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東京支部 経済懇話会

第57回経済懇話会の報告

第57回経済懇話会は、2021年7月17日(土)午後1時から、荒木隆司常務理事の司会により、ZOOMにより開催された。冒頭、相亰重信支部長の挨拶と講師紹介のあと、本日の講師である京都大学経済学部長である依田高典教授による「プラットフォームの経済学:GAFAのデジタル支配にどう立ち向かうか」という演題での講演をお聞きした。講演のあと、約30分の質疑応答を経て午後2時半に終了した。参加者は73名であった。

講演要旨

【プラットフォーマーとは】
プラットフォーマー4強といわれるGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)は世界市場を股にかけて、ネットワーク効果を梃子にして、歴史上比類なき市場支配力を手に入れた。プラットフォーマー規制は世界の潮流だが、その学理は未確定であり、伝統的法理・経済学ではメカニズムが十分に解明できていない。欧州委員会のGDPRが世界をリードしているが、論点の飛躍があり、規制ありきの印象を免れない。 競争政策・消費者保護の両観点から、事前・事後の措置を講じることが重要である。
プラットフォーマーの特徴は、両面市場。 間接的ネットワーク効果を駆使して、一方を無料に、他方を有料にして、2種類の市場参加者をつなぐビジネス・モデルを「両面市場」と呼ぶ。ネットワーク効果を受ける側の価格を引き上げ、作用する側の価格を引き下げるのが両面市場の価格戦略。両面市場の事例は、インターネット・オークションの売り手と買い手、テレビ番組のスポンサーと視聴者、テレビゲームのソフト開発会社とユーザーなど、多く存在する。

【日本における取組み】
アメリカではバイデン政権の下で、巨大プラットフォーマーへの規制を強化しているが、日本でも、私も加わって、以下のような取組みが行われてきた。
日本では、デジタル市場の競争政策の迅速かつ効果的な実施を目的として、内閣官房に「デジタル市場競争本部」が設置され、その下に、「デジタル市場競争会議」が置かれて、私はその民間議員となり、WGの座長を務めた。競争会議では、デジタルプラットフォーム取引透明化の法制化のための議論を重ね、2020年1月28日に「特定デジタル・プラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(案)」を発表。 法案は2020年5月27日に成立し、2021年2月1日に施行された。
また、消費者保護対策としては、消費者庁が、2019年から「デジタルプラットフォーム消費者取引検討会」を合計12回開催し、私はその座長として、消費者利益の保護をはかる新法の制定を求める報告書をまとめた。その結果、「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案」が2021年4月28日参議院本会議で可決・成立した。内容はまだ不十分と言わざるを得ないが、消費者保護の第一歩を踏み出せた。法律は販売業者から消費者へのB2C取引にのみ適用。消費者から消費者へのC2C取引には適用されない。販売側が消費者である場合(メルカリのような場合)、どこまで保護すれば良いのか詰める必要がる。法律はモノだけではなくサービスにも適用される。ターゲティング広告やパーソナル・プライシングへの適用は今後の課題。消費者保護法だけで、デジタルの消費者を守ることは難しい。デジタル取引は手軽なだけに騙されやすい。デジタルは危険に満ちているという消費者の意識改革が必要であり、AIの活用で悪質業者を排除する仕組みと消費者教育が必要。
競争当局の役割として、企業によるナッジの悪用(いわゆるスラッジ)を注視することが求められる。

【まとめ】
無料・両面市場ビジネスのからくりを分かりやすく周知し、市民の理解を得ないと、プラットフォーマー規制は功を奏さないだろう。
EUのGDPRは消費者保護の視点が強すぎ、競争政策の視点が弱い。
競争政策と消費者保護の二分法はもはや成り立たず、競争政策当局と消費者保護当局の密な連携が求められる。
行動経済学の競争政策への活用が必要だ。米国のクレジットカードや通信販売の規約説明のように、消費者保護で行動経済学の活用が進んでいる。プラットフォーマー規制を含め、競争政策において、行動経済学が十分に活用されているとは言えない。他国の競争政策当局が行動経済学を活用できていないならば、日本が先立って体系的に活用していけばよい。
プラットフォーマー規制は、ネットワーク効果、限定合理性、プライバシー権、人工知能と倫理の4本柱を総動員する必要がある。

(報告者 東京支部専任理事 奥田久美)

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