京都大学経済学部国際政治経済学(坂出)ゼミホームページ


事件は演習室で起こっている!?



平成28年度(2016年度)2回生演習・3/4回生坂出ゼミ募集(編入学者向け


[国際政治経済学International Political Economy]冷戦終結後、唯一の超大国・覇権国となったアメリカは単独行動主義に傾き、911テロへの対応策としてアフガン・イラク戦争に突き進んだ。しかし、それらの戦争は逆にアメリカの中心の覇権秩序を混沌としています。こうした現代の国際社会は、国際政治と国際経済の交錯した複雑な情勢の中で、政策上の諸課題の新たな解決策を求めています。こうした状況の中で注目を浴びているのが「国際政治経済学」と呼ばれる学問分野です。国際政治経済学は、国際政治学・国際経済学の複合的な視座から国際社会の問題に、理論・歴史・政策の三つの側面から探求に取り組むアプローチです。

〔到達目標〕本ゼミは、受講者が、激動する国際政治経済を分析する視座を獲得し、そのために必要な各種文献、内外の紙誌、各種シンクタンクの報告書、インターネットのサイトなどの情報収集の基礎力を身につけることを目標にしております。また、ゼミ報告・インゼミ報告をするためのPCを用いたプレゼンのトレーニングをします。ゼミで、他のゼミ生の報告を聞いて自分なりの意見を述べ、自分とは異なる意見の交流など、「討論力」を身につけます。

〔授業計画と内容〕大きく分けて次の六分野のホット・イシューについて、受講者個人・グループで、調査し、ゼミで議論します。(1)米中は「新しい大国関係」に入るのか?-南シナ海と海洋安保、サイバー攻撃をめぐる米中関係、アジア・インフラ投資銀行の今後、中国経済は「失速」するのか?(2)アメリカ大統領選挙-アメリカ大統領選挙の仕組みと制度、選挙の争点(外交・経済・文化)、(3)激動の中東情勢-イスラム国・シリア情勢と難民問題、ロシアの中東政策・イラン核開発問題等、(4)日本の外交経済戦略-安全保障政策(シーレーン防衛、PKO政策、北朝鮮ミサイル開発問題)、TPP、(5)欧州情勢-ギリシア債務問題とユーロ圏の将来、(6)地球的諸問題-地球温暖化問題・人口増加(前期・後期を通じてこれらのトピックを検討する)。これら諸トピックの調査と平行して、国際政治経済学の諸理論を学習します。-規範的国際関係理論、古典的リアリズム、古典的リベラリズム、構造的リアリズム、ネオ・リベラリズム、コンストラクティビズム、英国学派、グリーン理論など。各トピックについて、個人・グループで調査し、ゼミの前半で、レジュメ・PCプレゼンで報告し、この報告に基づいてゼミの後半に討論する。

〔履修要件〕国際政治経済に深く広い知的好奇心があること。

[教員紹介]坂出健准教授

[経済学部生にすすめる三冊の本(坂出健)]
 中国の歴史書には二つの流れがあって、国家が編纂した正式の歴史書である正史と民間の伝承などを集めた稗史(はいし)とがある。東西の歴史にまつわる記録や文学の類にもこの二つのジャンルは生きているような気がする。あるいは、近現代の歴史学の系譜を振り返ると、正統派の歴史観と修正主義(revisionism)の歴史観のせめぎ合いのなかで発展してきた観もする。第一次大戦や第二次大戦の起源や要因をめぐる論争のなかでも、両者の対抗をみることはできるのだが、ここでは、みなさんが高校時代に興味を持ったかもしれない日本の歴史小説を素材に考えてみたい。「正史」的な歴史小説といえば、私には司馬遼太郎が思い浮かぶ。戦国時代を素材としたものとしては代表的なもので、『国盗り物語』『播磨灘物語』。幕末・維新物といえば『龍馬がゆく』『燃えよ剣』。また、明治日本を活写した『翔ぶが如く』『坂の上の雲』。どれも文句なく面白い。続けて読むと、日本における封建社会の興隆から危機、近代日本国家の登場にいたる近現代日本史の稜線が浮き彫りになる格好となる。無論、発表当時は、異端の説であったりした個々の歴史的事件・人物の評価も多々あったに違いないが、膨大な文庫の出版点数のなかで、本屋の限りある文庫棚のスペースを占拠し続けているところをみると、司馬遼太郎のフィクションによって描かれた歴史こそが日本の歴史そのものであるという錯覚すら生まれかねない状況が窺える。日本には他にも多くの優秀な歴史小説・時代小説の書き手がいるが、独自の骨太な歴史観を提起しているといえるものとなると途端に数が少なくなる。ここでは正統的な歴史観に対して反逆を試みた(と思える)作家をいくつか紹介したい。まずは、司馬と同時代に活躍した山田風太郎。『妖説太閤記』をはじめrevisionismのテイストにあふれた作品は枚挙に暇ないが、ここでは明治近代化の裏面を描いた『警視庁草紙』(河出文庫)を挙げよう。次は、「関ヶ原で家康は死んでいた」というアイデアを膨らました隆慶一郎の『影武者徳川家康』(新潮文庫)が腰を落ち着けて読む甲斐のある本である。また、半村良の『産霊山秘録』(ハルキ文庫)は、伝奇SFというジャンルそのものを作り上げた作品で、多くの歴史物が前提とする暗黙のドラマツルギーに対するアンチテーゼとしても読める。いずれも現在文庫として入手できるものです。  現代の経済学や社会科学の様々なジャンルにおいても、こうした正統と異端の争いは随所に見受けられます。当初、異端として登場した学説が、論争を経て、次第に正統の地位につくこともよくあることです。最近、おしなべて、「正統」というべき立場の理論に元気がないようにも思われます。こういう時代に学ぶみなさんには、複眼的な思考で、異端として遠ざけられかねない様々な社会の見方も敢えて積極的に取り込み、次代のスタンダードとなるような新しい社会科学の潮流を創造してほしいと期待します。