京都大学

再エネ大量導入を前提とした分散型電力システムの設計と
地域的な経済波及効果に関する研究プロジェクト

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トヨタ財団国際助成プログラムイベント情報

研究代表からのご挨拶

プロジェクト全体の研究概要

【部門A】再エネ大量導入を前提とした電力系統の設計、運用、投資に関する研究

【部門B】再エネの地域経済波及効果の定量評価、事業主体、地域ガバナンスに関する研究

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トヨタ財団国際助成プログラム

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サントリー文化財団研究助成

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トヨタ財団国際助成プログラム イベント情報

International Workshop on “Community Renewable Energy”
国際ワークショップ
国際ワークショップ
2016年10月24日-25日
於:チェンマイ市およびその近郊

 タイ・チェンマイ市およびその近郊において、国際ワークショップおよびサイトビジットが開催されました。このワークショップには、再生可能エネルギー事業に取り組むタイの10のコミュニティだけでなく、6月に実施されたベトナム・ハノイワークショップで構築されたネットワークからも参加があり、日本・タイ・ベトナムの間で、コミュニティによる再生可能エネルギーについて、活発な議論を交わしました。

 初日は、チェンマイ近郊のBan-Tan Waste to Energy Projectをサイトビジットしました。この埋立処理プラントには、チェンマイ市とその近郊から毎日約600-800トンの廃棄物が持ち込まれ、埋立地から採取されるガスによって発電をおこなっています。発電容量は2MWです。

 また、余剰のガスは、近隣の村に供給されています。そのためのパイプラインは、村民、地方政府、埋立地サイトのオーナー、エネルギー省の共同出資によって敷設され、処理されたガスは家庭の調理用ガスや揚水に利用されています。

 二日目のワークショップでは、日本・ベトナム・タイにおける、コミュニティレベルでの再生可能エネルギーのケーススタディーについて、日本からは中山(京都大学)、ベトナムからは、Ms. Nguy Thi Khan(Green ID, Vietnam) タイからはProf. Chatchawan Chaichana(チェンマイ大学)より報告されました。

 また、タイの再エネ実践コミュニティ(1. Ban tan village (Biogas network)、2. Suk-Kaew Kaewdang Foundation(Biogas and wind)、3. Green net COOP (Biomass)、4. Ke-re-wong village (Hydro)、5.Ban Mae-yang-noi village (Biogas network)、6. Pha-pung foundation (Solar dryer)、7. Chum-sang village (Solar hot water)、8. Bang-sa-pan village (Biogas)、9. Aob-tom village (Solar dryer)、10. Tao-pun village (Biogas network))からも実践的な報告があり、その経験について意見交換が行われました。

 最終のディスカッションでは、とくにベトナムサイドから、タイの実践例に学ぼうとする意見が多く聞かれ、研究としてだけではなく、実践面にとっても有意義な時間となりました。

 トヨタ財団国際助成による活動は、本ワークショップをもって終了となります。本企画の取りまとめとして、まさに再生可能エネルギーを活用したコミュニティの取り組みについて、東南アジア新興国と日本に共通する課題を明らかにし、学びあいから共感するという当初目標を、このワークショップで達成できたことを心から嬉しく思います。

 今後、とりわけ東南アジアにおける我々の活動は、JASTIP-Net(http://jastip.org)環境・エネルギー分野の共同研究パートナーとして、より発展させていくことになります。

(中山 琢夫)

International Workshop on 「Community Renewable Energy」
October 24-25, 2016 at Chiang Mai and its suburb

 We held international workshop and site visit at Chiang Mai, Thailand and its suburb. In this workshop, not only Thai 10 communities that are practicing Community Renewable Energy (CRE) but also Vietnamese network member that are constructed on our Hanoi workshop in June. We Japanese, Thai, Vietnamese member discussed lively.

 On first day, we visited the site of Ban-Tan Waste to Energy Project and villages that are provided surplus gas. Ban-Tan power plant uses landfill gas from its own sanitary landfill site to generate electricity. The install capacity of the power plant is 2 MW. There are approximately 600-800 ton of waste transported to the site every day.

 Surplus landfill gas from the landfill site is piped to nearby villages. The villagers, local government, the landfill site owner, and the Ministry of Energy co-invested in piping system. Treated landfill gas is currently used for household cooking and water pumping.

