2016年04月21日
4月16日(土)に制度的経済動学研究会が,京都大学大学院経済学研究科において開催され,浅沼大樹氏(旭川大学),黒瀬一弘氏(東北大学)にご報告いただきました.
浅沼氏の報告タイトルは,“A Study on the Relationship between Productivity Improvement and Macroeconomic Performance”というもので,Delli Gatti et al. (2010)の企業間ネットワークを明示的に導入したモデルに,生産性の異質性と創造的破壊プロセスを導入し,シミュレーションを行いました.通常の理論は,倒産してしまう企業を下手に生き延びさせるより,創造的破壊を進めたほうが全体のパフォーマンスが高まると主張するが,ネットワークを導入した経済を考えた場合,必ずしもそうは言えない可能性があることを示しました.
黒瀬氏の報告タイトルは,“The Structure of the Models of Structural Change and Kaldor’s Facts: A Critical Survey”というもので,農業,製造業,サービス業の構造変化が生じつつ,かつ集計レベルでは,カルドアの定型化された事実とりわけ均斉成長を説明する多部門経済成長モデルを批判的にサーベイしました.こういったモデルは,多部門成長モデルと謳っているが,基本的には1部門成長モデルの単純な拡張であり,とりわけ,資本財の異質性を考慮していない点で不十分であることを示しました.