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京大上海センターニュースレター
85号 20051129
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

   第5回京都大学−ソウル大学国際学術シンポジウムのご案内

   上海センター・ブラウンバッグランチ・セミナーのご案内

   中国・上海ニュース 11.21 -11.27

○中国の会食の風景とその変化

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第5回 京都大学−ソウル大学国際学術シンポジウムのご案内

メインテーマ「東アジア経済の発展と課題」

主催 京都大学経済学研究科上海センタ−

会場 芝蘭会館(606-8302京都市左京区吉田牛の宮11-1 電話 075-771-0958)

日時 1214日・15

プログラム

1214日(水曜)

セッションT.10:00-12:30 

From Cherry Picking to Bottom Feeding-日本における銀行問題の起源」        趙成旭副教授    

「日本の銀行の構造改革」           吉田和男教授

セッションU.14:00-16:30

「東アジア経済における為替レート変動と政策に関する再考察―過去から未来へ」             金載永副教授

「国際資本移動研究に関する新動向」      岩本武和教授 

15日(木曜)

セッションV.10:00-12:30 

「ランダム効用関数フレームワークにおけるパラメータ進化のモデル化」

                        金眞教助教授

「日本の携帯電話需要の離散選択モデル分析」  依田高典助教授

セッションW.14:00-16:30

「長期経済成長における制度と政策

――東アジアとラテンアメリカの比較」   李 根教授

「アジアとアフリカ経済発展の類型比較」 ジャン・クロ−ド・マスワナ講師

 

レセプション 17:00 レストラン芝蘭

連絡先 京都大学経済学研究科 堀和生

                        電話075-753-3438/FAX075-753-3499

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上海センターブラウンバッグランチセミナー(10,11回)のご案内

引き続きBBLを開催いたします。ふるってご参加ください。

11回「中国における契約と紛争解決」
講師 森川伸吾 本学法科大学院 教授
日時 1221日(水) 1215分〜1345
場所 法経総合研究棟1103演習室

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中国・上海ニュース 11.2111.27

ヘッドライン

           中国:松花江の水質汚染で、ハルピン4日間断水

           中国:江西省で地震、死者14人

     中国:全国96%の村で電話開通、計画前倒しで実現

     中国:新疆など3地域、鳥インフルエンザ新たに発生

     中国:1−10月中国への外国人旅行者数が1億人突破

     北京:就職外国人、資格証書取得を義務付け

     雲南:瀾滄江・メコン川、国際豪華客船初就航

     上海:鳥インフルエンザを警戒、空港で健康申告書の提出義務

     上海:国内出版業界で初の株式有限会社が設立

     黒竜江:炭鉱で爆発事故、134人死亡

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中国の会食の風景とその変化

                           矢野剛(徳島大学総合科学部)

私は、2001年以来年二回のペースで中国現地での企業・政府機関の聞き取り調査をおこなってきた。上海・江蘇省・浙江省といった経済発展が進んで豊かないわゆる江南地域が主たる対象地である。朝から夕方まで調査をするため、当然その間にお昼ご飯を食べる。こういうとき、中国での調査やあるいは出張業務に関わられた方ならみな御存じだと思うが、調査先の企業の方から昼食を御馳走していただく機会が誠に多い。調査でお邪魔した上に、御飯まで奢っていただくのは大変心苦しい限りである。中国式の会食スタイルをとるため、今日される料理の品数も多く、価格も決して安価ではなさそうなことにも申し訳ない思いを抱く。ただ、この会食が我々にとって全面的に嬉しいものかというと、本音を言えばやや微妙である。この点についても中国での調査や出張業務に関わられた方は同感なのではないだろうか。第一に、礼を失したり心証を害したりするわけにはいかない企業や政府機関の方々との会食であるため、その間様々な気配りのために精神の緊張を解くことはできない。第二に、何よりも午後からも仕事(調査)があるにも関わらずお酒が出てくることが多い。我々も飲まないわけにはいかないが、当然午後の仕事の間眠気や精神の弛緩状態が何度も襲ってくることになる。私はどちらかといえばお酒が好きな方だが、仕事のためにはお昼のお酒は無いに限る。お酒が入るため、宴会に近いような騒ぎ方になることもある(しかし、時間が来るとさっと元に戻って仕事に帰って行く中国企業人・官僚の切り替えの良さにも感嘆してしまう)。我々は、農村工業企業、それも元は地元政府経営企業から始まって、今は民営化された企業を訪問させていただくことが多い。いわゆる「蘇南モデル」と呼ばれた郷鎭企業の後裔である。会食の際には、複数の地元企業経営者の方々が来てくださることが多く、この経営者たちは今は独立したオーナー経営者だが、かつては同じ地方政府が経営する企業の雇われ経営者であり、かつての(官僚としての)同僚である。旧知の中小企業の社長さん達が集まって一杯やるわけだから、特にこういう時の会食は宴会状態になることが多い。アルコール度の高い蒸留酒である白酒さえ登場する。

しかし、2001年からの5年の間に、中国における会食の風景も相当変化した。第一に、上に書いたようなお昼間からのアルコール摂取の量は随分減少した。白酒が登場する場面には久しく出くわしていないし、ビールや紹興酒を多量に奨められたり、ホスト側の企業の方々が飲むことも減った。最近よくあるのが56人で一本のワインを空けるというパターンで、これはアルコール摂取量負担の面からは軽いものである(ちなみに、中国ではワインは決して安くないお酒だが、これを飲む人が増えているのは、所得の向上、ワインメーカーのイメージ戦略攻勢、健康志向への一層の傾斜によるものである)。全くお酒が登場しない場合さえある。考えるに、接待してくださる企業経営者の方々も忙しく、午後にアルコールを体内に残したくないのだと思う。中国の一般労働者の労働密度はまだまだ薄いなと感じる反面、企業経営者・管理職の方々は圧倒的に多忙である。彼らはいわゆる「勝ち組」に属する中産階級で、有能な人々だが、そういう人々にはいくらでも業務がやって来るのが現在の中国労働事情である。「土曜日、日曜日など無い」という人も多い。そういう中産階級的生活様式の浸透につれて現れた第二の変化が健康志向とメニューの変化である。以前は会食メニューの中に、肉料理、それも醤油などで濃く味を付けた料理が比較的多く入っていたと思うが、最近は肉料理の割合がかなり減少したようだ。野菜、大豆加工品と魚介類をあっさりと塩とスープストックくらいで味付けをした料理を中心にメニューが構成されることが多い。塩の味付けも薄くなった。企業の方が、はっきりと「塩は少なめに」と注文するのを聞いたこともある。今後も料理の品数や量が減少していく等、更に会食の風景は変化していくだろう。

ちなみに、私が正直に言って一番好きな中国でのお昼御飯は、その時分になると街角で売り出す盛り合わせのお弁当「盒飯」である。これが美味い。