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京大上海センターニュースレター
99号 200638
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

京都大学経済研究所国際セミナーのご案内

   中国・上海ニュース 2.27-3.5

   EUの対中国武器禁輸解除問題をめぐって

   「北東アジア・アカデミックフォーラム2006 in 京都」のご案内

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京都大学経済研究所国際セミナーのご案内
「企業レベルから見た市場経済移行−中国とロシアにおける企業比較

このたび、以下の要領にて、京都大学21世紀COEプログラムの援助を受けまして、国際セミナーを開催することとなりましたので、ご案内申し上げます。
 本セミナーは、中国とロシアの工業企業システムにおける転換過程を比較することにより、市場移行のミクロレベルでの制度変化のあり方を探ることを意図したものです。とくに、両国の企業がどのように市場に適合しているのか、そこでの企業慣行と取引様式・経営戦略・コーポレートガバナンス・人的資本形成・ステークホルダー関係などの変化にはどのような共通性と独自性が観察されるのかは、市場移行に伴う制度変化をとらえるうえでとくに重要な課題になります。そこで、今回、経済研究所をベースに、ロシアの高等経済大学、中国の華東師範大学、アメリカのルイズビル大学に所属の研究者と共同で、国際セミナーを企画致しました。本セミナーでは、今後の共同研究の可能性もまた議論できればと考えております。ロシアおよび中国の研究機関と招待者は、企業調査、社会・経済調査において経験をお持ちの専門家です。
 
海外からお招きしております研究者は以下の通りです。Prof. Binyi Sun, Dr. Yan Huang (East China Normal University, Department of Business Management of Business College, China), Professor Leonid Kosals, Professor Rosalina Ryvkina, First Vice-Rector Professor Vadim Radaev (The State University-High School of Economics, Moscow, Russia) Professor Alexei Izyumov, Professor Babu Nahata (Center for Emerging Market Economies, University of Louisville)

 参加(セミナーおよび懇親会)およびプログラムにつきましては、資料、会場の準備の関係で、事前に314(火曜日)までに、溝端(下記)まで、Faxあるいはemailにてご連絡いただきますようにお願い申し上げます。
日時:2006317日(金曜日)−318日(土曜日)
両日とも 午前10時から午後540分を予定しております。中国企業・ロシア企業・国際比較研究の視座を軸に、5つのセッションを開催する予定です。
場所:京都大学経済研究所 1階 会議室
連絡先・問合せ先:〒606-8501京都市左京区吉田本町京都大学経済研究所 溝端佐登史 

 Tel:075-753-7144  Fax:075-753-7148  E-mail:mizobata@kier.kyoto-u.ac.jp

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中国・上海ニュース 2.27−3.5

ヘッドライン

           中国全人代:今後5年間の経済成長7.5%、農村建設最重要課題

           中国:2005年世界最大の半導体消費市場

     中国:国防予算14.7%増、全人代報道官説明

     中国:1月石油輸入イラン産首位、サウジ産2位に

     広州:鳥インフル感染で男性死亡、市場で感染か

     広西:国産ディーゼルエンジン、初の「ユーロIV」クリア

     上海:「持続可能な発展能力」ランキング首位 

     上海:平均4年に1回転職、若者は2年に1

     自動車:奇瑞、2月売れ行き好調、販売台数第3位に

     山東:日本企業、中国の農業経営に初めて本格参入

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EUの対中国武器禁輸解除問題をめぐって

京都大学助教授 坂出 健

 昨年11月、胡主席は、イギリス・ドイツ・スペインなどの欧州諸国を歴訪し、EUの対中国武器禁輸解除をあらためて求めた。翌12月、陳総統がイタリアのテレビのインタビューで、対中国武器禁輸解除反対を表明した。このやりとりは、2006年中のEUの対中国武器禁輸解除問題の前哨戦とも見受けられる。この問題が昨年に引き続いて米欧中日間の中心的な交渉イシューの一つとなることも考えられるので、本問題をめぐる昨年の経緯を少し整理してみよう。

