Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

本講座(第2期)は、2024年3月31日をもって終了いたしました。

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2019年7月22日(月)の部門A研究会 議事録

2019年7月22日(月)
於:京都大学法経済学部東館 地下1Fみずほホール

 2019年7月22日(月)17時~20時、第2期再生可能エネルギー経済学講座部門A第2回研究会が、京都大学にて開催されました。今回の研究会では、立命館大学の竹濱先生と尚絅学院大学の東先生に発表をしていただきました。

変動性電源大量導入による2030年の電力需給バランス,地域間送電とデマンドレスポンス活用の検証

竹濱朝美先生

 再エネが増加した場合の需給バランスを、風力・PVの弱点(出力変動・予測誤差)を補完する対策も含めて計量的に提案する必要がある。本研究では、5月、8月、10月を対象に分析した。目的関数は在来電源発電の1時間ごとの燃料費を最小化するというものだ。内生変数は発電機グループKの1時間ごとの発電電力だ。原発は全く稼働しないという想定だ。石炭火力は設備容量自体を長期的にできる限り削減させる。今回の試算では、地域間送電線(運用容量)は70%上限で送電すると想定した。PV/風力の出力予測誤差は、気象庁データより1時間前の予測を作成した。2030年の再エネの導入目標容量は、LowとHighの2つのシナリオを採用している。電力需要は10%減るという想定だ。LFCは地域間で融通するという想定だ。残余需要は夕方に増大するので、EVの充電は夕方は避ける。ヒートポンプは深夜から昼間までに加温する。

 九州エリアの5月の結果は、大規模な過剰電力が頻発するので再エネの出力抑制をする。また、調整力が不足するので、地域連系線を使う。日によっては電力過剰な時間帯が出てくる。2016年の需要の実績データを使っている。風力・太陽光発電も実績値に設備容量が増えた分だけ倍数を掛けている。8月はあまり風が吹かないので、供給力がギリギリになる。再エネはほぼ太陽光発電だけになる。夕方の残余需要が急増するタイミングに供給力がギリギリになる。石炭やガスはほぼフル稼働することになる。なので関門連系線は増強しなければならないと思う。

 中国管区では、九州から太陽光の電気が送られてくるので4~5GWの過剰が発生する。中国―関西の連系線は送電上限に達する日が頻発する。5月の再エネ電力比率は46%だ。したがって中国―関西の連系線を増強する必要があると思う。中国管区の8月の結果は、風力がなくなる。石炭・ガスは名いっぱい稼働する。夕方太陽光が落ちるころは、揚水を落とさないといけない。再エネ比率は36%だ。

 西日本のまとめ。今回の試算条件では、再エネ比率45%達成は難しい。PVが中心なので、夏の夕方の再エネ出力が乏しい。系統レベルの蓄電ストレージが必要ではないかと思う。

pdf発表資料(2.57MB)

再エネの統合コストに関する今後の研究方針について

東愛子先生

 再エネの統合コストの理論上の最適を求めることに意義はないと思う。いかに統合コストを減らすか考えたい。バランシング費用は計算できると思う。プロフィール費用のうち、柔軟性の影響は計算できるのではないかと思う。バランシング費用はユニットコミットメントモデルを用いて推定できる。制度要因がどの程度統合コストに影響を与えているかについて研究はあまりないと思う。重要なのは長期の視点だ。火力の稼働率が変化すれば使われる電源が変わり、それが投資のインセンティブにつながるだろう。

 バランシング費用の低減と電力市場の関係について。インバランス料金設計や当日市場設計やインバランス料金の公表時期次第では、新しい柔軟な電源の投資シグナルになる。パッシブバランシングというやり方もデンマークではある。

 いかにプロフィール費用を下げるか。一番重要なのは、火力の必要量を下げることだ。容量市場の設計は設定容量が過剰だとプロフィール費用が上がってしまう。DRや蓄電などの柔軟オプションへの投資することや市場の流動性も大事だ。

 今後の課題は、電力市場制度の違いが統合コストに与える影響を比較できるか知りたい。バランシング費用は当日と前日市場の差をみる。デンマークではインバランス価格が限界価格なのでその差をとりたい。インバランス・スプレッドが柔軟電源の投資にどのようなシグナルを与えるか。パッシブなバランシングがどの程度行われているか。プロフィール費用とバランシング費用の交互作用についても明らかにしたい。日本における統合コストの推計もやりたい。日本のデータを用いてやれればいいなと思っている。

pdf発表資料(995.88KB)