鄧小平の南巡講話で筆を置くのではなく、その後の歴史にも迫ってもらいたかった。なぜなら南巡講話からすでに20年が経過し、その過程で中国が劇的に変化し、G2と呼ばれるほどに巨大化してきているからである。この過程については資料も豊富であり証言者も現役であるから、描きやすいと思う。またこの過程を記述することで、過去の毛沢東時代の評価を見直すことも可能であると思うからである。

さらに荘氏は、紙幅の為にという理由で、長征や朝鮮戦争などについて詳述することを避けているが、できるだけ早い時期にこれらに関しても論述してもらいたいものである。

 

4. 「中国分裂 七つの理由」  宮崎正弘著  阪急コミュニケーションズ刊  2009年9月28日発行

中国の国内線の機中で、宮崎氏のこの本を読んでいたとき、隣の日本人から表紙を隠すようにとアドバイスを受けた。確かにこの本の表題は、中国人にとっては不快なものであり、私はわざわざトラブルの原因を作る必要もないと思い、その忠告に従って本に新聞紙で臨時のカバーを付けて読み続けることにした。

いつものことながら、文中での宮崎氏の世界全般に渡る多彩な情報には勉強させられるが、その情報の中には若干時代遅れで現実とは落差のあるものや、事実を誤認している部分も多い。ここでは細部にわたっての検討は行わないが、チベットやウルムチでの暴動についての記述、また東北3省なかでも延辺朝鮮族自治州近辺についての言及などは、私がこの1年半書き続けてきたものと読み比べれば、それは明白である。かつての宮崎氏は中国全土を自分の足で歩き、その堪能な中国語を活かして現場から確実に情報を収集し、それを文章化していた。この本における宮崎氏の行動スタイルはそれらと比べると若干鈍っているようであり、その分だけ現状分析に鋭さが薄まっているようである。

文中で宮崎氏自身も「筆者はミャンマーを1週間旅行したことがあるが、その穏やかな人々と風景ののどかさに、むしろ感動した」と控え目でかつ常識的に書き、その体験からスーチー女史を「英国殖民の狎れ、英国へ留学したスーチー女史には土着の思想も発想もない」と切って捨て、「このミャンマーの政治を左右するのが中国の外交能力である」と解析している。

私は10年ほど前に、ミャンマーで3年間工場経営を続けていたし、そのときスーチー女史の自宅前の肉声演説も数回聴いたことがある。また彼女に対する期待の声をミャンマー国民から直接聞いている。その体験から、ミャンマーの人民は穏やかではなくきわめてしたたかであると言い切れるし、ミャンマーを取り巻く情勢は宮崎氏が分析しているような単純な構図ではないと考える。宮崎氏は「中国は国際社会の反対をよそに、堂々とミャンマー政府を支援してきた。中国がミャンマー軍事政権への武器援助の交換として獲得したのは、…中国雲南省とミャンマー南方の港湾とを結ぶハイウェイ建設、さらに沖合いからミャンマーを南北に縦断するガス輸送パイプラインを中国が敷設する」権利であると書いているが、その文言は10年前のマスコミにも登場していた古臭い分析であり、10年後の現在でもそれらは遅々として進行していない。これはパキスタンのKKHが、中国の支援のもと全面修理中で来年中には素晴らしいハイウェイに生まれ変わろうとしているのと好対照である。

また宮崎氏は「いま中国はあたかもコミンテルンの謀略の現代版を実践するかのように、一方でミャンマー軍事政権に異常なテコ入れを行い、他方ではミャンマーの反政府ゲリラ組織にもテコ入れしてきた」と書き、この中国の二股外交を非難しているが、もしこのテコ入れの効果がなく、ミャンマー軍事政権が崩壊したらどのような事態になるかについては言及していない。私はミャンマーの軍事政権が崩壊したら少数民族が乱立し、旧ユーゴの惨状の再現になるのではないかと思っている。したがって現実的にはミャンマーを国際的な監視のもとで、通常国家にソフトランディングさせることができる国際体勢が整うまで、この軍制を続行させたほうがよいと思っている。現在、ミャンマー人民の多くが飢え死にしているわけではないので。