 On second day, we held workshop about Community Renewable Energy in Japan, Vietnam and Thailand. Assistant Professor Takuo Nakayama (Kyoto University) from Japan, Ms. Nguy Thi Khan(Green ID, Vietnam) from Vietnam and Assistant Professor Chatchawan Chaichana(Chiang Mai University) firm Thailand reported case studies of CREs.

 Furthermore, 10 Thai CREs practitioners (1. Ban tan village (Biogas network), 2. Suk-Kaew Kaewdang Foundation (Biogas and wind), 3. Green net COOP (Biomass), 4. Ke-re-wong village (Hydro), 5.Ban Mae-yang-noi village (Biogas network), 6. Pha-pung foundation (Solar dryer), 7. Chum-sang village (Solar hot water), 8. Bang-sa-pan village (Biogas), 9. Aob-tom village (Solar dryer), 10. Tao-pun village (Biogas network)) made practical presentations, then we discussed about their experiences.

 On final discussion in this workshop, especially from Vietnamese side, we heard opinions that they are trying to learn from Thai cases. This workshop was meaningful not only CRE research but also practical aspect.

 We have just wrapped up the activity by 2015 Toyota Foundation International Grant support by this workshop and site visit. This is my great pleasure that we could achieve initial target that is to sympathy from learning between South East Asian emerging countries and Japan through the Community Renewable Energy in this workshop.

 Our activities especially in South East Asian countries are going to develop as a partner of Energy and Environment Project, JASTIP-Net (http://jastip.org/en/top/).

(Takuo Nakayama, Ph.D.)

国際ワークショップ

国際ワークショップ

国際ワークショップ

国際ワークショップ

International Workshop on “Community Renewable Energy”

International Workshop on “Community Renewable Energy”

Chiang Mai WS Program

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シンポジウム「高齢化時代のエネルギー自治〜再生可能エネルギーを活用したコミュニティの自立をめざして〜」
シンポジウム
シンポジウム
2016年10月1日(土)14:00〜18:00
於:京都大学百周年時計台記念館国際交流ホールV

 トヨタ財団2015年度国際助成(フォーラム助成)主催のシンポジウム「高齢化時代のエネルギー自治」が2016年10月1日に京都大学で開催され、各部門の先生から今年一年における研究を報告致しました。

まず、中山先生(京都大学)から本プロジェクトの概要に関する説明の後、「エネルギー自治とは何か?その高齢化社会への貢献」について報告されました。長野県飯田市の事例をはじめ、エネルギー自治の取り組みは既に各地で様々な取り組みが行われており、民間主導の岡山県真庭市や、自治体主導の北海道下川町や岡山県西粟倉村など多種多様です。再生可能エネルギーの取り組みをきっかけに過疎化が進む地域の高齢化問題を緩和する取り組みや効果が期待できることを事例を挙げて報告されました。

次に、石原先生(京都大学)から「Community Renewable Energy (CRE) をどう評価するか?〜東南アジアを中心に〜」について報告頂きました。CREの定義や文献調査、そしてタイの事例を引用してCREの評価概要についてまとめました。組織力、経済援助、資源と需要の3点をCREの抽出された課題として挙げて頂きました。

3番目に、ラウパッハ先生(立命館大学)から「日本における地域付加価値創造分析の社会実装」について報告頂きました。分散型エネルギーシステムへの転換が地域にもたらす経済効果の測定方法の一つであるドイツの地域経済付加価値分析の概要と、日本版の地域経済付加価値モデルについて説明頂きました。また、そのモデルを活用して、長野県飯田市の事例を活用して数値化しました。最後に、ドイツにおけるアンケート調査から、付加価値分析による見える化のメリットについて2点挙げて頂きました。

4番目に、ヤルナゾフ先生(京都大学)・竹内さん(京都大学)・羽尾さん(京都大学)から「ベトネムにおけるCREの現状と課題」について報告頂きました。ヤルナゾフ先生からは、ベトナムにおけるCREの現状と課題を挙げられました。竹内さんからは、ベトナムにおけるCREの発展プロセスについて挙げ、世帯ベースの再エネ(HRE)からコミュニティベースの再エネ(CRE)ヘの動きについて報告頂いた。羽尾さんからは、ベトナムにおけるCREの事例を用いてベトナムの現状と課題を挙げられた。

5番目に、李先生(名城大学)から「日韓の再生可能エネルギー普及における課題と協力」について報告頂きました。両国の再生可能エネルギー政策について、RPSからFITに転換した日本と、FITに類似した政策からRPSに転換したかんこくの比較と分析について挙げられました。

