工場見学 2006年度

2006年2月 ハードロック工業 (東大阪市) 訪問記 D1 大貝健二(岡田ゼミよりゲスト参加)

大阪府東大阪市、大阪市営地下鉄中央線高井田駅をでて徒歩5分、工場と住宅地が密接している場所に今回の見学先であるハードロック工業株式会社はあった。
 東大阪と言えば、一時期「まいど1号」の名で、町工場のおやっさんたちが人工衛星を作ろうとしているテレビCMなどでもおなじみである。このCMが示していたように、東大阪は、現在でこそ工場数は7000強とピーク時の10000から減少してはいるものの、従業者数50人未満の工場が全体の98%を占める、中小零細工場の集積地である。業種では金属製品、一般機械、プラスチック製品製造業が中心である。ハードロック工業株式会社も従業者数が40名弱とその例外ではなく、ゼミでは中小企業に訪問するのは初めてのことだった。
 ハードロック工業株式会社は、ナットを製造している企業である。しかし、ただのナットではない。1度締めたら半永久的に緩むことはないナットを製造しているのである。その構造は、凹凸の2つのナットを用いることに特徴がある。つまり凸型ナットの中心軸をずらした偏心設計を導入することにより、凸部分がくさびの役割を果たすことになる。そこに凹型のナットをかぶせると強力な締め付けが発生し、緩まなくなるのだという。驚くことに、この方法でナットを製造している企業は、世界のどこを見渡しても、ハードロック工業だけなのである。
 そしてくさびの原理を用いたナットは、私たちの目に見えない場所で使われている。例えば、新幹線、本四連絡橋、原子力発電所、レールの継目など、「安全は威力」というキャッチフレーズが表すように、安全が要求される大型構造物を支えているのだ。
 「あらゆるモノに完璧なものなどない、まずは疑ってみること」という社長の言葉が示すように、絶えず挑戦し、既存の製品に+αを付け足すことによって、新製品を作り出している企業であり、活発な質疑応答、工場見学の後、社長の趣味でもあるミニSLへの試乗、電車模型の操縦など、おまけのついた企業訪問だった。 
 企業訪問の後、大阪市中央区の大阪企業家ミュージアムへ向かった。ここでは、大阪商人、企業家の「志・変化・先見性・変化・挑戦・創意・自助・意志」という7つの気風や、展示されている企業家のうち、大阪出身者は20名(19%)に過ぎず、府外出身者が多いことが説明された。また、江戸時代の大阪では、街にかかっている橋190弱のうち、幕府が造成した橋はわずか12にとどまり、残りは淀屋橋や心斎橋に代表されるように商人が作ったものであるということも熱く説明していただいた。その後の展示を通じて、実利を求めるだけでなく、社会的な責任も担っていたという当時の商人の気概は、明治?現代に至るまでの大阪の企業家にも引き継がれていることを、改めて感じさせられた見学だった。

右上写真: 工場見学後,若林克彦社長の(趣味? 営業用の小道具?)のミニSL(プロパンガスを燃焼させて蒸気で走る超本格派)に乗車させていただく。運転も台で社長じきじきに操作方法の指南を受けるシリンさん(当時学部3回生)

左写真 緩まないナット。この単純だが極めて難しい課題を,創意工夫と熱意で克服。

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