東アジア工業化に関する歴史的研究

―中国と日本を中心に――

主催:科研費 東アジア資本主義史研究プロジェクト

共催:京都大学東アジア経済研究センター

京都大学人文科学研究所付属現代中国研究センター

後援:京都大学東アジア経済研究センター支援会

■日時 2017年3月6日(月)13:00~17:00

■会場 京都大学経済学部第三番教室(法経東館2階)

■参加費 無料

13:00-13:10 開会の挨拶 問題提起

13:10-13:50

久保 亨(信州大学教授)      東アジア工業化の捉え方 中国

堀 和生(京都大学教授)    東アジア工業化の捉え方 日本

13:50-14:10

木越義則(名古屋大学准教授) 中国の貿易

14:10-14:30

富澤芳亜(島根大学教授)    中国の繊維産業

14:30-15:00

加島 潤(横浜国立大学准教授)中国の鉄鋼業

峰 毅(社会人中国経済研究者 東京大学経済学博士)中国の化学工業

 

――――――――――――― 休憩―――――――――――――――――――――

 

15:15-16:00

朱蔭貴(復旦大学教授)     中国経済史からのコメント

丸川知雄(東京大学教授)   現代中国経済論からのコメント

厳善平(同志社大学教授)    中国農業論からのコメント

16:00-17:00

自由討論

 

17:10-18:40 懇親会

京都大学経済学部みずほホール(法経東館地下1階) 参加費2,000円(支援会会員は無料)

*準備の都合上、シンポと懇親会の参加については事前にご連絡ください。

連絡先 京都大学経済学部 堀和生 hori@econ.kyoto-u.ac.jp

 

20世紀100年間の世界経済の諸々の趨勢のなかで、最も大きな変化の一つは東アジアの経済的な台頭であろう。19世紀後半に世界経済は一つに統合されたとされているが、その時点の世界経済のなかで東アジア経済全体の規模、およびその工業部門の比重からみて、その比率は比較的小さなものに過ぎなかった。ところがその後の1世紀、とりわけその後半期において工業化が急進展した結果、現在東アジアは従来世界経済を主導してきた西欧、北米と並んで世界経済全体の、そして工業のコア地域の一つに変貌している。これらの巨大な変動は、日本、中国、韓国、台湾等、一つの国や地域だけで起こったのではなかったので、それらに対する探究は、当然に国民経済だけにとらわれない広い視野が必要である。このシンポジウムは、このような関心のもと、中国と日本を中心とした東アジア的なスケールで、20世紀におけるこの地域の経済発展、工業化の進展の特質を探究して、その世界史的な意義について考える試みである。具体的には、次のようなことを意図している。

第1は、近代中国における工業の分析を軸にして、通時的な発展過程を解明することである。中国経済史では研究の進展にともない、清代、民国期、計画経済期、改革開放期それぞれの分析は深まってきたにもかかわらず、各時代を通した歴史像の構築や発展の理解についてはいまだ十分な関心が払われていないように思われる。ここでは中国経済史の幾つかの分野を取り上げ、とりわけ民国期と計画経済期の関連に注意を払って検討し、改革開放後について展望したい。

第2は、このような中国の個性的な発展を、東アジア内で隣接している日本を中心とした地域の発展と比較してみることである。計画経済期に両地域の交流が極端に制限された時代があったとはいえ、その前後のほとんどの時代、両地域の社会経済の結びつきはきわめて強く相互に規定し合う関係にあった。さらにさかのぼれば、近代に至るまでの長い時代、この地域は多くの共通する歴史的条件を抱えていた。戦後のある時期に資本主義世界と社会主義世界という対比が強調されたために、これまで比較史的な認識が弱かったことをふまえ、本シンポジウムでは日本経済史の経済発展、工業化の過程を、意識的に中国の過程と比較して論じたい。

第3に、東アジアにおいて、急速に発展する工業部門と膨大な人口を擁する農業部門とが並存したことに注目し、両部門の関連性、規定関係に関心を払う。研究史的に見れば、世界経済と結んで近代化を主導し、また資料が残存しやすい工業や金融等の近代的部門の研究が先行している。しかし、近年研究が進んでくると、アジアの工業化は世界経済との結合関係のみならず、国内の非近代とされる伝統的農業部門のあり方に大きく規定されていたことが次第に明らかになってきた。このシンポジウムでは、東アジアの工業発展を、農業を含めた広い社会経済基盤のなかで捉え直してみることを提起したい。

本シンポジウムがめざすものは、精緻な研究成果の発表ではなく、東アジアの経済発展、工業化をいかに理解すべきなのかという試論の模索である。このような挑戦的な試みは、通常の学会では扱うことが難しいテーマである。関心をおもちの方は、このシンポジウムにぜひ積極的にご参加いただきたい。