 EUの対中国武器禁輸は、1989年、天安門事件に対する西側のリアクションとして開始された。開始時においては禁輸措置の主唱者であったフランスは、15年を経過して、逆に解除の急先鋒に転じた。2004年中に、フランスは、ドイツとともに、対中国武器禁輸解除の姿勢を鮮明にした。フランスによる禁輸解除の理由としては(中国側からの理由付けとほぼ同一であるが)、(1)対中国武器禁輸は冷戦時代の遺物であり、中国への差別的措置である、(2)中国政府の人権問題への対応は15年間で改善された、(3)武器禁輸解除は直接的に欧州の中国への武器販売を意味せず、東アジアの軍事バランスを不安定化させることはない、などがあげられる。その一方で、武器禁輸の15年間で、中国の兵器購入先はロシアに絞られており、フランスはミラージュ戦闘機の、ドイツはステルス潜水艦の対中国売却を考慮しているのではとの見方もあった。仏独主導により、欧州委員会the European Commissionは解除議論に先鞭をつけ、欧州理事会the European Councilも、2005年前半中に、対中国武器禁輸を解除するかどうか決定することを決めた。2004年末頃には、12月の欧州−中国サミットで、武器禁輸解除問題が検討されるなど、EUの武器禁輸解除の可能性はたいへん高くなっていたが、2005年初頭の2つの事態−アメリカの解除反対と反分裂国家法anti-secession lawの制定−が解除論議に深刻な影響を与えた。

 20052月、ブッシュ米大統領は、シラク仏大統領に、武器禁輸解除は、東アジアの均衡を損なうという理由から反対であると伝えた。そして、3月、中国全国人民代表者会議が反分裂国家法を制定し、台湾統一に対する究極的手段としての軍事力行使を排除しないことを明らかにすると、事態は流動化した。反分裂国家法の全人代通過と時を同じくして、EU代表団(ソラナEU外相の使節)は、ワシントンを訪問し、政府・議会関係者に禁輸解除への理解を求めたが、不調に終わった。反分裂国家法制定により、いくつかの欧州諸国の世論は、対中国武器禁輸解除反対の傾向を示した。320日、ライス国務長官は、アジア諸国訪問の最後にソウルで、EUの武器禁輸解除は「適正ではない」と反対した。ライスは、東アジア地域に軍事的責任を負わないEUが地域の均衡を乱すべきではないし、東アジアのアメリカの主要同盟国である日本・韓国もともに反対していると強調した。また、一部のアメリカ議員は、もしEUが武器禁輸解除にふみきれば、米議会は、米−EU間の貿易摩擦問題化に発展するだろうと警告した。そのため、ビショフEADS(仏独合弁によるエアバスの親会社)会長も、禁輸解除をめぐる米欧摩擦は、EADSのアメリカでの事業にとってリスクとなるとの慎重な姿勢を示した。人権問題では、中国は、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」批准に向けて努力したものの(署名は1998105日)、批准実現にはいたらなかった。

 4月から6月にかけて、解除問題は米欧中日の主要交渉課題となった。フランス・中国は、禁輸解除推進を続行した。4月には、仏中両国は、農業・法律・技術にまたがる21の協力協定を締結し、中国によるエアバス機の購入についての契約記念式典へ両国首脳が出席するなどのアピールも行われた。一方、日米は、すでに2月の日米戦略協議で、台湾海峡の「安定」への両国の関与を戦略目標として策定しており、EUの武器禁輸解除反対の姿勢を明確にした。7月から12月にかけて欧州議会議長国となるイギリスも、禁輸継続の方向での調整に入った。415日、欧州議会は、36392(棄権39)で、対中国禁輸継続を決議した。5月、小泉首相、武器禁輸解除は東アジアの政治的安定を損なうとして、禁輸継続をEUに要請した。一方、シラク大統領は、小泉首相に対して、武器禁輸解除は、”sensitive technology”の対中売却を意味しないと説明した。最終的には、622-23日、ブリュッセルで開催された欧州理事会(最高意志決定機関)は、EU−中国間の戦略的パートナーシップの発展を約束したものの、2005年における武器禁輸解除を見送った。

