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No.231 エネルギーの安定供給に向けた重層的エネルギーインフラの必要性

2021年2月11日
株式会社国土ガスハイウェイ 代表取締役 朝倉堅五
株式会社国土ガスハイウェイ   取締役 村上正恵

キーワード:LNG、天然ガス、ガスパイプライン

 今年は、新型コロナ(Covid-19)感染者急増問題とともに、卸電力市場の価格高騰で幕を開け、いきなりエネルギー問題で関係各所が様々な対応に走り回ることとなった。この背景と、今後のエネルギーの安定供給に向けて重層的エネルギーインフラの必要性を提示したい。

卸電力市場での価格高騰は複合要因

 昨年上旬までは新型コロナ(Covid-19)禍で、様々な活動が抑制され、電力需要も緩んでいた。ところが年末から徐々に逼迫が騒がれ出し、1月正月明け早々、普段、数円/kwhが普通のJEPX(卸電力取引所)のスポット市場価格が、200円を超える値段まで付け、1月平均でも60円を超える価格となった。

図1 JEPX スポット市場 システムプライスの推移
(2020年12月15日~2021年2月5日)コマ毎価格

図1 JEPX スポット市場 システムプライスの推移<br>(2020年12月15日~2021年2月5日)コマ毎価格
出典」電力・ガス取引監視等委員会 第55制度設計専門会合 資料

これはいくつか原因がある。

1)気温の低下

 冬の気温低下で電力需要が増えるのは通常の発電計画では織り込まれているが、今年は10年に一度程度の低温がやってきた。

 ただ、何十年に一度レベルではなく、厳冬が既に予想されていた昨年10月段階では安定供給に最低限必要とされる予備率3%は確保できる見通しであった。それでも実際には各エリア単位では危険水準に達したのは、それ以外の複合要因が重なったことが原因としてあげられている。

2)発電燃料の不足と価格の高騰

 日本の発電は火力発電が主体でそのなかで需給の変動への対応を重荷になっているガス火力発電が全体の4割を占めており、その発電燃料のLNGが、今回逼迫した。LNGはガスを-162℃に冷却した液体であり、徐々に気化してしまうため、大量の在庫を持ちにくく、日本では2週間分程度しかLNGの在庫を保有していない。オイルショック以降、国主導で積極的に備蓄を進めてきた石油が約200日分保有しているのと対照的だ。
 なお、この逼迫原因も複数ある。
・昨年、オーストラリアの規模が大きいゴーゴンのLNG液化プラントで長期のトラブルが発生し障がい継続中に、アメリカ、ノルウェー、アジア等でトラブルが頻発した。
・近年輸入が増えているアメリカ産のLNGはコロナ禍でパナマ運河の通関手続きの遅延が発生し、発注時予定よりも到着に日数が余計にかかることが判明した。
・中国では石炭火力発電の抑止しガス火力発電の増加しており、2019年11月以降、たびたび日本よりも輸入量が多くなっているが、2020年中頃まではコロナ禍での経済の停滞で取引量が抑えられていた。しかし、北東アジアへの寒波到来により中国・韓国の輸入が急増した。

図2 北東アジアのLNG需給逼迫状況
図2 北東アジアのLNG需給逼迫状況
出典:第29回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 資料

3)日本国内のその他の電源の影響

 当然、他の電源、普段稼働率が低い石油火力も含め、自家発電からの電力調達も行い、更に電力広域機関を通じた地域間での電力融通もおこなった。しかし、2020年から21年にかけて、9基ある原子力発電所の内半数が稼働せず、火力発電の負荷がそもそも高かったことも災いして、火力発電所は非常に稼働率が高くなっており、特に逼迫した1/8は石炭・LNG・石油とも9割近い設備利用率となっている。