最後に、ゲストスピーカーとして、鈴木亭氏(北海道再生可能エネルギー振興機構理事長)から「市民風車の最近の動向」について報告頂きました。これまで鈴木氏が取り組んできた市民風車の事例をもとに、現在直面している課題と解決策を挙げられました。

これらの報告の後は、参加者によるパネルディスカッションが行われました。国家レベルでの再生可能エネルギー政策やCREの事例分析など、ワークショップ中に報告されたテーマについて、活発に論戦が繰り広げられました。

シンポジウム

シンポジウム

シンポジウム

シンポジウム

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Jeju Symposium for Promoting Renewable Energy in Japan and Korea: The Role of Central and Local Government, Related Companies and Citizens
シンポジウム
シンポジウム
2016年8月23日-25日
於:済州平和研究所外

 韓国・済州島において、再生可能エネルギーの促進に関する日韓共同WS/シンポジウムが開催されました。今回のWS/シンポジウムでは、中央政府、地方政府の再生可能エネルギー政策に詳しい研究者、市民活動家や企業で活躍している日韓の専門家が一同に集まり、ステークホルダー間でのエネルギー政策の成果と課題を比較考察し、地域の再生可能エネルギーの普及促進策を中心に議論しました。

 初日は、パリ協定以後の日韓の気候変動政策とエネルギー計画について(李秀K先生・趙容成先生)、中央政府再生可能エネルギー政策と課題について(中山?夫先生・李昌勲先生)、再生可能エネルギー普及における自治体および企業の役割・事例について(岩間芳仁氏・韓仁澤氏・鄭ヒジョン氏)、再生可能エネルギー普及における市民・自治体の役割・事例について(豊田陽介氏・ハジウォン氏)、多方面から活発に議論しました。

 2日目は、まず済州道庁を訪問し、スマートグリッド・蓄電池・EV等を組み合わせた2030年カーボンフリーアイランド構想、済州グリーンビッグバン構想についてお話を伺いました。カーボンフリーアイランド構想では、全て再エネによる電力でEV化を目指しています。この戦略は、気候変動だけでなく、新しい産業の創出に貢献することで、島の経済活性化を狙っています。また、カーボンフリーアイランドの実現に向けた、風力発電団地施設・スマートグリッドの実証事業施設を訪問し、実際の取り組みについて詳しくお話を伺いました。

 3日目は、「再生可能エネルギーと地域再生:日韓の国民意識の比較を題材として」、というタイトルで、白井信雄先生からキーノートアドレスをいただきました。さらに、済州道のカーボンフリーアイランドの取り組みを踏まえながら、日韓の再生可能エネルギー普及における課題と協力について、ラウンドテーブルを囲みました。

 今回のWS/シンポジウムを通じて、再生可能エネルギーの環境価値のほかに、地域経済価値にも注目しながら、小規模地域密着型再生可能エネルギーがビジネスモデルとして定着する方法について、深い議論を交わしました。

※当日のWS/シンポジウムの模様は、済州平和研究所のHPで公開されています。

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日本PJ北海道調査報告
日本PJ北海道調査
日本PJ北海道調査
2016年8月3日(水)〜5日(金)

今回は北海道における再生可能エネルギーに関する調査を行いました。
1.北海道大学 山形先生
2.北海道グリーンファンド 小林さん
3.北海道大学 荒木先生
4.北海道下川町

◇8月3日(水)
 8月3日10時より北海道大学大学院工学研究院環境創生工学部門の山形定先生より、3つのテーマについてお話を頂きました。
 一つは北海道の森林・原材料の供給可能性です。現状全体で約60万立方メートルの利用量(未利用材のみで現状約9.6万立方メートル)に対して、来年以降の木質バイオマス発電の本格稼働のタイミングでは発電のみで約72万立方メートルを超える供給が必要となり供給量の増加が見込まれています。
 二つは道内における木質バイオマス利用の現状です。熱利用を中心として、薪・チップ・ペレットそれぞれについて紹介を頂きました。
 三つは大型木質バイオマス発電の問題点と今後をテーマにお話しを頂きました。FITを中心として計画されている発電所について概観を致しました。地域資源が枯渇しないか、地域住民にメリットがあるか、賢く使っているか、といった切り口でお話を頂きました。
 今後の北海道を中心とした木質バイオマス利用における現状と課題、また見通しについて大きな示唆を頂きました。
 