 以上のような、EUによる2005年中の武器禁輸解除見送りは、中国−EU間の先端技術をめぐる提携関係の遅延を意味するのだろうか?もともと、解除をめぐる議論においては、武器禁輸解除後におけるEU−中国間の武器取引については曖昧な点が多い。仏中双方とも、公式には、解除は武器取引の開始を意味しないとしている。フランスは、台湾空軍に対してミラージュ2000戦闘機60機を販売しているため、中国に対してもミラージュ戦闘機を販売することには政治的障害が予想される。また、中国は、EUの武器禁輸緩和を、対ロシア兵器購入交渉を有利に進めるための交渉材料としているとの見方もあるが、これだけで説明することも困難であろう。もし武器禁輸解除がされたとしても、ただちに中国-EU諸国間の武器取引が実現するとは考えにくい。それでは、中国はEUに何を求めているのか?成長著しい中国製造業自身が製造できず、ロシアからの購入もできない、EUの先端技術とはなにか?ステルス潜水艦はひとつの答えになるかもしれないが、それ以外には、ガリレオ計画(欧州独自の衛星利用全地球測位システム)の検討が参考になるだろう。全地球測位システムとは、衛星から発信される電波により地上における正確な位置を測定する仕組みで、自動車・鉄道などの交通機関、携帯電話による民生利用が想定されている。実は、対中国武器禁輸議論の先鞭をつけた欧州委員会は、ガリレオ計画への中国参加の主唱者でもあるのだ。2008年運用開始を目標とするガリレオ計画は、GPS(全地球測位システム)分野でのアメリカの独占に対抗するEUの独自システムである。アメリカはGPS1970年代から開発した。一般には、カーナビなどの印象があるが、軍事的には、精密誘導に不可欠の情報システムであり、湾岸戦争・対アフガン戦争・対イラク戦争での精密誘導爆撃において決定的な軍事的役割を果たしたアメリカ軍のRMA(軍事革命)の原動力である。1999年のNATO軍のユーゴ空爆では、欧州諸国は、爆撃目標の選定と位置確認、破壊程度の確認等の電子的戦術情報収集といった「情報の傘」を、アメリカ軍に完全に依存せざるを得なかった。こうしたアメリカ依存は、有事においては、アメリカ軍がGPS情報の他国への提供を制限されうるという脆弱性を内在させている。RMAの進展により、GPS情報の重要性が高まるなか、情報RMAでの米軍とのデータ・リンクを高める選択をした日本とは逆に、EU諸国は独自のGPS構築(ガリレオ計画)を推進した。2001年、アメリカは、ガリレオ計画に強力に反対し、一時計画はつぶれかけたが、シラク大統領の強い指導力でもちこたえ、民生用を基本とし欧州域外各国に参加をよびかけるという新方針をとった。この新方針に沿って、最初の非欧州参加国となったのが中国である。200310月、胡主席はガリレオ計画への中国の参加に合意し、開発費用34億ユーロのうち2億ユーロを中国が負担し、有人宇宙飛行の経験を背景に研究・技術開発での協力を表明した。中国のガリレオ計画参加は、他の国々のガリレオ計画参加の先駆けとなった。インドが参加し、サウジアラビアも参加を検討している。EUは中南米諸国へも参加をよびかけており、ガリレオ参加は、事実上、アメリカの一極世界支配を認めるか、多極世界志向かの試金石の様相を呈している。EU・中国政府の発言では、ともに「ガリレオは民生利用に限定される」という公式の立場を堅持しているが、ガリレオは、米国GPSより精度が格段に精密であり、軍事利用の潜在的可能性は大きい。中国の軍事的観点からすると、周辺有事が発生した場合のアメリカの介入に対して、アメリカに依存しない「情報の傘」の重要性は高い。また、ガリレオ計画への参加を通じて蓄積した経験は、中国が将来独自のGPSシステムする技術的基礎にもなりうるだろう。2005年を通じて、武器禁輸解除見送りにもかかわらず、現時点では民生用技術であるガリレオ計画をめぐるEU−中国協力は着実に進展しており、2005年秋の中国−EUサミットでも、ガリレオ計画はEU−中国の技術提携の重点分野となっている。2005年末にロシアのソユーズ・ロケットを使用した最初のガリレオ衛星が打ち上げられたのを皮切りに、今後2008年の運用開始にむけて計画は進捗することだろう今後、こうした、EU−中国間の先端技術開発協力の行方は、日本の針路にも大きな影響を与えることが予想される。昨年5月、対中国武器禁輸解除をめぐる米欧摩擦のなか開始された「東アジア問題についてのEU−アメリカ定期協議」の動向を、この問題に限らず、東アジア情勢をみる場合には注視する必要があろう。また、EUが対中国武器禁輸解除に踏み切った場合には、解除に引き続く武器販売に関する行動規範code of conductの具体的内容の検討なども必要であろう。

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「北東アジア・アカデミックフォーラム2006 in 京都」のご案内
        ――北東アジア地域における持続可能な森林マネージメント

         〜 環境・経済分野の交流を通じて豊かな森を守り活かす 〜
 京都議定書発効1周年の機会をとらえ、再生可能なエネルギーである森林バイオマスの利活用や森林生態系の保全などについて、飛躍的な発展を続ける北東アジア地域各国が協力して進める取組を探ります。
日 時  2006年3月12日();基調講演ほか   13日();現地見学
場 所  京都大学時計台記念ホール【定員 500人】
   
