経営史学会

経営史学会: 過去と未来

経営史学会は1964年11月に設立されました。設立当初(1965年9月)の会員数は257名であったが、現在は約800名にのぼります。経営史学会が設立された背景には、高度経済成長の進展とともに存在感を増した日本企業について、その経営史的特質を明らかにしたいという研究者の願いがありました。  設立に際しては脇村義太郎・中川敬一郎両教授の貢献が重要な役割を果たしました。脇村教授は戦前・戦時期から経営史研究を行い、日本における草分け的存在でした。一方で中川教授は、1960年代からアメリカで発達した経営史学の諸手法を導入するとともに、比較経営史の分野を切り開きました。経営史学会は、創立者の精力的な研究を引き継ぎ、以下の形で新しい研究を発表・公開しています。

(1) 会議、ワークショップ、ジャーナル

経営史学会は年1回の年次大会を開催するとともに、北海道・東北・関東・中部・関西・西日本に分かれた6つの部会・ワークショップにおいて、年に数回から10回近い研究会を開催しています。定期的なワークショップでの報告に加えて、新刊書に対する合評会、および海外のゲスト研究者のための特別なワークショップも毎年開催されています。 現在、経営史学会は機関誌である『経営史学』を年4回、英文機関誌であるJapan Research in Business History (JRBH)を年1回刊行しています。

(2) 富士コンファレンス、および出版物

経営史学会は、谷口工業奨励会四十五周年記念財団(谷口財団)の援助によって、1974年以降毎年富士コンファレンスを開催してきました。第1回富士コンファレンスでは、ハーバード大学のAlfred D. Chandler, Jr.教授とケンブリッジ大学のCharles Wilson教授を招き、活発に議論を交わしました。25年間にわたる富士コンファレンスの開催は日本における経営史学の国際化に大いに貢献しただけでなく、経営史学会の存在が世界の経営史家に広く知られる契機ともなりました。富士コンファレンスのプロシーディングスは東京大学出版会から20冊、オックスフォード大学出版会から5冊それぞれ刊行されました。1998年の谷口財団の解散によって、富士コンファレンスを毎年開催することは難しくなりましたが、その後も経営史学会は富士コンファレンスをInternational Conference on Business Historyと改称し、数年に1回の割合で開催しています。  経営史学会は1985年に『経営史学の二十年』(東京大学出版会)、2015年に『経営史学の50年』(日本経済評論社)を刊行し、それまでの歩みを振り返りました。1980年代までの経営史学会の活動は、高度成長を牽引してきた日本企業の特質、「日本的経営」の原理を国際比較の視点から明らかにすることが焦点の一つでした。また、90年代以降の長い経済的低迷は、経営史学会の活動にも大きな影響を与えました。研究対象は大企業のみならず、中小企業、産業集積、ファミリー・ビジネスなどに拡がり、国際比較の対象も欧米諸国だけでなく、アジア諸国に大きく拡がりました。近代日本150年の歩み、さらに江戸時代を含めると500年におよぶ日本企業の経験をグローバルな視点から研究する動きもまた、経営史家の大きな関心を集めています。

(3) 海外との交流

今後も経営史学会は、世界各国の経営史学会との交流を深めつつ、自国史の経験をつねにグローバルな視点から研究し、その成果を各国の経営史研究者と共有する努力を続けていきます。また、経営史学会は、多くの会員がアジア、ヨーロッパ、アメリカなどの海外企業を研究しています。日本における外国経営史研究は、日本の対外認識を豊かにするだけでなく、その成果を海外に発信することも経営史学会の大きな責務と考えています。経営史学会は、先のInternational Conference on Business Historyに加え、日英・日仏・日独・日韓・日タイなどの二国間経営史国際会議を開催してきました。さらに、2016年にベルゲン(ノルウェー)で開催されたFirst World Congress on Business Historyには多数の会員が参加し、さらに2020年9月にはSecond World Congress on Business Historyが南山大学で開催されることが決定しています。経営史学会は、経営史を通じて世界各地の社会との交流を促進し、国際的な視点から経営史の研究を進めていきます。

 

 

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