 3日13:30〜 特定非営利活動法人 北海道グリーンファンドの小林ユミさんから石狩の厚田市民風力発電のご案内を頂きました。2014年12月に運転開始した本発電所は市民ファンドからの市民出資を頂きながら、建設された発電所で、売電収入の一部はまちづくり環境基金へ寄付還元され厚田市の様々な地域づくりに活用されます。
 市民参加の方法論、また風力発電を通じた地域の活性化の側面を見ることができました。

 3日16:00〜は 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター耕地圏 生物生産研究農場 荒木肇教授から北海道大学の農学部内に設置されているバイオガスプラントを案内頂きました。乳牛から出る糞尿をガス化し熱源として活用するシステムは、まさに循環利用といえるものでした。
 またエネルギー作物(ススキ系)なども見学させて頂き、農業×エネルギーに大変なご示唆を頂きました。


◇8月4日(木)
 4日朝からは北海道下川町に向かい、下川町の取り組みについて説明頂きました。

 4日10:50〜 下川町森林総合産業推進課の宮丸課長、高橋主幹、山本リーダーから下川町役場応接室で下川町の取り組みについて紹介頂きました。循環型森林経営を目指す下川町は、3000haの森林を60年サイクルで伐採・植林・育成を繰り返す仕組み、しもかわ産材の普及と利用拡大、森林の恵みを有効活用する木材のカスケード利用、バイオマスエネルギー利用、一の橋地区バイオビレッジなど地域課題の解決のために総合的に取り組んでいる。また、それらの取り組みの効果を確認するために経済効果や統計で数値化しているのは印象深かった。今後取り組む森林バイオマス熱電併給事業では、下川町中心街でさらに木質バイオマスボイラーを増設して供給先を増やす高効率なシステム構築を目指している。今回のお話で最も興味深かったのは、下川町を中心に森林の伐採から木材を使い切るまでに一貫して総合的な取り組みをしていることであった。その際に、下川町を単独ではなく、森林組合やIターンによる移住者と協力している町の姿勢と体制づくりが組織化されていることが、下川町の取り組みの成功の秘訣だと感じた。

 4日13:00〜 昼ご飯に下川産の小麦を使ったうどんを食べた後は、下川町森林組合の北町木炭工場で木材の活用についてお話頂きました。製材では、町内の民間企業と競合しないために、全国でも20社ほどしか取り扱っていない丸型の製材だけに特化している。また、製炭では海外製の炭に対抗できないため、粒にして床下に敷く建築用資材として売り出している。さらに製炭時にできる木酢液を活用して、町内で調達した角材を木酢液に浸して、天然の防腐加工を施した角材をホームセンターに出荷している。森林組合は、町内業者と競合せずに、高付加価値化による収益化の両立を常に意識していることが独特な取り組みを生み出していると感じた。

 4日13:30〜 続いて、同じ敷地内にあるトドマツの枝葉から化粧品を生産する株式会社フプの森のお話を頂きました。長期的な循環型森林経営のために安定した森林伐採を行っている際に捨てられるトドマツの枝葉を集め、蒸して蒸溜した水からエッセンスオイルや化粧品を抽出する。フプの森では、原料の調達から販売企画まで一貫した経営をおこなっている。容器のシールなどの内職のために町内で雇用するなど地域に貢献する企業としても各方面から注目されている。

 4日14:10〜 下川町の町材を集める木質原料製造施設の説明を頂きました。ここでは、下川町材のチップ用の木材を一旦ここに集め、1年間天然乾燥させた木材から年間3000tのチップを製造している。続いて、下川町役場周辺地域熱供給施設の説明を頂きました。3日分蓄えることができるチップのストックからドイツ製の木質バイオマスボイラーに供給され、約80℃の温水が役所周辺の公共施設に供給されている。

 4日15:20〜 下川町がバイオマスエネルギーを利用したまちづくりを具現化した一の橋バイオビレッジで説明を頂きました。バイオビレッジには、バイオマスボイラーを中心に住宅(22戸)、副詞節、コミュニティセンターやハウスなどに熱が供給されている。下川町は冬になるとマイナス30℃になる地域で、離れた地区に住む高齢者の家までの除雪が問題であった。一の橋地区のように集住化することによって、除雪の効率化、高齢者のコミュニティ作り、エネルギーの効率化など高齢者の生活水準の向上を同時に実現した。さらに、熱供給を利用したしいたけ栽培、コンテナ苗栽培、生薬栽培などを周辺で稼働している。そこでは生産だけでなく、研究と販売も同時に担っており、小規模ながらも職住一体のまちづくりを実現している。高齢者に関する地域課題も同時に解決する一の橋地区は、小規模自治体におけるシニアの新しい生活の形の可能性を感じた。

