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理事長挨拶

依田 高典 (京都大学経済学研究科長・経済学部長)

2021年4月より経済学部長・研究科長を仰せつかりました依田高典と申します。同時に経済学部同窓会理事長にも就任いたしました。同窓会会員の皆様には、今後ともご指導、ご助言をお願い申し上げます。

ここ千年の都・京都にて、京都大学経済学部・大学院経済学研究科へ、皆さまの後輩である学生諸君を迎えて、新しい年度をスタートさせております。OBOGの皆さまは学生時代をどう過ごされましたか。京都の四季は美しいです。春は洛東・哲学の道を逍遥し、夏は洛北・貴船で涼を楽しみ、秋は洛南・醍醐で月を愛で、冬は洛西・嵐山で雪を踏む。OBOGの皆さまにとっても、とても大切な青春の1ページがおありでしょう。時を惜しんで、学問に励むと共に、朋友と語りあった思い出が走馬灯のように駆け巡りませんか。京都大学経済学部は、2019年に学部創立100周年を迎えた、日本最古の経済学部です。京都大学は自由の学府として、何よりも学生自身の自学自習の精神を尊重してきました。好きこそものの上手なりけれと、利休居士は遺しています。人生は長いです。これからも、皆さまの後輩である学生諸君には、好きな人生の主題を見つけられるように指導して参ります。

私が京都大学経済学部に入学したのは1985年春でした。よく覚えています。入学式の前日に茶話会が開催され、学部長、研究所長を差し置いて、新入り教員だからと謙遜しつつ、口を開くや、独演を止めない御仁がいました。「法学部でなくて経済学部で良かった。経済学ほど面白い学問はない。社会に応えられる学問を学んで欲しい」。さすがに大学というところは、怪人物のいるところだと感心しました。ゼミ選択の折りに、その怪人物の名前が伊東光晴であることを知るや、この御仁に勝とうと、敢然と伊東ゼミの門を叩き、毎週のゼミの度に論争を挑みました。勝てませんでした。この御仁は挑戦的な若者を愛し、卒業の秋に就職の挨拶にうかがった折り、長嘆息して「惜しいねえ」と言いました。その一言で、私は人生の主題を悟り、翌年の大学院進学を決意しました。人の出会いは人生を変えます。

同時に、人生は短いです。経済学部長・経済学研究科長として多くのことを望みません。私は母校の改革で、2つの主題に注力したいと思います。

第一の主題は、文理融合教育の推進です。経済学ほど面白い学問はありません。今、経済学はいわゆる人工知能のようなデータサイエンスと融合し、新しい実証的学問として、世界を変えつつあります。京都大学経済学部はいち早く理系入試を取り入れ、文理融合教育を目指してきました。これからも全学のセンター・研究科と協力して、経済学とデータサイエンスの融合教育に取組んでいきます。文系学生は理系の科学技術知識を、理系学生は文系の文化歴史芸術を身に付けるように指導して参ります。日本は今、国際競争の苦境の中で呻吟しています。従来型の狭い知識人では、これからの荒波を乗り越えられません。皆さまの後輩である学生諸君には文理の枠を飛び越えて、新しい時代の波を作って欲しいと思います。

第二の主題は、国際的研究力の強化です。国民は自由の学府・京都大学の卓越した研究力にこそ心から期待しています。湯川秀樹先生のように、福井謙一先生のように、山中伸弥先生のように、私たちは卓越した世界的研究で、社会に応えたいと思います。そのためには、教員の働き方の革新と役割の分担が必要です。チームとして、経済学研究科の研究力を強化しなければなりません。そして、学生諸君こそ、その輪の中心に陣取り、従来型の学問体系に果敢に挑戦してもらいたいと思います。私はその環境整備のために、力を尽くす所存です。皆さまの後輩である学生諸君には、国境の枠を飛び越えて、新しい学問の波を作って欲しいと思います。

OBOGの皆さまは学生時代をどう過ごされましたか。人生は長いようで短いです。掻痒として焦ることもあったでしょう。人生は短いようで長いです。汪洋として戸惑うこともあったでしょう。私たち教員は皆さまの後輩である学生諸君に焦る自由、戸惑う自由を与えたいと思います。そうした時には、春に洛東・哲学の道を逍遥し、夏に洛北・貴船で涼をとり、秋に洛南・醍醐で月を愛で、冬に洛西・嵐山で雪を踏みつつ、京都の美しい四季を愛でるように言葉を贈りたいと思います。

京都大学経済学部 同窓会

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