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京都大学経済学部・大学院経済学研究科

【社会経済学(経済原論)の学び方】

学問は,核心に理論があり,周辺分野に理論を適用し広がっていきます.
「経済学は,時間経過の中で複雑に因果する多様な要素で構成されている経済を多角的・多面的に分析する学問である」ので,「多様な学派の経済理論」があります.
「経済理論」は,経済学の根本原理であり,経済原論とも言われます.「経済原論」は,社会経済学と近代経済学の2つで構成されています.
経済原論である「社会経済学」は,英語で「Political Economy」と表記され,この「Political」の経済学は,
経済社会として一国全体や世界の経済を巨視的に捉え分析する経済学であるという意味です.
「Political Economy」は,日本語で政治経済学と翻訳されることもありますが,政治学ではなく,もちろん経済学であり,
政治経済学は社会経済学に含まれ,社会経済学は政治経済学よりも広い下記の学派で構成される経済原論です.
日本で「政治経済学」は,とりわけ,マルクス派の流れの経済原論を指します.
「社会経済学」は,「古典派,マルクス派,ケインズ派,ポスト・ケインズ派などの学派」で構成されており,
「経済を人々の生きる経済社会と捉え,その経済社会を総体として物質的に有機体と捉えて科学的に分析する経済原論」であり,
古典派を出発点として,「マルクス派の流れ」と「ポスト・ケインズ派の流れ」の大きく2つに分けられます.
「京都大学経済学部の社会経済学(経済原論)」は,『貧乏物語』で著名な河上肇教授を祖とし,100年以上の長い歴史と伝統を持ち,
『貧乏物語』は1917年に公刊されて以来,東京大学の宇沢弘文教授などの温かい心のある経済学者の探究心の原点となってきました.
京都大学経済学部において,社会経済学入門,経済学史,社会経済学1,社会経済学2,を順に履修していくと,社会経済学を体系立てて学ぶことができます.
この順に社会経済学の理論を学んで,多様な学派の経済理論を幅広く偏りなく学び,視野を広げ,見識を深めつつ,
経済史,公共経済学,財政学,地域経済学,農業経済学,国際経済学,開発経済学などの多様な経済分野の学習や研究に広く応用していきましょう.
「マルクス派の経済理論」は,唯物史観,階級概念,所有概念,労働価値説,景気循環論などを重視しており,「社会経済学1」で学ぶことができます.
「ポスト・ケインズ派の経済理論」は,有効需要の原理,失業概念,経済成長と所得分配の関係,景気循環論などを重視しており,「社会経済学2」で学ぶことができます.
社会経済学がどのような経済原論であるかを知りたい学生は,社会経済学入門や社会経済学1で教科書として使用されている下記書籍を読んでみるとよいでしょう.
 鍋島直樹著『現代の政治経済学-マルクスとケインズの総合』ナカニシヤ出版
 宇仁宏幸,坂口明義,遠山弘徳,鍋島直樹著『入門社会経済学〔第2版〕-資本主義を理解する』ナカニシヤ出版
 八木紀一郎著『社会経済学―資本主義を知る』名古屋大学出版会
"Special Feature: Economic Dynamics—Growth, Capital, Labor, Technology, and Money," Evolutionary and Institutional Economics Review, Vo. 19, No. 1, 2022. において,経済学の考え方や,社会経済学(特に,古典派,ケインズ派,ポスト・ケインズ派)と近代経済学(新古典派)の視点を簡潔に解説しています.

京都大学 基本理念 (一部抜粋)
「教育
3.京都大学は、多様かつ調和のとれた教育体系のもと、対話を根幹として自学自習を促し、卓越した知の継承と創造的精神の涵養につとめる。
4.京都大学は、教養が豊かで人間性が高く責任を重んじ、地球社会の調和ある共存に寄与する、優れた研究者と高度の専門能力をもつ人材を育成する。」

