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京大上海センターニュースレター
81号 2005112
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

   上海センター・自動車シンポジウムのご案内

   上海センター・ブラウンバッグランチ・セミナーのご案内

   中国・上海情報 10.24 -10.30

○中国自動車流通事情の現地調査を通じて

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京都大学上海センター・中国自動車シンポジウムの御案内

日時・会場 2005115()12時 京都大学法経総合研究棟大会議室

プログラム

挨拶 京都大学総長 尾池和夫                                                                  

第1部 市場はどこまで拡大するか――需要面の定量分析―                                                 

報告(1)現代文化研究所中国研究室研究主事 廖静南

報告(2)野村総合研究所事業戦略コンサルティング部

グループマネージャー上級コンサルタント 北川史和

報告(3)三菱総合研究所産業・市場戦略研究本部産業戦略研究部

国際産業研究チーム主任研究員 赤羽淳                     (社名五十音順)

2 パネル 品質・開発力をどう見るか――供給面の定性分析――

松下電器産業グローバル戦略研究所首席研究員 安積敏政

元東風本田発動機技術顧問 小澤晃

小島衣料代表取締役社長 小島正憲

ダイハツ工業製品企画部副部長 津曲正人

元いすゞ中国事務所所長・中国担当部長 中村研二

愛知大学経済学部教授 李春利                                               (氏名五十音順)

懇親会 

なお,事前のお申し込みがなくても御参加頂けますが,会場準備の都合上,下記までEメイルで御連絡頂ければ幸いに存じます。シンポジウム,懇親会とも参加費はございません。

京都大学大学院経済学研究科 塩地洋

shioji@econ.kyoto-u.ac.jp tel:075-753-3428 fax:075-753-3492         ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

上海センターブラウンバッグランチセミナー(8,9,10回)のご案内

後期も引き続きBBLを開催いたします。ふるってご参加ください。

8 「東アジアのインフラ・ファイナンス」
講師 生島靖久 国際協力銀行開発業務部 調査役
日時 112日(水) 1215分〜1345
場所 法経総合研究棟2階大会議室

9 「戦前・戦後の東アジア」
講師 堀和生 本学大学院経済学研究科 教授
日時 119日(水) 1215分〜1345
場所 法経総合研究棟1102演習室

10 「日中関係とナショナリズム−われわれはなぜこれほどまでに嫌われるのか?−」
講師 江田憲治 本学大学院人間・環境学研究科 教授
日時 1117日(木) 1215分〜1345
場所 法経総合研究棟1102演習室

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中国・上海ニュース 10.2410.30

ヘッドライン

           中国:5省で鳥インフルエンザ発生

           中国:05年の石炭生産量が20億トンに

     中国:失業率統計法を06年から変更、出稼ぎ労働者も対象

     中国企業:海外進出加速、200の国と地域に

     中国:新会社法可決、出資者1人の有限会社設立を許可

     中国:外資の不動産投資を管理強化

     上海:1−9月外資系銀行の利益伸び率、中国資本の5倍

     上海:1−9月投資は15.9%増

     上海:今後2−3年ビジネスホテル激増

     産業:1−9月乗用車生産台数18%増、車種別販売で格差

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ウラジオストックを訪れて

京都大学経済学研究科教授 塩地洋

 世界最大の中古車モールがあるウラジオストックを9月に取材で訪問した。

上海と北京での8日間の自動車流通の取材調査の後,北京からソウル経由でウラジオストックに入った。ソウル−ウラジオストック間はウラジオストック航空に搭乗したが,約100人の乗客は,おおよそロシア人半分,韓国人半分といった所で,日本人は私一人であった。ウラジオストック空港に到着し,入国管理(パスポートコントロール)に向かうと,到着便は我々のツホルフ1機のみであったが,この約100人の入国手続に1時間30分もかかった。ひどい事に,パスポートチェックの次にさらに入国審査のカウンターがあり,そごで同行の中国人研究者が別室に連れて行かれ,「一人で観光とはおかしい」「入国の目的はなにか」としつこく尋問された。ホテルのバウチャーと現地旅行社作成の日程表等を見せてやっと開放された。

 

輸入中古車の流通拠点としてのウラジオストック

ウラジオストック市は人口が約60万人であるが,自動車が2.4人に1台保有され,保有台数は約25万台に達している。だが注目すべきは,この25万台の内,80%の15万台が日本車である。さらち,この15万台の日本車の内,90(13.5万台)が右ハンドルの日本車,すなわち,日本からの輸入の中古車である。残りが日本からの新車の輸入車(左ハンドル)である。