図3 火力発電設備利用率 日別比較
図3 火力発電設備利用率 日別比較
※旧一般電気事業者等(北海道電力、東北電力、JERA、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、電源開発、酒田共同火力発電、相馬共同火力、常磐共同火力)が所有する火力発電所(沖縄に立地する発電所を除く)を対象に各社ヒアリングにより集計。トラブル等による停止は含んでいるものの、長期休止電源は含んでいない。
※「設備利用率=発電電力量(送電端、24時間値)/24/定格出力」として求めている。ただし一部、送電端で発電電力量が計測困難な発電所について、発電端の値を使用している。
※燃料が混焼の場合、最も割合が多い主燃料によって燃料種を区分している。
※グラフ中の点線は、2020年度供給計画取りまとめにおける2019年度の設備利用率を示している。それぞれの値は燃料別に、石炭66.4%、LNG48.9%、石油10.6%、火力全体46.8%である。
出典:第29回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 資料

 電力融通指令は昨年12月15日から終息宣言の発出された1月26日(最終指令は1月17日)までになんと21日指示がでている。それでも綱渡りであり、関西電力と北陸電力では時間あたり最大使用率が99%に達した日があった。また関西電力はこれらの期間の内15日において、合計23,345万kWhの受電の融通指示をうけており、発電所の故障が重なったこともあり、この時期大幅に供給量が不足した。

 これら1から3などの複合要因の結果、LNG火力を中心とした出力抑制が行われたこととと、自社需要の拡大により、12月20日~1月21日の間、スポット市場への旧一般電気事業者(以降、「旧一電」)・JERAの実質売り入札量が減少していた。しかし、気温低下で新電力事業者の買い入札量は増加したことから、スポット価格は高騰した。

図4 旧一電・JERAの自社需要および制約等の状況
図4 旧一電・JERAの自社需要および制約等の状況
出典」電力・ガス取引監視等委員会 第55制度設計専門会合 資料

なぜLNGが不足したか

 前述の状況でLNG価格高騰は避けられないとしても、LNG調達はできたのではないか、という指摘もあろう。しかし以下のような状況で結果として実際には即時の調達に進めなかったと思われる。

1)市場自由化後の需要予測の困難さ

 前述したように、昨年10月の段階では厳冬を織り込んだ上で、各エリア3%以上の予備率を確保できる予定だった。

 自由化後、新電力事業者が多く参入したが、発電の多くは旧一般電気事業者(以降、「旧一電」)が担っている構造自体は変わっていない。ただし、卸電力市場を活性化させるため、余剰電力の全量を原則、限界費用ベースでJEPXへ投入することになっている。12月半ばからこの成約率は非常に高くなっていたのだが、市場への供給量で足りてはいたため、価格的には若干高い程度だった。このため、需給バランス深刻化の予兆を購入側の新電力事業者や市場に直接供給しないJERA(注:中部エリア分は直接供給)等が気づきにくい状況にあった。

図5 スポット市場の入札・約定量の推移
(2020年12月1日~2021年2月5日)

図5 スポット市場の入札・約定量の推移<br>(2020年12月1日~2021年2月5日)
出典」電力・ガス取引監視等委員会 第55制度設計専門会合 資料

2)タイムラグと在庫量の制約

 今回、12月末になるまで本格的な需給の逼迫が予測できておらず、その後、緊急に調達を行っているがスポットものであっても1ヶ月程度はタイムラグが発生する。一方で国内の在庫は前述の通り2週間分程度しかなく、かつ、各社のLNG在庫量を適時に把握できるような情報開示は日本では行われていないため、各社が直近数週間程度の不足に対して「利幅」をとりに動きにくい構造となっている。

図6 LNG在庫の推移
図6 LNG在庫の推移
出典:第29回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 資料


エネルギーの安定供給に向けて


エネルギーの変動の調整

 すでに示したとおり、年末から1月中旬まで、JEPXへの供給分はほぼ全量が成約しており、市場で不足したのは確かだ。

 今回は、老朽火力の稼働、最大出力運転、地域連系線の運用容量を通常より拡大しての電力融通、ガス会社からのLNGの融通、など様々な方策で対応することにより、なんとか供給ができた。しかし、これからますます再生可能エネルギーの利用促進が進むと、変動発電の影響も大きくなってくる。例えば今回の逼迫時期の太陽光発電の総発電量に占める比率の変動幅は4%から10%となっており、今後、太陽光、風力等の変動電源による発電割合が増えるにつれて、これらの総発電量に対する変動幅も拡大することが予想される。