日本PJ北海道調査

日本PJ北海道調査

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トヨタ財団2015年度国際助成(フォーラム助成)ベトナム部門主催ワークショップ
ワークショップの模様
ワークショップの模様
2016年6月25-26日
於:ハノイ フォーチュナホテル ラグーナルーム

 トヨタ財団2015年度国際助成(フォーラム助成)ベトナム部門主催ワークショップが2016年6月25・26日にハノイで開催され、ベトナムチームのメンバーとベトナム国家大学(VNU)の研究者やコミュニティのエネルギーに関係するNGOメンバーなどが参加しました。本ワークショップでは、CRE(Community Renewable Energy)のコンセプトと評価軸を出発点に、日本・ベトナム・タイでの事例が紹介され、活発な意見交換が行われました。

 初日には、まず、中山先生(京都大学)より本プロジェクトの概要について説明があり、引き続き、日本における再生可能エネルギーの概況が報告されました。Local Energy Governance(エネルギー自治)という概念に着目し、具体的に長野県飯田市でおひさま進歩株式会社が行った取り組みをモデルとして取り上げ、その構造の分析がなされました。

 次に、Luu Duc Hai先生(VNU - University of Science)がベトナムのエネルギー事情と環境問題について、特に電力価格の面から論を展開しました。補助金などによって維持されている低電力価格は、外国直接投資の惹き付けや地方電化、貧困削減などに貢献している一方で、再生可能エネルギーの導入には否定的な影響を与えていることが主張されました。

 石原先生(京都大学)からは、CREの現状の報告がなされ、プロジェクトが基軸として取り上げる評価軸が提示されました。その評価基準は、CREの事例を創始者(Initiator)、所有者(Owner)、運営者(Management)、 裨益者(Benefit)という4つの項目に関して、コミュニティがいかに関与をしているのかを数値化して評価するというものでした。

 この石原先生の提示された枠組みに沿って、羽尾・竹内さん(京都大学院生)がベトナムで行った調査事例に関する報告を行いました。まず、羽尾がベトナムの再生可能エネルギーの現状を俯瞰し、ベトナムではCREは稀であり、企業主体の再生可能エネルギー(Enterprise-based Renewable Energy, ERE)と、家計レベルで導入が行なわれている再生可能エネルギー(Household-based Renewable Energy, HRE)の2種類に大別できると報告しました。羽尾は、EREに関して、小規模水力発電・バイオマス発電の2つの調査事例を分析しました。

 竹内さんは、HREに関して、バイオガス設備と超小規模水力発電設備の調査事例を報告しました。合計100以上の質問票の結果から、ベトナムにおいては、HRE導入への近隣家庭間での口コミ効果が大きいことや、既存の家計の状況が大きく影響することを示しました。その上で、ベトナムにおいて、「コミュニティ」が何を意味するのかを再考することが大事だと、問題提起をしました。

 2日目に行われた石原先生の2回目の報告はタイの調査事例に関するものでした。100以上のCREの中から典型的な4つの事例(バイオガス2件、小規模水力1件、バイオマス1件)を成功事例・失敗事例に分けて分析しました。その上で、コミュニティの関与度合いや技術レベルがCREの成功に寄与しているとし、一方で、経済的な条件はCRE成功の十分条件ではないとしていました。

 Nguyen Thi Hoang Lien先生(VNU - University of Science)は、ベトナムの小規模水力発電所の事例を取り上げ、その計画・建設・運営の3つの段階での住民への影響の分析について報告をしました。特に、計画段階でのコミュニティとの情報共有や住民への影響分析が重要である点を指摘し、また、小規模水力発電所の建設が与える負の影響について十分な補償がなされるべきだと結びました。

 Dang Thanh Tu先生(Vietnam Academy of Science and Technology)は、家計レベルでのバイオガスに関する調査結果を報告しました。Tu先生の報告では、村レベルでの行政スタッフがバイオガスの家計での導入の際に持つ重要性について指摘があったほか、バイオガスが引き起こした事故などの紹介から、危険性への指摘もなされました。