周知のように,ウラジオストックは冬季にマイナス20度にも下がるにもかかわらず,湾内が凍結することのない天然の良港である。北海道,新潟,福井等の日本海の港との交易が盛んで,ロシアの漁業関係者らが,日本からの帰りに,大量の中古車を持ち帰っている。今年の630日までは20万円以下の中古車の場合,船員の携行品として通関が可能であった。(71日以降,携行品通関が廃止された以降も業者通関として切り換わっただけで,中古車輸入台数は減少していない)

  このようにして,ウラジオストックに税関を正式に通関し,国内に流れ込んでいる中古車が毎年15万台ある。ただし,実際にウラジオストックに入っている中古車がすべて完成車として通関されているわけではなく,自動車部品として通関している(実質的)完成車や,税関を迂回して流入している自動車がある。後者の台数はまったくわからないが,存在していることは事実である。

ただし,この15万台(+α)の輸入中古車がすべてウラジオストックで売られているわけではない。ウラジオストックを経由して,沿海州・シベリア地域に搬送され,各地で販売されている。ではウラジオストックでは何台の輸入中古車が販売され,何台の車が沿海州・シベリア地域に流れているのであろうか。ここで推測をおこなおう。

前述のように,日本からの輸入中古車の保有台数は約13.5万台である。もしこの平均耐用年数(廃車までの年数)1314年とすると(日本では約11),ウラジオストックでは1年間に約1万台の輸入中古車が販売され,残りの約12万台が他地域に流れていることとなる。

 

世界最大の中古車販売の集積地――グリーンコーナー

こうしたウラジオストックの中古車流通の中心拠点が市内東部の丘の上にあるグリーンコーナーである。正確に計測したわけではないが,幅約500m〜1,000,長さ約2,000mの地域に,5,000台の自動車と数十の建設重機(クレーン等)が並べられている。1年間の販売台数は,2か月で回転しているとすると3万台であり,もし1か月で回転しているとすると,6万台である。何社,中古車販売業者がいるのか把握できない。

ここでは圧倒的に日本車である。95%以上は日本車である。ただし,ワゴンやバスは車が右側通行であるため,左側にしか乗降用ドアのない日本車は危険なため,韓国メーカーのワゴンやバスが入っている。ソウル市内の行先をハングル文字をそのまま付けたままのバスが並んでいる。しかし,そうしたワゴンやバスを除いくと,ほぼすべてが日本車である。

車型は,SUVとミニバンとセダンがそれぞれ三分の一であろうか。価格は日本円で約50万円から300万円の間であらゆる価格帯が揃っている。12年落ちの高年式車もあり,また10年落ちの低年式車も見られる。

車内を除くと,日本のオークション会場が作成したボディ・チェックシートがそのまま残っている車があり「スタート価格30万円  落札価格84万円」という表示が見える。つまり,この中古車販売業者は,日本で84万円でこの車を手に入れたことになる。この84万円に船賃等として8万円を上乗せし,関税20%を乗せ,さらに付加価値税VAT18%を乗せると,130万円になる。売値は140万円程度に設定しているので,粗利10万円,7%程度の,あまり儲かる商売ではないことになる。それともこの推算が誤っているのか,関税や付加価値税を払っていないのか,たしかめる方法がない。

アポイントをとっていた中古車販売業者にインタビュ-を試みた。この業者は,3か月に一度日本を訪れ,1週間毎日オ-クション会場に通い,仕入れる一方で,提携している日本の中古車輸出業者からインタ-ネットでほぼ毎日車を仕入れており,現時点で約100台の在庫をもっている。年間販売台数は約600台で,従業員は10(内セ-ルスは4名で,-ルス一人当たり月12台売っている)も抱えている。取扱商品を2トントラックに絞り込んでおり,それも冷凍・冷蔵庫搭載のトラックである。中古車販売を既に14年間従事しているが,その前の仕事を聞くと,地方政府の経済貿易局の役人であったという。知事が代わり,ポリティカル・アポインティ-のために,役人をやめたようだ。当初は,粗利が高かったが,現在は競争が厳しくなり,57%程度である。それでもすべて自己資金でまわしており,手元に残る利益は大きそうに見える。

今後,こうした相対的に規模の大きい業者にシェアが集中していく中で,このグリーンコーナーもその様相を大きく変えるかもしれない。