ケンブリッジ便り

9月分

9月の研究活動のまとめ
@執筆:和文草稿3編、英文草稿2編、書評2編。
A読書:共和主義、オランダ史、アカデミック・ライティング関係、大学評価関係、バーク、ミル、ヒューム関連文献(930日)。

グランド・ツアー
きょうは、旧ゼミ生で現在、学部4年生のふたりがはるばる日本からやって来ます。努力の結果、それぞれ希望の進路が決まり、卒業論文の準備も兼ての、ちょっと早めのグランド・ツアー(訪英)です。これから2週間、英国の街、人、大学などを見て、考え、そして刺激を受けて、日本での生活に活かして欲しいと思います930日)。


合格発表
967日に行われた所属部局の大学院入試の合格発表がありました。大変嬉しいことに、旧ゼミ生の2名とも合格しました(厳密に言うと、一名は他ゼミ所属のオブザーバー)。
 これで、旧ゼミ生は、卒業するか分からない一名(苦笑)を除いて、全員の進路が決まりました。卒業まであと半年、3回生のときに頑張ったゼミ論に加筆・修正しながら卒論を完成させるなど、4月からの生活に向けての、学部生としては最後の種まきが残っています(926日)。



2005-6年度レクチャーリスト
ケンブリッジ大学では、「レクチャー・リスト」と呼ばれる全学共通の講義目録が作成・販売されます(http://www.admin.cam.ac.uk/reporter/ から「special numbers」→「Lecture-List」)。これをみれば、どんな表題で、誰が講義を行うのかが全てわかる便利な代物です。
 わたしが関係するいくつかの学部(古典、神学、哲学、法学、英語学、歴史学、社会・政治学、経済学、経営学など)を見ると、非常に興味深い講義が幾つか見つかりました。「こんな難しい課題を学部教育でどうやって教えるのだろうか」という教員としての興味と、「この表題の下で教えられる標準的なトピックはどんなものなのか」という研究者としての興味とがあります。自分自身の研究活動もあるので、興味を持った全ての講義に参加するわけにはいきませんが、いくつかの授業には参加したいと思います。また、いつも参加しているセミナーに加えて、ここ数年間で非常に増えている学際的セミナーのいくつかも覗いてみたいと思います。

 教員になった今、数年前に院生として聴いたときと違った印象を講義やセミナーから受けるのかどうか、いまから楽しみです。10月4日からスタートです923日)。

お見舞い
今日は、ウェイティング・リストに載って半年、ようやくひざの関節の手術を終えた旧友Regさんのお宅へ、妻とお見舞いに行きました。英国では、緊急性のない手術は、半年くらい待たされるのはふつうです。通常の骨折でも、1ヶ月くらいほっとかれます。骨が折れたまま引っ付いているのを引き離して手術するのも普通のようです。その背景には、いろいろと問題の指摘される国営医療体制(NHS)の元での、深刻な医師・看護士不足や施設の不足です。オランダなどヨーロッパ諸国へ入院・手術のため旅行する人たちも少なくありません。日本の医療制度も「3分治療」や「患者取り違え手術」など問題が多いですが、この国の状態も深刻です。
 Regさんとは、しばらく会わなかったので、彼の自慢のお庭のテーブルで、6時間くらい話し込んでしまいました。ひざはまだ痛むとのことでしたが、「これ以上悪くはならないさ」「Never Mind!」といつものように前向きに療養していました。非常に楽しい午後のひと時でした。また近々行く予定です(920日)。



訪日ミッション
英国の出版社から、私の研究分野の動向や日本の動向などについての面談を行いたいというメールをいただきました。10月に京都を訪問するそうなのですが、そのときわたしは在外研究中なので、今回は残念ですが見送りです。代わりに、何人かの日本人研究者を紹介しました。編集者の個人的伝手に頼るだけでなく、こういった「売れ筋を探る」地道な活動が、日本と同じように出版不況といわれるこの国の学術出版の堅調さを支えているのではないかと思います。訪日ミッションが実り多いものとなるのを願っています(916日)。



さんと会食(3)
またまたKKさんと会食です。今日は久しぶりに南部イタリア料理を楽しんだあとで、またまた議論でした。二人とも懲りずに、朝の4時までやってしまいました。いくつかの共同研究のプランらしきものも出来たので、帰国後の楽しみが増えました。そのためにも、共同研究の活動資金を調達するため、科研費を再び勝ち取らなければなりません。頑張って申請書の作成をします(9月8日)。



