2006年度
科目名: 農業経済論(旧農業経済論A) ※専門科目T 2~4回生配当
授業時間: 前期、火曜日3限
講義内容:
農業は経済学の対象としては「一つの産業分野」にすぎないが、生産過程における自然制約性や農産物・食品という商品特性ゆえに、多くの特異性を有している。それはまた、自然環境、農家経営、村落社会、地域経済、食料安全保障、食品安全性など、市場経済の論理によっては到底捕捉しきれない広範な問題領域を包含し、したがって広範な専門性を要求する。本講義では、農業経済学の諸課題を「農業問題(Agrarian
Problems)」と捉える視点から、以下の構成にしたがって解説する。なお、本講義は後期開講の国際農政論への展開を前提としているため、実質的には通年4単位の授業として臨んでほしい。
1. 農業と農業問題 (2006.4.11)
2. 農業経済の分析視角(1) (2006.4.18)
@一般経済学と農業経済学
A土地制度論アプローチ
B主体形成論アプローチ
C市場論アプローチ
D近代経済学アプローチ
3. 農業経済の分析視角(2) (2006.4.25)
Eフードシステム論アプローチ
Fアグリビジネス論アプローチ
G農業社会学からのアプローチ
H農業地理学からのアプローチ
4. 日本の農業問題と農業政策の展開過程(1) 戦後〜1970年代 (2006.5.9) *5/2は休講
5. 日本の農業問題と農業政策の展開過程(2) 1980年代〜今日 (2006.5.16)
6. 農産物価格問題(1) (2006.5.23)
7. 農産物価格問題(2) (2006.5.30)
8. 農業構造問題 (2006.6.6)
9. 都市と農村の問題 (2006.6.13)
10. 食料問題(1) (2006.7.4) *6/20と6/27は休講するかわりにレポート課題を与える(提示6/6、提出7/4) 課題 課題文
11. 食料問題(2) (2006.7.11)
12. 期末試験 (2006.7.18)
テキスト:
田代洋一『新版・農業問題入門』大月書店、2003年
その他、適宜指示する。
本講義と関連のある他の科目:
<前提> 社会経済学入門、社会経済学1・2、現代経済事情、経済政策論1・2、地域産業論
<関連> 国際農政論、地域開発論、経済史・思想史入門、財政学、地方財政論
科目名:国際農政論(旧農業経済論B) ※専門科目T 2~4回生配当
授業時間: 後期、火曜日3限
講義内容:
農政政策の是非は、農業問題へのリアルな視点を抜きに語ることはできない。事実、新自由主義的グローバリズムに沿った農業政策は、農業を「構造改革・貿易自由化の障碍」と捉え、市場原理主義が農民、農村、食料に及ぼしてきたor及ぼしうる負の影響への反省を欠いている。本講義は、主として1980年代後半以降の国際的な農業政策の展開過程を振り返りながら、その政治経済的な背景と各国・各地域の農業構造に及ぼしてきた影響を実証的に明らかにする。その際、農産物・食料の生産・加工・流通過程で市場影響力を強めるとともに、政策形成過程でも強大な政治力を行使している多国籍アグリビジネスの動向にも注目する。さらに、こうした「上からのグローバル化」に対抗してローカルから胎動しつつあるオルタナティブな農と食をめざす取り組み(「下からのグローバル化」)にも焦点を当てながら、今後の農業政策のあるべき方向性について考えてみたい。なお、本講義は前期開講の農業経済論を前提としているため、実質的には通年4単位の授業として臨んでほしい。構成は以下の通り。
1. WTO自由貿易体制と世界農業
2. 米国農業と農業政策の展開(1) 食料戦略としての貿易政策
3. 米国農業と農業政策の展開(2) 農業構造の変化と農業政策
4. 欧州農業と農業政策の展開(1) 欧州レベルの農業政策・貿易政策
5. 欧州農業と農業政策の展開(2) 各国農業の構造変化と農業政策
6. 途上国農業と農業政策の展開(1) アジア・アフリカの農業・食料
7. 途上国農業と農業政策の展開(2) ラテンアメリカの農業・食料
8. オルタナティブ農業の現状と課題
9. フェアトレードの現状と課題
10. 食品安全行政の現状と課題
11. 農と食をめぐる国際NGOと国連機関の活動
参考書:
村田武編『再編下の世界農業市場』筑波書房、2004年
村田武編『再編下の家族農業経営と農協』筑波書房、2004年
大塚茂・松原豊彦編『現代の食とアグリビジネス』有斐閣、2004年
本講義と関連のある他の科目:
<前提> 社会経済学入門、社会経済学1・2、現代経済事情、経済政策論1・2、農業経済論、地域開発論
<関連> 世界経済論、国際経済学、欧米経済史、ヨーロッパ経済論