 両日とも、これらの報告の後、参加者全員での議論の時間が設けられました。国家レベルでの再生可能エネルギー政策やCREの事例分析など、ワークショップ中に報告されたテーマについて、活発に論戦が繰り広げられました。これらの議論、及び今後の更なる調査分析を経て、秋に行われる最終シンポジウムまでに成果をまとめていくことが期待されます。

Local Energy Governance about Japanese Case: RE in Japan at Community Level

01_Nakayama

Vietnam Low Electricity Price and Environmental Impacts

02_LUU_DUC_HAI

Case studies of Community Renewable Energy (CRE) in Vietnam
-How to develop CRE in Viet Nam(1)-

04_Hao

Community based Renewable energies in VN
-How to develop CRE in Viet Nam(2)-

05_Takeuchi

The livelihood of local people after building a micro-hydropower plant in Vietnam

07_NGUYEN_TUAN_ANH

Application of household scale biogas system in rural-mountainous areas of Vietnam

08_DangThanhTu

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トヨタ財団2015年度国際助成(フォーラム助成)のキックオフ・ミーティング
キックオフ・ミーティングの模様
2015年11月30日
於:京都大学

 トヨタ財団2015年度国際助成(フォーラム助成)、【高齢化時代の「エネルギー自治」〜再生可能エネルギーを活用したコミュニティの自立をめざして〜】のキックオフ・ミーティングが、京都大学において開催されました。

 本企画メンバーの顔合わせと自己紹介、本企画全体の方向性と目標の確認、スケジュールの確認を行った後、石原慶一先生(京都大学)から、「CREの社会経済評価手法の提案」をいただきました。また、吉田文和先生(愛知学院大学、北海道大学名誉教授)からは、「再生可能エネルギーによる地域活性化・北海道の経験から」というタイトルでご報告いだきました。

 CREとは、Community Renewable Energyのことです。オーストリア、スウェーデン、北米、イギリス、そして日本におけるガイドラインをもとに、東南アジアにおけるCREの意味をアジアの現状を踏まえながら、4つのD(Decarbonizing, Decentralizing, Democratizing, Demonstration)の視点から意義づけます。これに対応するように、データの解析は、Initiator, Ownership, Management, Benefit, Challengesを軸にして行われます。

 北海道では、「人口減少と高齢化」、「一次産業の衰退・TPPの圧力」、「自然資源収奪型・環境破壊型」、「エネルギーと資本の輸入型の限界」が問題となっています。その解決策の一環として、再生可能エネルギーは、生活と産業のための手段として、@地域活性のために、A「地産地消」、B化石燃料支払いを減らし、雇用を創出するものとして期待されています。また、C木材加工・林業と結びつけた林業のバイオマス利用、D農業のPV利用で環境保全型農業、E酪農のバイオマス利用、あるいはF多様な風力発電を通して、地元に収益をもたらされることが期待されます。

 その後、グループワークをとおして、各国部門ごとのディスカッションと総合討論が行われました。



Kick-off Meeting of Toyota Foundation 2015 International Grant (Forum Grant)
Nov. 30 2015, Kyoto University

We have just kicked-off the international project named "Local Energy Governance" in an Aging Society: Toward Sustainable Community Using Renewable Energy, supported by Toyota Foundation International Grant (Forum Grant).
We meet and introduce themselves each other, then confirm overall direction and schedule. Professor Ishihara of Kyoto University supposed "Socio-economic Evaluation Method of CRE". Professor Yoshida of Aichi Gakuin University (Professor Emeritus of Hokkaido University) gave a presentation about "Experience of Renewable Energy and Regional Activation from Hokkaido".
CRE is "Community Renewable Energy". Based on guidelines in Austria, Sweden, North America, UK and Japan, CRE is defined from 4Ds: Decarbonizing, Decentralizing, Democratizing and Demonstrating. Considering to Asian situation, CREs are analyzed by 5 axis, Initiator, Ownership, Management, Benefit, Challenges.
Hokkaido area in Japan faces some problems as below. First, population decreasing and aging. Second, declining of Agriculture and Fishery Industry, pressure of TPP. Third, Limits of natural resources exploitation/ environmental disruption/ import of capital from main land. To solve these regional problems, Renewable Energies (REs) is expected to play these roles. First, Energy for as means for human life and industry. Second, REs as means for regional activation. Third, Regional production and consumption /employment. Fourth, Biomass usage by forest industry, wood processing. Fifth, PV usage by agriculture for save energy. Sixth, Biomass usage by Dairy industry, problems of scale expansion. Seventh, Many types of wind farm: city wind, citizens wind, mega wind farm.
After these keynotes, each country group made animated discussions.

