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京大上海センターニュースレター
第84号 2005年11月22日
京都大学経済学研究科上海センター
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目次
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第5回京都大学−ソウル大学国際学術シンポジウムのご案内
○ 上海センター・ブラウンバッグランチ・セミナーのご案内
○ 中国・上海ニュース 11.14 -11.20
○東アジアのインフラ・ファイナンス
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第5回 京都大学−ソウル大学国際学術シンポジウムのご案内
メインテーマ「東アジア経済の発展と課題」
主催 京都大学経済学研究科上海センタ−
会場 芝蘭会館(〒606-8302京都市左京区吉田牛の宮11-1 電話 075-771-0958)
日時 12月14日・15日
プログラム
12月14日(水曜)
セッションT.10:00-12:30
「From Cherry Picking to Bottom Feeding-日本における銀行問題の起源」
趙成旭副教授
「日本の銀行の構造改革」 吉田和男教授
セッションU.14:00-16:30
「東アジア経済における為替レート変動と政策に関する再考察―過去から未来へ」 金載永副教授
「国際資本移動研究に関する新動向」 岩本武和教授
15日(木曜)
セッションV.10:00-12:30
「ランダム効用関数フレームワークにおけるパラメータ進化のモデル化」
金眞教助教授
「日本の携帯電話需要の離散選択モデル分析」 依田高典助教授
セッションW.14:00-16:30
「長期経済成長における制度と政策
――東アジアとラテンアメリカの比較」
李 根教授
「アジアとアフリカ経済発展の類型比較」 ジャン・クロ−ド・マスワナ講師
レセプション 17:00 レストラン芝蘭
連絡先 京都大学経済学研究科 堀和生
電話075-753-3438/FAX075-753-3499
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上海センターブラウンバッグランチセミナー(第10,11回)のご案内
引き続きBBLを開催いたします。ふるってご参加ください。
第11回「中国における契約と紛争解決」
講師 森川伸吾 本学法科大学院 教授
日時 12月21日(水) 12時15分〜13時45分
場所 法経総合研究棟1階103演習室
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中国・上海ニュース 11.14−11.20
ヘッドライン
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中国:05年税収、3兆元突破の見通し
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中国:1−10月期FDI実行ベースで2.12%減
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国際:韓国、中国を「市場経済国」に認定
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中国:10月工業増加値16%増、乗用車生産が67%増
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中国:国際会計基準と共通化
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中国:大慶油田で天然ガス田発見、中国で5番目の規模
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内蒙古:石炭液化技術プロジェクトがスタート
■ 上海:電話普及率131%
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上海:1−10月の固定資産投資15.2%増
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長江デルタ:投資の伸び全国平均下回る
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東アジアのインフラ・ファイナンス
生島 靖久(国際協力銀行開発業務部調査役)
インフラ再認識とは、決して従来型のインフラ支援を行えば良いということを意味しない。貧困層へのサービスデリバリーを実現するという社会的公正と、持続可能なサービス提供とするための経済効率性のトレードオフに挑んでいく必要がある。また、インフラ整備・維持に要する資金的ニーズは膨大であり、どのようにインフラ・ファイナンスを強化していくという視点も欠かせない。このような状況で、ODAによるファイナンス、特に円借款はどのような役割を果たすべきであろうか。
第1に、インフラをネットワークとして捉えた場合、ボトルネック施設への支援を継続する必要がある。これは、民活・民営化を行う上での前提条件ともなるものである。電力における送電部分、通信における市内伝送路部分、上水における給水管網、下水における下水管網、鉄道における軌道部分などが特にボトルネック施設と位置づけられる。無論、市場規模・密度などの前提条件から統合型インフラ・ネットワークを整備する場合には、ボトルネック施設以外の部分への支援も必要とされる可能性があることは当然のことである。
第2に、借款と贈与を対立軸と捉えることなく連携を進める必要がある。特に、インフラ・サービスの貧困層へのデリバリーを強化する上で、接続費用などへの補助金は欠かせない。こうした補助金へのファイナンスは、借款ではなく贈与であることが望ましい。円借款によるプロジェクトと無償資金協力によるプロジェクトとの連携を強めることは当然として、一つのプロジェクトなりプログラムの中で、同時に借款と贈与を供与できるメカニズムが必要となっている。
第3に、サブソブリン・ファイナンスへの取り組みも強める必要がある。中央政府経由の支援はこれまでのスキームでも十分に対応可能であるが、地方分権化が進み、行政・財政などの権限委譲が進む中で、中央政府の関与が少ない状態での支援も検討する必要が出てくる可能性がある。
第4に、ODA のファイナンス機能自体を拡充する必要もある。円借款とは、その名が示すように「円建て」の支援を行うものであるが、外国の通貨による支援が行えれば開発効果を高めることができるようになる。特に、インフラ事業のプロジェクト収入は現地通貨建てであることが通常である。アジア通貨・金融危機の原因の一つは、為替ミスマッチと期間ミスマッチにあるが、仮に現地通貨建ての融資が行えれば、相手国にすれば為替リスクを回避することができる。無論、その為替リスクは資金の出し手であるドナー側に転嫁されてしまうので、ヘッジ可能な通貨(例えば、タイ・バーツ、中国・人民元、マレーシア・リンギットなど)を慎重に選択する必要がある。また、現地通貨建ての供給は相手国のマネーサプライとの関係が直接的となるので、金融政策との兼ね合いにも配慮する必要があるかも知れない。
現地通貨建て融資以外にも、ODA による保証という可能性もある。主要な利点は、国内貯蓄の動員、或いは外国からの民間資金動員の促進が期待できることにある。しかし、保証による支援には直接のドナー側の資金動員が伴わないので、現在のDAC(開発援助委員会)が想定するODA
の要件に合致するか否か検討が必要である。フランスは、ODA の要件に照らして、@資金自体は公的主体から提供されないが、保証による資本コスト低減部分は、実質的には公的主体が生み出したもの(公的主体の要件)
、Aそもそも資金供与をする際と同じようなプロジェクトを支援(例:マイクロクレジットなど)するもの(開発目的の要件)、B市場金利と保証付き金利との差額分が譲許性にあたる(譲許性の要件)として、保証による支援をODAに計上すべきであると主張している。
(本稿は11月2日に開催された上海センターブラウンバッグランチ(BBL)セミナーでの講演を生島靖久氏にまとめていただいたものである。)