様々な相異なる視点を持つ多様な学派が存在する「経済理論」の教育では,
「多様かつ調和のとれた教育体系」とは,「多様な学派の経済理論を幅広く満遍なく学べること」です.
多様な学派の経済理論は,経済に対する多様な視点を学ばせてくれ,視野を広げてくれます.
学派の相違とは視点の相違であるので,多様な学派は学術的に並存しています.
1つの学派で同一の角度や同一の面からのみ画一的に経済を分析していては,経済の一部分しか見えてきません.
多様性とは正反対のところに画一化があります.学派の画一化は,学派の多様性の喪失であり,視点の画一化です.
どのような学問においても,画一化は,学問の進歩を衰退させます.
ある学派の経済理論では分析できないことが,他の学派の経済理論で分析できることもあります.
1つの学派では不足する視点や見えない面の分析を,相異なる視点を持つ多様な学派の経済理論が相互補完します.
そして,学派の多様性は,研究者に自己の研究を客観視させ相対化させるので,
他者のみを批判する愚昧さを取り除き,自己を批判できる賢明さを与え,改善に導いたり,新たな気付きを与えたり,経済理論の研究を発展させます.
学派の多様性こそが,経済社会の本質の追究に,多角的・多面的視点を与え,科学的に経済理論の研究の発展を促進します.
視野を広げ,多様な学派の経済理論を幅広く満遍なく学び,さらに視野を広げ,学習や研究の良い循環を作り,経済理論の奥深さや面白さを味わいましょう.

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[経済学部科目]
 〇社会経済学入門(入門科目,選択必修):社会経済学における概念や考え方を学ぶ.
  1〜2回生対象科目.1回生のときに履修することが望ましい.

 〇経済学史(専門科目):多様な学派の経済理論を概観し,経済理論の歴史を学ぶ.
  2〜4回生対象科目.2回生のときに履修することが望ましい.

 〇社会経済学1(専門基礎科目→2024年度から専門科目へ移行される):マルクス派などの経済理論を学ぶ.
  2〜4回生対象科目.2回生のときに履修することが望ましい.

 〇社会経済学2(専門科目):ケインズ派やポスト・ケインズ派などの経済理論を学ぶ.
  2〜4回生対象科目.2回生もしくは3回生のときに履修することが望ましい.

 〇演習:専門書や学術論文などの輪読や議論を通じて深く学ぶ.
  3・4回生対象科目.ゼミ形式で主体的学習ができるので,履修することが望ましい.

 〇2回生演習:2023年度から廃止となった.

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社会経済学(経済原論) 非常勤講師の担当科目

【経済学部】

社会経済学1 (専門基礎科目,2024年度より専門科目)(経済学部・法学部)

 ○2024年度・後期,2023年度・後期,2022年度・後期
  担当:遠山弘徳 教授(追手門学院大学経済学部),教科書:宇仁宏幸,坂口明義,遠山弘徳,鍋島直樹『入門社会経済学(第2版)―資本主義を理解する』ナカニシヤ出版,2010年.

 ○2021年度・後期,2020年度・前期
  担当:八木紀一郎 名誉教授(京都大学),教科書:八木紀一郎『社会経済学―資本主義を知る』名古屋大学出版会,2006年.


【経済学研究科】

Political Economy (基礎科目,コア科目)(English)

 ○2024年度後期,2023年度・後期,2022年度・後期
  担当:板木雅彦 特任教授(立命館大学国際関係学部)

 ○2021年度・後期,2020年度・後期
  担当:八木紀一郎 名誉教授(京都大学),教科書:CORE-Econプロジェクト開発 CORE(世界中で使用されているフリーテキスト)

 
現代資本主義分析

 ○2024年度・前期
  担当:森岡真史 教授(立命館大学国際関係学部)

 ○2022年度・前期
  担当:松尾匡 教授(立命館大学経済学部)


経済理論形成史

 ○2023年度・前期
  担当:松尾匡 教授(立命館大学経済学部)


社会経済学の上記4科目は,専任教員が担当するべきところですが,担当教員であった宇仁宏幸教授が定年退職された後,
後任の専任教員を採用できていないため,非常勤講師の先生方に担当していただいています.
上記4科目を担当する専任教員が採用されるまでの間は,このページに授業情報を掲載する予定です.
学問の自由に基づき,経済学の教育と研究において科学性と倫理性が保たれるよう努力しています.

京都大学の教職員像(一部抜粋)
「教職員は、最善の努力を傾けて、教育・研究の双方において能う限りの高い水準を目指す。
学問の自由は、これを遂行するための最も基本的な要件であり、
社会規範や倫理に十分な配慮を払いつつ、教育・研究のすべての場において尊重される。」


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