宮崎氏は、この著書に「中国分裂 七つの理由」とタイトルをつけているが、「日本にとって、中国の分裂は得なのか、損なのか」については、文中に明確に記していない。私はそれを明確にすることこそが、もっとも大事なことだが思うがいかがなものだろうか。

たとえば宮崎氏は、第2章「自壊する中華帝国」の中で、「後節では“分裂の先輩”であるロシア帝国が15に大分裂のあと、どういう運命をたどったかを検証してみよう」と書き出し、いろいろな情報で数ページを費やして、最後に「このようなポスト冷戦構造の地殻変動の波は、いずれ米韓、米日、米豪、米印の安全保障条約の改定、変動へと繫がるだろうが、それはTUNAMIとなるか、漣か」と結んでいる。私はこの10ページほどをなんども読み返してみたが、結局、ロシア帝国が分裂後、どのような運命をたどったかはよく飲み込めなかったし、そこからロシア帝国の分裂が日本にどのような影響を及ぼしたかを読み取ることはできなかった。宮崎氏は、ロシア帝国の分裂の検証という限りは、その結果の日本の損得勘定について明確に言及すべきでないだろうか。そうでなければロシア帝国の分裂を論じてみても、意味のないものとなる。中国の分裂についての論及も同様である。

宮崎氏は極東ロシアの現状についても分析を加えている。私は来週、牡丹江・綏芬河経由でウラジオ・ハバロフスクへ市場視察に行く。この宮崎氏の分析に学んで、それを私なりに検証したいと思っている。

 

5. 「なぜ日本が中国最大の敵なのか」  杉山徹宗著  光人社刊  2009年10月4日発行

杉山氏はこの著書で、「なぜ日本が中国最大の敵なのか」を自論としては明確に論じていない。その意味で、この本は題名と中身がかなりずれている。杉山氏は文中で、中国研究者の「対日戦略レポート」を引用して、「なぜ日本が中国最大の敵なのか」を論証しようとしているが、そのレポートについてさえ「レポートの真偽は定かではないが」と注釈をつけているほどである。杉山氏は、「中国にとって最大の敵は日本である」と書き、2番目がロシア、3番目がインド、4番目が米国と続けているが、いずれも検討するまでもない内容である。

杉山氏は第1章から3章までを割いて、「比較防衛学」を開陳している。それはそれなりに参考にはなる。第4章では各論に入り、個別の国家が戦った場合の検討を行っており、最初に日本と中国が戦端を開いた場合を想定して分析している。そして「総合軍事力ではかった場合、中国の軍事力は明らかに日本を凌駕しているが、決定的な差は核戦力である。しかし日本が米国の核の傘の下にあるため、中国が核戦力を使用できないとすると、…(略)日本が中国を凌駕することになる。ただし日本が中国に優越するのは間接的軍事力がすぐれているからで、通常兵器の比較では到底中国の軍事力にかなわない。このため日本が勝利を得るためには奇襲攻撃しかない」と書いている。この文言は、なにやら真珠湾攻撃など、いつか来た道を想起させるものである。

それでも杉山氏は、増大する中国の軍事的脅威に対して、日本も軍事力を強化せよとは主張していない。彼は「中華帝国の実現を諦めさせるには日本はどうすればよいか」と問いを発し、「日本がしなければならないことは、核兵器の保有の意味がなくなってしまう技術を開発するとか、エネルギー資源を世界に輸出できる技術を完成させることである」と答えている。日本の努力方向を明示したこの指摘には、私も賛成である。

なお本文中には、中国の実態に言及した各所に多くの事実誤認があるが、その反論は省略する。

以上

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中国経済最新統計】(試行版)

 

上海センターは、協力会会員を始めとする読者の皆様方へのサービスを充実する一環として、激動する中国経済に関する最新の統計情報を毎週お届けすることにしましたが、今後必要に応じて項目や表示方法などを見直す可能性がありますので、当面、試行版として提供し、引用を差し控えるようよろしくお願いいたします。    編集者より

 

実質GDP増加率

(%)

工業付加価値増加率(%)

消費財

小売総

額増加率(%)

消費者

物価指

数上昇率(%)

都市固定資産投資増加率(%)

貿易収支

(億㌦)

輸 出

増加率(%)

輸 入

増加率(%)