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トヨタ財団 2014年度国際助成プログラムの公開シンポジウム
シンポジウムの模様
シンポジウムの模様
2015年9月27日(日)、
於:京都大学芝蘭会館別館(国際交流会館)

 トヨタ財団 2014年度国際助成プログラムの公開シンポジウム「再生可能エネルギーによる地域再生に向けた地域の価値創出、ビジネスモデル、そのアジアへの移転可能性」が、2015年9月27日(日)に京都大学にて開催されました。

 環境エネルギー政策研究所の山下紀明先生からは、「再生可能エネルギービジネスモデルプロジェクト」のレビュー報告が行われました。太陽光・風力・木質バイオマス・小水力・温泉熱の各分野について、これまでの先行事例の分析と事業リスクの整理などから、ビジネスモデルを構築する研究となっています。構築されたビジネスモデルをもとに、再生可能エネルギー事業の普及に資するような政策提言や情報提供などを行っていく予定です。今回の報告では、デンマークにおいて実施されている20%オファーモデルの制度化などが提案されました。

 立命館大学経営学部のラウパッハ・スミヤ・ヨーク先生からは、「再生可能エネルギーの地域経済効果:定量評価モジュール」というテーマでご報告いただきました。再生可能エネルギーの普及拡大がもたらす経済波及効果を定量的かつ定性的に試算・評価・予測するためのモデル分析で、産業バリュー・チェーンの各段階において、従業員の可処分所得と事業者の税引き後収益と地方税収を足し合わせたもので地域経済付加価値を測ります。今後の研究課題、目標としては、産業連関分析との統合や応用ソフトの開発、そして自治体・地域の政策策定などへ活用されることなどが挙げられていました。

 京都大学大学院経済学研究科の浦上亜希子さんからは東南アジア(タイ)プロジェクトの成果報告が行われました。タイの電力政策の変遷について、丁寧な整理が行われました。特に再生可能エネルギーの普及政策としてAdderという電力料金上乗せ型の助成制度からFITへの移行について緻密なサーベイ報告をいただきました。その上で、FITで期待されたほどの再生可能エネルギーの導入が進んでいないことの要因として、他の産業開発や環境政策と上手に結び付けられなかったことが指摘されました。

 京都大学総合生存学館のヤルナゾフ・ディミター・サボフ先生と羽尾一樹さんからは、「Outcomes of the project on renewable energy(RE)in Vietnam」というタイトルでのご講演を賜りました。

 ヤルナゾフ先生からは、ベトナムの再生可能エネルギー普及に関する国家レベルでの政策についての現状整理と、その問題点に対する鋭い指摘が行われました。特に大きなグリッド増強コストや民間発電事業者に技術やノウハウがないことなどが再生可能エネルギー普及の妨げになっているとの見解が強調されていました。一方、羽尾さんからの報告では、現地調査を中心に小水力発電やバイオガス発電の地域レベルのケーススタディーについてご報告いただきました。再生可能エネルギー事業は、地域の事業者に売電益をもたらし、地域社会に雇用を創出するなどの便益を有しますが、NGOの援助に強く依存していることや、グリッド増強の際に森林が伐採されてしまうことなど幾つかの問題点も抱えているとのことです。

 パネルディスカッションでは、京都大学大学院エネルギー科学研究科の石原慶一先生から、「東南アジアの再生可能エネルギー」という題目で話題提供をいただきました。東南アジア地域においてコミュニティレベルの再生可能エネルギーを行うことにより、非電化地域の解消や電力供給の安定化、コミュニティの活性化が期待できることをご説明いただき、その実現のためには、財政基盤、将来計画、コミュニティ内の人材の3つを醸成することが肝要であると主張されていました。その後のディスカッションでは、京都大学大学院経済学研究科の中山琢夫先生のコーディネートのもと、再生可能エネルギー事業を普及させていくために、国や自治体、地域金融機関、NPOなどの主体がどのような役割を果たすべきかなどの議題が上がりました。

 このシンポジウムで提起された問題をもとに来年以降もさらなる研究が進められることが期待されます。

(文責:但馬和浩)

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