Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

本講座(第2期)は、2024年3月31日をもって終了いたしました。

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2019年11月25日(月)の部門B研究会 議事録

2019年11月25日(月)17時から20時
於:京都大学法経済学部法経東館B1 みずほホール

 上記の通り開催された今回の研究会では、京都大学大学院経済学研究科博士課程の白石智宙様と、長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科の昔宣希先生の計2名よりご報告いただきました。以下は、その要約記録です。

日本における木質バイオマス発電事業のコスト分析と将来展望
~真庭バイオマス発電株式会社をケースとした実態と試算~

白石 智宙 様

 本報告は、日本においてFITによって導入が進んでいる木質バイオマス発電事業を、地元の事業として実現させている岡山県真庭市の真庭バイオマス発電所を対象として、発電コスト分析を行うことが目的であった。まずは日本の木質バイオマス発電事業が抱えている課題として、燃料材の調達、発電コストの高止まりを指摘した。そのうえで、真庭市の事業の成功要因として、地元の関連事業者の合意に基づいた燃料材調達スキームの構築と、量と質(未利用材証明・含水率)が安定した燃料材調達を実現させる制度設計と集積基地の役割、そして高い地域付加価値創造の3点を明らかにした。続いて、真庭バイオマス発電所への調査から得た実績値に基づいて、発電コストを推計した。その結果、真庭バイオマス発電所は政府のモデルプラントよりもkWh当たり9円安く事業を実現できていることが明らかになった。そのうえで発電コストの約7割を占めている燃料費に着目し、更なる発電コストの削減が可能であることを、可能性として、定量的に示した。

pdf発表資料(2.27MB)

韓国における自治体による分散型再生可能エネルギー政策の動向 (済州島の事例を中心に)

昔宣希 先生

 本報告は、本講座のディスカッションペーパーとして2019年8月に公開された昔先生の“Locally-led renewable energy implementation for energy system transition in Korea: a case study of Jeju Special Administrative Province”の成果報告であった。本報告の目的は、韓国の地域分散型再生可能エネルギーの普及・拡大のための政策の事例として、済州道の取り組みに着目し、そこにおける主体、取り組みの経緯、特徴的な点、課題と展望を把握することであった。分析対象である済州道は、2012年に“2030 Carbon Free Island(CFI2030)”宣言をしており、2016年時点で電力消費量の11.5%を再エネ由来が占めていた。また文献調査と済州道における現地調査の結果、済州島の特性である「風」のポテンシャルと、「風」はみんなのものだという島民の認識が、風力発電事業の促進に繋がっているという点、またCFI2030を実現させるロードマップが提示され、電気自動車の普及等が取り組まれている点が明らかになった。他にも、ステークホルダーの間で協働関係が構築されており、そこでは済州道の発展のための基金設立も組み込まれているという。一方で、住民の意識や参画が阻害要因となっていることや、小規模事業の展開が課題であることが指摘された。

pdf発表資料(3.37MB)