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コラム連載 時代の先端をひた走りはじめ、進化する“動くバッテリー”(その2)

時代の先端をひた走りはじめ、進化する“動くバッテリー”(その2)

2017年7月13日 加藤修一 京都大学大学院経済学研究科特任教授

電気自動車の多機能な展開 ― V2Xとは何か?
 (先週掲載分より続く)以上の様に2℃抑制シナリオ(特にIEA-450シナリオ)やE30@キャンペーンを含めて、EVの大量導入を積極的に押し進めるシナリオである。この様にパリ協定への効果的対応や、CO2排出量削減、低燃費走行などからも将来の電気自動車の大量導入は避けられないが、同時にEVの多様な利用の在り方に関心が集まっている。“V2X”という概念である。V2Xは“Vehicle to X”を意味する。従来のD2Dの輸送手段に限定しない新しいアプローチである。“X”は未来社会のための多様な機能である。X対応の駆動用バッテリーは充放電が可能な双方向充電器が基本要件となる。“V2X”とは、V2L(Vehicle to Load)、V2H(Vehicle to Home)、V2G(Vehicle to Grid)、V2V(Vehicle to Vehicle)などの総称(表-1)である。

表-1  V2Xの展開と特徴
表-1  V2Xの展開と特徴

Task28の役割 ー  ホームグリッドとV2X技術
 IEAにはHybrid&EV部門があり、TCP(技術共同開発ブログラム)として多くの研究課題がTaskに符番されて計33タスクがある。継続中のタスクが15個あり、Task28は“ホームグリッドとV2X技術”として継続中である。2018年末を目指して成果を出すことになっている。メンバー国は韓国など9ヶ国(日本は不参加)、日産自動車(株)を含む3企業である。V2X技術は技術的、経済的、政策的なチャレンジすべき課題調査である。またV2Xの全体的な価値連鎖(VC)については、関係者、特にOEM関係者を交えて進められることになっている。これらのIEAの成果は国際標準、規格にも影響を与える。常時、モニタリングし世界的動向から目を離さないことである。

進むV2Xプロジェクトと系統網のパーツ化
 表-2はEUにおいて推進されてきたプロジェクトである。このような多機能な展開につながるEVの大量導入は戦略的である。戦略的とは、電気自動車の導入シナリオにあるように大規模な導入は、自然変動電源である風力・太陽光発電の急速な導入と軌を一にしていることである。またそうあらねばならない。電気自動車の新しい進化が機敏な蓄電と風力・太陽光発電との間の相乗効果を期待できる。例えば、V2Gは風力・太陽光発電の変動を平準化し総合送電システム自体の重要なパーツになり得る。今後、社会の大規模な電力需要(電動社会)に応じるためには風力・太陽光の導入に大きな“貯蔵コスト”を経ずして送配電網の安定と信頼性を確保することにつながる。

 資源エネルギー庁は、過日「再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題に関する研究会」を設置し、「再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題について」の第1回の研究会(平成29年5月25日)の配布資料は、研究会の設置趣旨、政府当局の現下の再エネ大導入時代に対する現状認識を示したもので「大量導入」などの言葉が挿入されていることは隔世の感を覚えるが、配布資料にEVやV2X等に関してもページを割き議論を深め政策化することである。今後を注視したい。

表-2   大量EV導入とV2H/ V2G機能に関する主要なプロジェクトの概要(EU)
表-2   大量EV導入とV2H/ V2G機能に関する主要なプロジェクトの概要(EU)

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