本プロジェクトは、企業間システムにおけるイノベーションについて企業経済学、経営学、会計学において共通の学際的な課題である企業間関係における「境界のマネジメント」という視点から、そのメカニズムを分析・解明しようとするものです。企業が「境界をどのように設定し、境界内と境界外で要素間の相互作用をどのように制御するのか」は日常の精算分業だけではなく、社会的なイノベーションから見ても興味深い分析です。2009-11年度までは、生産活動とその革新の成否を大きく左右する要因となる。自動車、バイオテクノロジー、サービスの三つの産業を主たる題材として実証分析を行なってきました。
今年は、企業間関係と企業境界の経営学的な理論研究をベースにしながら、関西バイオクラスターの持つ地域の組織間ネットワークと研究開発能力の特性について分析を行っています。関西地方は、バイオテクノロジーの研究開発の面に於いては、本学や大阪大学、理研をはじめとした世界最先端の研究機関だけではなく、製薬、生化学、食品産業などの産業が集積しています。「関西バイオクラスター」は、そうした面で、日本有数のバイオテクノロジーのクラスターであり、研究開発だけではなく、産業集積の面でもトップクラスです。関西バイオクラスターを事例にしながら、日本のバイオクラスターが持つ地域的な研究開発能力(Regional Capablities)について、産官学の研究開発ネットワークの構造的な進化とそこにおける知識移転のメカニズム、そしてその事業化を支える産業のネットワークについての研究を行っております。
2000年代に於いて、欧州だけではなく、米国の一部でも、いわゆる「シリコンバレー複製政策」という産業クラスター政策のあり方が、それぞれの経済の事情いわゆる制度的文脈を無視して進められたために、限界が指摘されつつあります。日本においても、ハイテク起業については、研究者の少ないスピンオフ、低い起業意欲、系列的な取引の比重の高さ、世界的に展開しつつある新規の研究開発分野への参入の低さなどの様々な経済制度上の特徴が指摘されつつあります。こうした制度的な違いを意識しつつ、バイオクラスターにおける産官学の組織間ネットワークのあり方、その協働の経済的なメカニズム、そしてその成果について国際比較の観点から研究しております。
次の科研費プロジェクトに関係しながら進めております。
名前 | 所属 | 職名 |
---|---|---|
依田 高典 ![]() |
京都大学大学院経済学研究科 | 教授 |
名前 | 所属 | 職名 |
---|---|---|
仙石 慎太郎 | 東京工業大学 環境・社会理工学院 |
教授 |
中本 龍市 | 九州大学大学院経済学府 | 准教授 |
山田 仁一郎 | 京都大学経営管理大学院 | 教授 |
稲垣 京輔 | 法政大学経営学部 | 教授 |