1. HOME
  2.  > コラム連載 地域振興と再エネ-コペンハーゲン市・ロラン市協定の意味-

コラム連載 地域振興と再エネ-コペンハーゲン市・ロラン市協定の意味-

地域振興と再エネ-コペンハーゲン市・ロラン市協定の意味-

2017年4月20日 山家公雄 京都大学大学院経済学研究科特任教授

【首都圏一極集中と地方消滅】
 日本は、現状東京一極集中の状況にある。一方で、少子高齢化、若者の都市への流出、国内製造業の海外移転等で、地方の人口減少は著しい。「地方消滅」の危機に直面している市町村も少なくない。創生、創造等名称を変えながら地方振興が最重要課題となり久しい。しかし、豊かな資源をもつ自治体は多い。水、食料、エネルギ-、景観等の多くの自然・資源を抱えている。一方、首都圏が代表であるが、知識、情報、技術等を生産する一方で、前述の資源をほぼ全面的に地方に依存している。

【資源制約と自己責任】
 世界規模で水、食料、エネルギ-面での資源制約を意識せざるを得ない中で、こうした都市と地方のいびつともいえる関係は、持続可能であろうか。昨年発効したパリ協定には、人為的な温室効果ガス排出を2050年までにほぼゼロとすることが盛り込まれたが、CO2排出量の多くを占める発電は、再生可能エネルギ-に頼らざるをえなくなる。一方、温暖化防止の責任は、国のみならず、自治体、企業、個々人が自らの問題として取り組む時代になっている。エネルギ-調達100%再エネを謳うRE100は、グローバル企業が環境をアピールする手段ともなっている。地域も個別に目標を掲げて環境都市を競う。

【2050年1次エネルギ-再エネ100%を目指すデンマーク】
 デンマークは、再エネ推進国で有名である。2014年の数字であるが、使用電力に占める再エネの割合は約6割で、うち風力が4割、バイオマスが16%、太陽光が2%である。再エネの熱利用も盛んである。同国は、地域熱供給を積極的に進めてきた。熱需要に占める地域熱供給の割合は、全土で約5割、家庭用需要の約6割、コペンハーゲン市域では98%を占める。そのうち電気も合わせて供給するコジェネ(CHP)が8割、熱供給のみが2割となっている。1次エネルギ-に占める再エネは約3割であるが、うち7割はバイオマスである。風力が目立つがバイオマス大国でもある。

 デンマークは、2012年のエネルギ-政策で、2020年までに使用電力に占める風力の割合を50%、2050年までに1次エネルギ-で再エネ100%とすることを決めた。議会で9割以上の賛成票が入った。当然、熱や自動車(燃料)の再エネ化を含むわけだが、これらは、一般に電力の再エネ化に比べて困難を伴うとされる。EUのパリ協定上の目標は、2030年までに再エネ27%であるが、電力は50%である。いかのこの目標が野心的であるかが理解できる。

 同国は、2016年で風力の割合は46%に達した。大規模洋上風力の計画も進んでおり、風力5割達成は完全に視野に入った。コジェネ、熱供給の積極的な推進を背景にバイオマスも普及している。

【環境都市コペンハーゲン市と再エネアイランドロラン市の協定】
 再エネを利用した地域振興も盛んであり、ロラン島のように、風力を主に自給率600%を誇る地域もある。ロラン島は、デンマーク南方に位置する人口約6.5万人の島で、コペンハーゲンから南西150km、ドイツまで18kmのところにある同国で4番目に大きい島である。

 一方、首都でCOP15開催地でもあるコペンハーゲン市は、2025年までにCO2ニュートラルとなることを宣言しており、世界NO1の環境都市ともいわれる。しかし、大消費都市のご多聞に漏れず、食料、水、エネルギ-を他地域からの供給に依存している。再エネの供給を地方より受けなければならない。CO2削減が現実の課題となる中で、この単純な構図に気が付いた。

 ロラン市には、既にコペンハーゲン市の3MW風車が8基設置されている。コペンハーゲン市は、ロラン市にさらに9~18基の大型風車設置を要望していた。さすがに再エネに理解の深いロラン市民も、無条件で認めることには抵抗が強かった。3MW風車は高さが150mにもなり、かなりの威圧感がある(資料参照)。

資料 ロラン島に立つコペンハーゲン市の3MW風車
xxxxxxxxxxxxxxxxxx
(撮影)筆者(2017年3月28日)

 そこで、地域間協力に関する包括的な協定が2017年1月に締結された。立場は対等であり、調印場所はロラン島で行われた。コペンハーゲンは、再エネやスマートグリッド等の技術開発、教育、観光等5項目の協力を内容とする協定を締結した。詳細はこれから検討されていくが、CO2削減だけでなく、資源の有効活用がクローズアップされる中で、資源を有する地域の位置づけが高まる時代になってきている。世界初とも言われるデンマークの事例は、今後の世界の行く末を示唆しており、東京一極集中、地方消滅が問題視される日本にとっても非常に参考になる。

このページの先頭に戻る