大学院受験
今日は所属部局の大学院入試ですので、事前に、受験する旧ゼミ生2名に、激励のメールを出しました。筆記試験を中心に合否を決定するので、当然合格するだろうと思っていた受験生が不合格となるなどの「番狂わせ」も時々起きます。
 英国では、大学院レベルの選考の素材は、コース・ワーク型の修士課程では、成績・調査書、ライティング・サンプル、推薦書を基本に、経済学の場合はこれまでの履修内容説明書や準備コースでの所定の成績での終了などが付加されます。もちろん英語を母語としない外国人の場合は、語学力証明や学費などを負担できる財政力証明も必要です。面接を求められる場合もあります。
 以上のように、英国の修士課程では筆記試験中心でないので、「番狂わせ」はなかなか起きませんが、多面的評価をするため、出願する方も審査する方も、多大の労力を払っています。
 ともあれわがゼミ生の健闘を期待したいと思います(967日)。



さんと会食(2)
ケンブリッジ滞在中のKさんとの会食の2回目です。前回のように遅くまで議論しないようにしようとお互い言っていたのですが、いざ始まると、結局朝の4時まで、夕食が始まったときから数えると9時間も議論をしていました。しかし、今後の研究などについての非常に有益かつ興味深い意見交換が出来て、お付き合いいただいたKさんに感謝です。日本では忙しくて、とことん研究の話をする機会はなかなかありませんので、これも在外研究が与えてくれた貴重な機会だと思います。派遣を認めてくださった所属部局のみなさんにも感謝です。
 さて、議論を元に、論文の草稿を早速書き始めたいと思います(94日)。



来年度の授業
いよいよ所属部局の来年度の授業科目についての調査が始まりました。今年度末に帰国する私ももちろん担当します。今のところ、学部は、2回生演習(通年)、3・4回生演習(通年)、社会思想史(後期)、ポケット・ゼミ(前期)、特別講義アカデミック・ライティング入門(前期)、大学院は、比較社会思想史A&B(前期、後期)です。
 今のところ考えているのは、2回生演習:マンデヴィル、3・4回生演習:スミス、ポケット・ゼミ:内田義彦+ナショナル・アイデンティティの問題、社会思想史:1718世紀ブリテンを中心とする議論、アカデミック・ライティング入門:履修者数を30名に限定したゼミ形式で論文作成に関する内容、大学院:共和主義の二つの類型(ギリシア型とローマ型)です。
 ケンブリッジでは、チュートリアルが中心なので、講義負担は、各ターム8回として3ターム分くらいが標準量です。一見、随分と少ないように見えますが、実際は、一回50分の授業は緊張感溢れるもので、世間話や途中の気分転換の話題などありません。学生も大変ですが、準備する方もかなりの負担です。
 10月から始まるケンブリッジの講義のいくつかを聴きながら、少しでも良いシラバス案を作成したいと思います(92日)。



科研費公募始まる
今年も科学研究費補助金(略称:科研費)の公募が始まりました。審査基準や事後評価など、さまざまな問題点も指摘されてはいますが、企業からの資金援助が見込める応用研究とはいい難い分野を研究しているものとしては、テーマの設定が自由にできる科研費は大変ありがたい制度です。
 こちらでは、英国学士院(http://www.britac.ac.uk/funding/index.html)、各種のリサーチ・カウンシル(http://www.rcuk.ac.uk/)、各種学協会などが同種の制度を充実させています。サバティカル期間中の研究補助費だけでなく代替要員(非常勤講師料など)の費用までもセットになっている補助金もあります。もちろん利点と共に問題点も指摘されているのは、こちらも同じのようです。
 個人的には、2004-05年度は、若手研究B(500万円以下)というカテゴリーでの研究プロジェクトが認められ、研究代表者として、17世紀イングランドの共和主義の研究を行っていましたが、05年度は、在外研究が認められたので、期間半ばで辞退しました。研究分担者として参加していた共同研究も同様です。
 今年からは、申請内容の一部を電子的に行うように変更されましたので、所属部局の事務職員の方のサポートを受けながら、申請作業を行いたいと思います。
 どんな研究内容にするか、楽しんで考えたいと思います(91日)。