図7 太陽光発電比率の変動幅
(2020年12月1日~2021年1月17日)

図7 太陽光発電比率の変動幅<br>(2020年12月1日~2021年1月17日)
出典:第29回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 資料

 変動を吸収し、電力を安定供給していくためには、インフラやその調整力の増強が重要である。

1)kWの増強

 天候等の変動分の調整を担うLNG(や石炭)などの火力発電所は近年稼働率が低下しており、費用対効果面、カーボンニュートラルの潮流とあわせて新規設備投資がしにくい環境にある。投資回収予見性の低下による中長期的な供給力不足への対応のため、昨年、容量市場が新設されたところだが、まだ取扱量が少なく今後の取引の活発化が望まれる。

図8 供給計画取りまとめにおける設備利用率の推移
図8 供給計画取りまとめにおける設備利用率の推移
出典:第29回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 資料

2)kWhの増強、バランス調整

 今回のように、トータルとしては発電量が足りていても、地域によって供給量に偏りがあることは当然ありうる。設備の過剰投資を避けつつ安定供給を行っていくためには、全国でスムーズに電力調整が行えるようにする必要があり、今後は、揚水発電所の活用や地域間での電力融通などの調整機能の強化が不可欠である。

 今回は主に西日本で電力供給が不足し、中部関西間連系線の空容量が不足した。調整不足回避のために一時的に6日間だけ連系線容量を約2倍(平均110 kW)への拡大を余儀なくされた。今後もエリアを越えて、全国規模で確実に調整を行っていくためには連系線等の需要地と供給地をつなぐ送電網の増強は重要な課題である。

図9 地域間連系線の状況と増強計画
図9 地域間連系線の状況と増強計画
出典:第29回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 資料

 また、現在も活用されている揚水発電所はもちろん、蓄電池や電気自動車のバッテリーなどもあわせたVPP事業が今後拡大し、調整力を発揮していくことが期待できる。

燃料のシームレスな供給

 今回、ガス会社から電力会社へのLNG融通やガスコージェネレーションシステム等の自家発電設備の出力増加によっても、対応を行った。

 しかし、例えば、電源開発の石炭火力発電所である松島火力発電所では、1/7に石炭関連設備のトラブルにより発電ができなくなっていたところ、重油専焼に切り替えて運転した。しかし、国内備蓄基地からは専用の輸送船で配送する必要があり、すぐの手配が難しいという課題がある。また、LNGの融通の際にも配船調整等が必要で、即日の融通はローリーでの運搬など限定的である。

 現在、調整を主に司る主要なミドル電源であるガス発電は、長期的に見れば、カーボンニュートラルの流れの中で燃料はCCS対応した天然ガスや再生可能エネルギーから生成されたメタンや水素に置き換わっていくのであろうが、ガス発電自体の需要は調整機能として依然として残り、重要性は高い。また、直接のエネルギー源としてのガスも同様にカーボンニュートラル対応をしつつ、熱源として使われていくであろう。

1)ガスの全国へのスムーズな供給と期待される効果

 しかし、現在の国内のガスの保有状況は、港湾部にLNGタンクで保有されているが、他のタンクとは基本的に独立した状態にあり、相互融通をしづらい。一方で、東日本大震災の際には、仙台でLNG基地が被災した際、パイプラインで新潟とつながっていたため、新潟から輸送することにより、ガス供給をわずか被災から約2週間で再開できた。

図10 東日本大震災発生時の代替供給による復旧事例
図10 東日本大震災発生時の代替供給による復旧事例
出典)エネルギーインフラネットワークと高速道路の高度化に関する研究 報告書