外国直

接投資

件数の増加率

(%)

外国直接投資金額増加率

(%)

貨幣供給量増加率M2(%)

人民元貸出残高増加率(%)

2005

10.4

 

12.9

1.8

27.2

1020

28.4

17.6

0.8

0.5

17.6

9.3

2006

11.6

 

13.7

1.5

24.3

1775

27.2

19.9

5.7

4.5

15.7

15.7

2007

13.0

18.5

16.8

4.8

25.8

2618

25.7

20.8

8.7

18.7

16.7

16.1

2008

9.0

12.9

21.6

5.9

26.1

2955

17.2

18.5

27.4

23.6

17.8

15.9

  1

 

 

21.2

7.1

 

194

26.5

27.6

13.4

109.8

18.9

16.7

 2

 

(15.4)

19.1

8.7

(24.3)

82

6.3

35.6

38.0

38.3

17.4

15.7

 3

10.6

17.8

21.5

8.3

27.3

131

30.3

24.9

28.1

39.6

16.2

14.8

 4

 

15.7

22.0

8.5

25.4

164

21.8

26.8

16.7

52.7

16.9

14.7

 5

 

16.0

21.6

7.7

25.4

198

28.2

40.7

11.0

38.0

18.0

14.9

 6

10.4

16.0

23.0

7.1

29.5

207

17.2

31.4

27.2

14.6

17.3

14.1

 7

 

14.7

23.3

6.3

29.2

252

26.7

33.7

22.2

38.5

16.3

14.6

 8

 

12.8

23.2

4.9

28.1

289

21.0

23.0

39.5

39.7

15.9

14.3

 9

9.9

11.4

23.2

4.6

29.0

294

21.4

21.2

40.3

26.0

15.2

14.5

10

 

8.2

22.0

4.0

24.4

353

19.0

15.4

26.1

0.8

15.0

14.6

11

 

5.4

20.8

2.4

23.8

402

2.2

18.0

38.3

36.5

14.7

13.2

12

9.0

5.7

19.0

1.2

22.3

390

2.8

21.3

25.8

5.7

17.8

15.9

2009

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1

 

 

 

1.0

 

391

17.5

43.1

48.7

32.7

18.7

18.6

2

 

3.8

(15.2)

1.6

(26.5)

48

25.7

24.1

13.0

15.8

20.5

24.2

3

6.1

8.3

14.7

1.2

30.3

186

17.1

25.1

▲30.4

▲9.5

25.5

29.8

4

 

7.3

14.8

1.5

30.5

131

▲22.6

▲23.0

▲33.6

▲20.0

25.9

27.1

5

 

8.9

15.2

1.4

(32.9)

134

▲22.4

▲25.2

▲32.0

▲17.8

25.7

28.0

6

7.9

10.7

15.0

1.7

35.3

83

▲21.4

▲13.2

▲3.8

▲6.8

28.5

31.9

7

 

10.8

15.2

1.8

(32.9)

106

▲23.0

▲14.9

▲21.4

▲35.7

28.4

38.6

8

 

12.3

15.4

1.2

(33.0)

157

▲23.4

▲17.0

▲2.05

7.0

28.5

31.6

9

8.9

13.9

15.5

0.8

(33.4)

129

▲15.2

▲3.5

10.6

18.9

29.3

31.7

10

 

16.1

16.2

▲0.5

(33.1)

240

▲13.8

▲6.4

▲6.2

5.7

29.5

31.7

 

注:1.①「実質GDP増加率」は前年同期(四半期)比、その他の増加率はいずれも前年同月比である。

2.中国では、旧正月休みは年によって月が変わるため、1月と2月の前年同月比は比較できない場合があるので注意

されたい。また、(  )内の数字は1月から当該月までの合計の前年同期に対する増加率を示している。

  3. ③「消費財小売総額」は中国における「社会消費財小売総額」、④「消費者物価指数」は「住民消費価格指数」に対応している。⑤「都市固定資産投資」は全国総投資額の86%2007年)を占めている。⑥―⑧はいずれもモノの貿易である。⑨と⑩は実施ベースである。

出所:①―⑤は国家統計局統計、⑥⑦⑧は海関統計、⑨⑩は商務部統計、⑪⑫は中国人民銀行統計による。