工場見学 2008年度

2008年12月 清水焼団地訪問記 黒澤ゼミ2回生 喜多泰弘

今回の訪問先は,京都市山科区にある清水焼団地であった。日本有数の伝統工芸品「京焼・清水焼」はここで作られている。
まずはじめに清水焼団地展示場・事務所に立ち寄った。展示されている作品を見るに,京焼・清水焼のバラエティさを実感した。陶器,磁器,形状も食器や花器,インテリアに至るまで多種多様である。
 次に,私たちはギャラリー洛中洛外へ移動した。ここで,京焼・清水焼の歴史を教えていただき,また質疑にも応じていただいた。都である京都では生産地=消費地であるという市場としての特殊性を有していたこと,絵かき・作陶などの分業によるレベルの向上,煙による公害問題もあり共同釜を設置していたことなど多くのことを学ぶ。5世紀から続く伝統技術の重みがひしひしと感じられた。
 また,店名の由来ともなっている「国宝・洛中洛外図屏風」が,縦1.6メートル,横3.5メートルもの壮大な24枚の京焼によって再現されていたのには,ただただその細かさに驚かされるばかりであった。
作陶家の方の工場にもお邪魔させていただいた。壁には作品がところ狭しと並べられていたが、どれ一つとっても同じものはない。全てが職人の手作りなのである。釜の温度調節,焼き加減の判断には温度計など役にたたない。自らの腕のみが頼りというところに職人の凄みを感じた。最後に,希望者には作陶を体験させていただけるなどいろいろお気遣いいただいた。お忙しいなか見学を受け入れていただき,さらに作陶の機会まで与えていただき,感謝するばかりである。
 見学を通して,随所で京焼・清水焼への自信,職人としてのプロ意識を感じた。1500年以上続いている伝統もかくしてまた引き継がれるのだろう。

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2008年6月 三菱重工業(株)神戸造船所訪問記 黒澤ゼミ3回生 井澤龍

梅雨の中休み、神戸市営地下鉄海岸線「和田岬駅」を出ること徒歩3分、正門の遥か手前で、我々を迎え入れるため笑顔で駆け寄る今回工場見学受け入れ先,三菱重工神戸造船所の社員の方の姿を見た。 

 正門をくぐると、私たち30名弱は構内に設置された横断歩道を渡り、設計開発センターにある一室に招かれた。深い背もたれ付の椅子の横に一つ一つ丁寧に置かれたヘルメットを見ると、今日見学させて頂く場所の正装とはこれなのだと身が引き締まる。我々の工場見学をより実りあるものにしようという神戸造船所関係者の御好意で当室において三菱重工の事業説明を40分ほどして頂く。三菱重工の製品とは産業基盤そのもの(発電所、産業機械、H2Aロケットなど)であるという説明に三菱重工が果たしてきた使命とその重みを感じる。事前学習を一週間前に行ってきたこともあり、40分中半分弱を占めた原子力事業の説明に、三菱重工、特に神戸造船所における意気込みを書物で感じる以上の生の実感で得ることが出来た。さて、事業説明が終わるとヘルメットの出番がやってきた。ヘルメットの装着に加え、レシーバーも装着し、耳にイヤホンを着け、ガイドの方の指示が聞こえるようにする。準備が済むと、いよいよ構内の見学である。

 まずはじめに、料金機械の製造工場を見せていただく。高速道路で見かけるような料金支払い装置が横一列に並ばれている様はなんともおかしみのある光景であった。この料金機械の中にはETC向け機器(路側機器、車載器共)が含まれるが、路側機器を作り上げた技術力に感嘆する共に、ETC車載機が群を抜いて三菱重工最小の機械であるらしく、そこにも三菱の新しい挑戦があったのだと納得する。

 料金機械製造工場を見終えると一団は海の方向へ誘導される。目前に広がるのは全長200mの船の製造現場と背景としての海。排水量6万トンのコンテナ船の製造現場にただただ口を広げて仰ぎ見るだけである。時折発せられる溶接による火花にこの巨大な物体が船になろうとする意思を感じる。通りがかった作業員の方が我々の素人質問に丁寧に答えてくださりしばし船に魅了された。

 次に我々は船に設置されるディーゼルエンジンを見学する。当日はディーゼルエンジンの試運転日であったらしく工場半径100m辺りからもうレシーバー無しではいられない。ついにはレシーバーによる指示ですら聞き取りにくくなるほどの轟音であったがいざ機械に近づくとその装置への関心に心が奪われ、立ち止まり出来る限り近くで機械を見ようとする者が多かった。

 

最後に見たのが神戸造船所が誇る原子力発電プラント機器であった。工場は先ほどと打って変わって全くの静寂の中作業が行われていた。静かに最先端機器を誇るその工場の様は自信に満ちていた。その後、設計開発センターに戻り、展示ホールにおいて神戸造船所の道のりについての展示を見、1時間余りであったが非常に満足した構内の見学を終えた。一室に戻った我々は今回の工場見学に尽力してくださった京大OBによる和やかな会社説明の案内と質疑応答をし、三菱重工神戸造船所の工場見学を終えた。

 今回の工場見学で最も強く感じたのは尽力頂いた京大OBの方、事業説明をして下さった社員の方等々三菱重工関係者全てに見られる「社会の基盤を自分たちの製品が荷っている」という高いプライドと責任感であった。そのエンジンの轟きはまだ私たちに残っているのである。

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