 電力のネットワーク同様にガスの広域なネットワークを構築し、供給ルートの多様化が実現できれば、平時の安定供給や事故・災害時の供給強靭化が期待できる。

 ここで以下のような基幹パイプラインを想定したい。

図11 基幹パイプライン(案)
図11 基幹パイプライン(案)
作成)国土ガスハイウェイ

 各事業者のLNG基地をつなぎ、人口10万人以上の都市をほぼ連絡させることで、地域コージェネレーション等も含めた、地域へのガスによるエネルギー供給を円滑に実施できる。

<幹線ガスパイプライン>

・人口10万人以上の都市をほぼ連絡、総延長約6,500km
・既存のパイプライン、LNGターミナル等と接続
・利用想定ガス
  当初:LNG気化ガス、国産天然ガス
  中期:CCS対応した天然ガス、バイオガス、水素等の混入率を増やす
  長期:再生可能エネルギーにより生成された水素等のカーボンニュートラルなガス
・全国の基幹パイプラインはTSOが運営し、公平・中立な輸送サービスを提供

<期待される効果>

・エネルギーコストの低減
 エネルギーの広域融通が強化されることにより、エネルギー調達の効率化が進み、ガスだけでなく電力も含めた市場全体のエネルギーコストの低減が期待できる。
・カーボンニュートラルに向けたカーボン削減に貢献
・基幹ガスガスパイプラインが整備がされると、需要地への供給ルートが複数確保されることになり、平時の安定供給と事故・災害時の早期復旧に有効(※全国に広がる「ガスプール」として貯蔵機能も持てる。)
・これまで都市部に比べ高価であったエネルギー料金が低減することにより、新規の発電所、データセンター、工業団地等の誘致が可能となる。により、「地域エネルギーサービス」の構築が可能となる。



2)全国へのパイプラインの敷設方法

 幹線ガスパイプラインは (一財)国土技術研究センターと(株)国土ガスハイウェイの共同研究成果で、高速道路空間への敷設が可能であることをしめした。また、高速道路空間を活用することにより迅速効率的に、高速道路空間の機能を高度化させつつパイプライン網の構築が期待できる。

 なお、当該研究において、道路整備のための法制度においては、義務占用下での高速道路空間の活用は現状でも可能であるが義務占用以外の高速道路の活用に関して、新法の制定や本来の道路機能との共存に向けた方策など解決すべき課題はあると整理されている。

 また、整備費用としては基幹ガスパイプライン(6,500km)に対して約4兆円、高速道路管理者との協力関係を構築し、多地点同時着工方式で迅速な工事完工を見込んで、おおむね建設期間は着工後、10か年を想定する。

図12 基幹ガスパイプライン設置位置の例
図12 基幹ガスパイプライン設置位置の例
出典)エネルギーインフラネットワークと高速道路の高度化に関する研究 報告書

3)地域での分散エネルギー事業の展開

 幹線ガスパイプラインが整備されることにより、これまで都市部に比べ高価であったエネルギー料金が低減し、新規の発電所、データセンター、工業団地等の誘致が可能となる。これにより、地域の再生可能エネルギーを活用しつつ、コジェネプラントを動かして、地域で電気、熱、瓦斯を利用しつつ、余った電力をVPP等を組み合わせてコントロールし、他の需要地域へ送電することも可能となる。

図13 地域エネルギーサービス事業のイメージ
図13 地域エネルギーサービス事業のイメージ
出典)エネルギーインフラネットワークと高速道路の高度化に関する研究 報告書

 このように、電気の供給の安定化のためにも、発電でも重要な位置を占めるガスを全国に安定的に供給できるようにすることで、強靱なエネルギーインフラを構築し、送電、ガスとも各TSOの機能も向上させ、あわせて需要予測の高度化や先渡・先物市場等のヘッジ手段も活用促進することで、多様なエネルギーのバランスの取り方が可能となり、結果として安定的なエネルギー供給が可能となることを期待したい。

資料

  1. 第29回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会(2021年1月19日開催)配付資料
  2. 電力・ガス取引監視等委員会 第55制度設計専門会合(2021年2月5日開催)配布資料
  3. 『エネルギーインフラネットワークと高速道路の高度化に関する研究 報告書』, 一般財団法人 国土技術研究センター・株式会社 国土ガスハイウェイ,令和2年3月