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京大上海センターニュースレター
89号 20051228
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

   中国・上海ニュース 12.19-12.25

○韓国における国立大学の法人化と私立学校法の改正について

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中国・上海ニュース 12.1912.25

ヘッドライン

           中国:04年GDP世界6位に、16.8%上方修正

           中国:重大炭鉱事故6件で省部級幹部含む222人処分 

     中国:2006年分石炭輸出、初回割当6400万トン

     中国財政部:財政政策で「経済成長方式の転換」など図る

     上海:「長江デルタ水運圏」、建設が本格スタート 

     日系会社: オークマ、中国で工作機械5割増産

     上海:2005年分譲マンション価格9%上昇

     上海:浦東空港拡張工事認可、滑走路5本体制へ

     浙江:寧波港と舟山港が来年1月合併、世界トップ3入り目指す

     中国:399種の生産設備・製品を淘汰へ

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韓国における国立大学の法人化と私立学校法の改正について

大西 広

 年末に機会があって韓国の全国教授労組を訪問した。もともとの母体は1987年に設立された「民主化のための全国教授協議会(民教協)」で、韓国政治の民主化のために闘った世界的にも有名な団体である。が、今は民主労働党系の民主労総に加盟する労働組合で、英語名も”Korean Professors Union”となっている。ただし、労働組合としてまだ法律的には認められていないためにその「合法化」を要求中で、ノムヒョン大統領はいくつかの優先される労働組合の「合法化」の後、この教授労組も「合法化」する予定であるそうである。といっても、団体としての存在と活動自体は現在特に問題にされているわけではないので、ここで言う「合法化」とは、労組としての交渉権の法的承認と理解されるべきもののようである。

 が、ともかく我々日本の国立大学の教員にとって関心なのは、韓国でもその法人化が準備されていることで、06年夏の実施を目標に06年二月に法案を国会で通す予定になっているという。以前、日本で法人化がされる前後に韓国を訪問した際、私の友人は「韓国もこれにならって法人化することとなろう」と語っていた。その予想がずばりと当たってしまってびっくりである。

 ただし、聞いている限りでは、現在作成途上の法人化法案には日本との大きな違いもあるようである。

 たとえば、国立大全体を法人化するのか、その一部をするのかも定まっていないという。そして、そうした状況下でソウル大学のような強い大学が自ら法人化の意向を表明したり、ある市立大学が「国立大学法人」となることを希望していたり、あるいは今まで国立大学のなかった蔚山市がその設立のために「国立大学法人でもよい」と言ってきたりというそうである。一応、当事者に選択権があるようで、さすがにノムヒョン政権下の法人化論議となっている。ちなみに、今のところ日本のように運営費交付金を毎年1%削減するのでなく、引き上げが約束されている。

 それからもうひとつの違いは公務員身分のことである。聞くところでは、教員は公務員のまま、職員は五年後に選択ということであるらしい。韓国の国家予算も日本と同じく火の車であるが、公務員削減の数字合わせのために非公務員化するというものではないようである。

 他方、この全国教授協議会で聞いた事柄で非常に興味深かったのは私立学校法の改正問題である。これは、私立学校の理事会メンバーの1/4以上に「公益理事」を入れ、その理事は教職員、学生、父母、同窓会、地域から選ばれねばならないとするものである。野党ハンナラ党は私立学校は私的財産によって営まれているのだから、誰を理事にしようが勝手と反論しているようであるが、「外部評価」がトレンドの御時勢、旗色は不利のようである。地域住民を含め、幅広い市民の支持をこうした形で吸収しようとしている韓国のあり方は我々ももっと学ばねばならないように思われる。

 実は、この全国教授協議会は「非合法」の故、まだ1000人程度しかメンバーを持たない組織である。が、私が面会した組合幹部のひとりは訪問の翌日にこの私立学校法改正問題で野党ハンナラ党とテレビ討論すると言っていたから、社会からは一目を置かれる、社会的影響力の大きい組織として存在している。彼らは、韓国社会がまだ遅れているため教員の社会的地位が高く、そのおかげだと言っていたが、「社会進歩」が大学教員の地位低下で測られるというのでは情けない。日本のテレビでも教授を登場させることはあるが、何か「タレント化」していて、普通のアホなタレントとの差がだいぶ分からなくなっている。これが日本における大学教員の地位の低下を導いているのか、それとも逆にそうしたタレントを望む視聴者のレベルがこの結果を招いたのか。考え込まされる機会となった。