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京大上海センターニュースレター
第67号 2005年7月25日
京都大学経済学研究科上海センター

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目次
○ 中国・上海情報 7.18 - 7. 24
○経済人の目から見た中国東北振興への提言
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中国・上海ニュース 7.18−7.24
ヘッドライン
■ 中国:人民元相場バスケット制へ移行、対米ドルで約2%切り上げ
■ 中国:上半期GDP伸び率9.5%、夏季穀物500万トン増産
■ 中国:1−6月消費財小売総額、実質12%増の2.96兆元
■ 中国:鉄道建設など4分野を国内民間資本に開放 
■ 中国:外貨準備高が急増、世界一に迫る
■ 中国:鉄鋼産業政策要綱発表、業界再編で国際競争力強化へ
■ 上海:金融機関の資産総額2.8兆元、外資系が13%
■ アコム:北京大学と金融情報研究所設立で合意
■ 北京:戸籍人口1170万人、基準厳格化で人口抑制
■ 上海不動産業:企業家信頼感指数が大幅下落
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               経済人の目から見た中国東北振興への提言
           京都大学上海センター協力会副会長 元住友銀行取締役 大森 經徳

1.現状では東北振興はかなり困難な仕事で簡単ではない。その理由は、
(1)近くに良港がない。大連港迄遠すぎる。
(2)広すぎ。物流インフラを相当急速によくする必要がある。
(3)近年温暖化したとは言え、やはり寒冷の地で派遣される日本人スタッフの生活上の問題
  もありそうである。
(4)もっと近くて且つ良港にも近い開発区が中国にはまだまだ多い。

2.従ってこれらのハンディをはねのけて東北を振興させる為には、

提言1.大連より少しでも近くに良港を、との観点から、遼東湾の錦州か営口あたりに大きな
良港を作ること。もう1つ、北の図們江の出口に良港が作れればよいが、ここは地形上無理
なので、むしろロシアのザルビノ港や北朝鮮の羅津港等を利用することを考えるべきであろ
う。又そこへの高速道路を整備すること。既に計画はあると思うが、特に北のハルピン市─
牡丹江市─延吉市間の高速道路の整備が必要である。

提言2.南の沿岸部工業開発区と競争条件を揃える意味で、当分の間中央政府及び省政府
は三重県の北川元知事がシャープを誘致した時の様な思い切った補助金を出すと共に税制
面でも進出企業をバックアップし、競争条件を対等以上にする様な税優遇策を打ち出すこと。

提言3.優秀な日本語の出来る人材を更に多く教育し世に送り出すこと。

提言4.遠距離輸送のハンディの少ない業種…例えばIT関係、コンピュータソフト関係、コー
ルセンター等を選んで特別優遇政策を打出し誘致すること。

提言5.外資のみに頼らず、中国の有力企業で東北進出のメリットのありそうな企業、業種に、
同じく税制面や補助金政策等で進出を後押しすること。

提言6.余った電力を華東地区へ売電すること。石炭産地や水力発電のし易い場所に発電
所を多く作り、その発電収入を振興策に当てること。

提言7.農村他の若年余剰労働力に日本語教育をしっかりして、多くの優秀な研修生を日本
へ送り出すこと。これは国策としての農民の総数そのものを減らすことにも役立つ。

提言8.以上提言1〜7を考えたが、これら全てが実現したとしても、その為に使用するであ
ろう土地は極めて少なく、結局あの広大な農地は大半そのまま残っている。そこでやはり、
その広大な土地の活用方法も考えねばならない。
 それは結局、国際競争力のある農業への転換、即ち大規模農業への転換とその結果出
て来る余剰農民の就業問題が解決可能か否かにかかっている。がこの問題も避けて通れ
ないので一応問題提起しておく。

提言9.同じく広大な土地の利用法として「東北の米は、中国中で一番美味しく且つ値段も高
い」そうなので、この作付面積を大幅に増やすことも一策だと思う。
 更にりんごやあんず等、北方でも栽培可能で小麦やトウモロコシよりも収入増が見込める
果樹を見つけ農業の転換を図ることも必要である。

提言10.主要大学の農学部を強化し、日本をはじめ全世界の寒冷地農業の専門技術研究
成果の応用や、農産物加工技術の研究・開発にも注力の必要あり。

提言11.現在、中ロ関係は良好で、すでに東部シベリア地区、特にハバロフスクやウラジオ
ストクをはじめ中ロ国境沿いのロシア領内には多くの中国人が進出しているので、これら華
僑・華人の皆さんとの連携も含め,ロシアの東部シベリア開発に協力・支援することで新た
なビジネスチャンスが生まれる乃至発見出来る可能性は高い。
 これら東部シベリアで必要なもので黒龍江省内で作った方がはるかに安い商品がある筈
でこの方面との取引にも注力する必要がある。すでに日用雑貨、繊維製品等の買入れのト
ラックや商人がロシアより多数来ている。
 又、双方の観光客も多いので観光産業にももっと注力すべきである。
 更に図們江の出口あたりに貿易港があれば便利だが、ここは地形上無理で、むしろ、ロシ
アのザルビノ港、ポシェット港やウラジオストク港、北朝鮮の羅津港等を利用すると新たなイ
ンフラ投資もあまりいらず得策である。
 又、シベリア鉄道経由ロシアや北欧諸国やヨーロッパへ輸出する方がベターな商品の発
掘も一考に値しよう。

提言12.これらの諸施策を息長く続けると同時にそのPRも長く続けること。
まとめ 沿岸部では予想よりも可成り早く、すでに若年労働力不足が発生し、賃金も上昇しだ
した上、電力不足、土地不足、中間管理者不足等々のボトルネックが発生し、生産コストも
上昇しだした。
 そこで今やっとチャンス到来なので、提言11のPRを更に積極的に続け,広くて安い土地あ
り、電力不足もなく人件費も安く,工場現場にも勤勉で優秀な人材が多いこと、日本語の上
手な人材も多いこと、日本に親近感を持っている人々も多いこと、政府の進出企業への補
助金制度(目下提言中)や税優遇策もあり総コストは相当安いこと、日本にも近いこと、物流
インフラの整備にも力を入れていること等々をしっかりPRして行けば意外と早く東北進出ブ
ームが来る可能性もあると感じ出している。
 幸いハルピン─大連間に高速鉄道を新設する案や、牡丹江市から北朝鮮の国境沿いに
大連市迄の新鉄道建設予定もある等、各種インフラ整備も着々と進められる見込みであり
将来が楽しみである。
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