    京都市左京区吉田本町 京都大学本部構内正門正面
参加費  資料代      当フォーラム会員:無料  非会員:500円
  
    現地見学バス代  当フォーラム会員:無料  非会員:1,000円
主 催  環日本海アカデミック・フォーラム
後 援  京都府、()大学コンソーシアム京都、環日本海学会ほか
(1)
1日目 全体交流会議              総合司会;北川秀樹龍谷大学教授
 開会あいさつ 13:00〜13:05
     
環日本海アカデミック・フォーラム 世話人代表 藤本和貴夫(大阪経済法科大学学長)
 基調講演      13:05〜14:40
   @ 地球環境問題とモデルフォレストの最新事情〜特にアジアを中心に〜
           
国際モデルフォレスト事務局 ブライアン・バネル アジア担当上級企画官
   A ビジネスパートナーシップによる中国の森林保全
           
中国林業科学院       姜 春前 教授
セッション1 自然エネルギー・木材産業 〜アジアにおける木材利活用の推進方策〜
                            14:45〜16:00
 経済的発展、人口増加等を背景に「世界の市場」となった北東アジア地域におけるエネルギー問題を踏まえ、再生可能な木材及び森林バイオマス利用技術の開発と相互移転、木質系資源貿易等の展開方策を明らかにする。
(報告)
 我が国における木材利用のあり方   京都大学生存圏研究所 川井秀一 教授
 木質系資源に関する新技術開発と利用 京都府立大学     古田裕三 講師
 中国における木材工業の現状及び日中間の産業交流  浙江林学院  張 敏 教授
(パネリスト)
 京都大学生存圏研究所川井秀一教授、京都府立大学古田裕三講師、
 浙江林学院張敏教授、中国林業科学院姜春前教授
(コーディネーター)
 小澤普照京都府参与・元林野庁長官
セッション2 森林保全・再生 〜アジアにおけるモデルフォレストの展開方策〜
                            16:10〜17:25
 
北東アジア地域の森林の現状と問題点を確認し、森林認証などによる持続可能な森林経営の推進、CDM制度を利用した環境保全政策などについて議論を深めるとともに、この地域の今後の森林環境保全に向けて協力して取り組む重点事項(植林協力、水環境保全、省エネ対策等)を明らかにする。
(報告)
 古都の森の移り変わりと人の活動     京都府立大学     高原 光 教授
 持続可能な森林をめざして〜黄土高原における経験  緑の地球ネット高見邦雄事務局長
 中国のCDMルールとその可能性   立命館大学      周 い生 教授
(パネリスト)
 京都府立大学高原光教授、緑の地球ネットワーク高見邦雄事務局長
 立命館大学周い生教授、龍谷大学増田啓子教授
  
国際モデルフォレスト事務局ブライアン・バネル・アジア担当上級企画官
(コーディネーター)
 京都府立大学田中和博教授

 閉会あいさつ 17:25〜17:30
   
環日本海アカデミック・フォーラム世話人藤城進(京都府企画環境部長)

 なお、全体交流会議終了後に、京都大学正門前のレストラン「カンフォーラ」にてレセプションを予定しています。(会費;会員1,000円、非会員3,000円)
(2)
2日目 現地見学
北山地域の森林ほか
    
我が国の伝統的建築に欠かせない磨丸太を生産する北山林業地域で、スギの特性を利用して独特の「台杉」を仕立てて更新する(持続可能な生産)伝統的な育林の現場を視察するとともに、北山杉資料館で磨丸太の歴史等を見学します。
間伐材を利用した新工法建築物「j.Pod建築モデル施設」<京都大学内>
      
京都大学フィールド科学教育研究センター並びにj.Pod開発グループ(京都大学大学院地球環境学堂 小林研究室、(株)鴻池組、(有)桃李舎、トリスミ集成材(株)、John Barr Architec)が開発した「21世紀の循環型社会を指向した革新的な木造建築システム j.Pod」によるモデル的な施設を見学します。
   
 集合:8:30分(京都府庁東門前)解散:13:00(京大又は地下鉄今出川駅

参加申込みは環日本海アカデミック・フォーラム〒602-8570京都府企画環境部企画参事内TEL075-414-4347 or FAX075-414-4363 or e-mail:acdfo@mail.joho-kyoto.or.jp に住所・氏名・電話番号等を記入してお願いします。