Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

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再生可能エネルギー経済学講座

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2020年1月27日(月)の部門A研究会 議事録

2020年1月27日(月)
於:京都大学法経済学部東館 地下1Fみずほホール

 2020年1月27日(月)17時~20時、第2期再生可能エネルギー経済学講座部門A第4回研究会が、京都大学にて開催されました。今回の研究会では、東京大学 大学院工学系研究科 原子力国際専攻の小宮山 涼一先生と、筑波⼤学システム情報系 構造エネルギー⼯学域 (リスク⼯学専攻・⼯学システム学類担当)の鈴⽊研悟先生に発表をしていただきました。

数理モデルによる電力需給シミュレーション

小宮山 涼一 様

電力需給モデル

 私は日本の電力系統の数値シミュレーションを行っている。電力の需給とネットワークをモデル化してきた。対象は基幹系統で、電圧の定義は20万ボルトの特別高圧だ。352母線をカバーしている。周波数に影響のあるところは全てモデル化している。新北本連系線や九州の日向幹線など新しいものも反映している。

 モデルの概要は線形計画法だ。目的関数は、分析の目的に応じて変えることができる。長期的な設備計画を計算したいときは、固定費も含める。例えば原発をどこにどれだけ作ればいいかわかる。送電線も変数として扱うことで、どこにどれだけ増強すればいいのか分析することも可能だ。制約要因として同時同量制約、作業停止計画の制約、供給予備力制約、電源の負荷追従制約(応答性能)、火力・原子力の最低出力制約、送電容量の制約、SNSP(非同期電源の比率に関する)などを含めている。母線別に太陽光や風力の出力変動をみている。時間解像度は10分単位だ。制約条件は3.7億本、内生変数は2.6億個ある。再エネ出力変動への対策としては、揚水、蓄電池、連系線、出力抑制、原子力・火力の補修計画・定期点検の最適化を想定している。例えば再エネの発電量が増える5月に原発の定期点検をぶつける。潮流は直流法を用いて位相差でも決まると想定している。AMEDASのデータを明示的に考慮してPV出力推計を行った。

エネルギー技術選択モデル

 ヨーロッパでは電源の6割以上が非化石電源(35%は再エネ、3割は原発)となっている。しかし非電力部門の脱炭素化が進んでいない。電源だけではなく、熱利用の脱炭素化も重要となる。これは日本でも同様である。そこで私は主だった素材産業や運輸部門、民生部門のエンドユース技術を考慮に入れて、エネルギーシステム全体を最適化(コスト最小化)する分析を行った。2050年に8割の二酸化炭素削減を実現するために、排出量を2億トンに減らすという制約をかけると、省エネは3割、電力需要は1兆kWhから1.5兆kWhに増えるという結果になった。原子力については40年運転で新増設もないという仮定を置いた。再エネ比率は8割になる。CO2の限界削減費用は30万円/トンになる。今後の課題として、これまでの分析では再エネの出力変動は100%予見可能という仮定を置いているが、不確実性を考慮にいれた分析を行う必要がある。そこで確率動的計画法を使って改善を行っている。

pdf発表資料(5.42MB)

技術・市場・⼈間 ――分野融合型エネルギーシステムモデルとしてのゲーミング

鈴⽊ 研悟 様

 ゲームという方法で現実を解き明かそうとしている。この手法の歴史は古くからあり、工学的要素だけではなく、経済学が扱う資源配分の要素も含まれる。エネルギー問題のような分野融合的な事象を扱うのに向いているのではないかと思う。ゲーム理論は面白くて奥が深い。ただし、実際の人間が、ゲーム上と同じようにふるまうわけではないという批判もある。心理学の実験分野では、それを明示的に考慮した実験研究がある。例えば社会的ジレンマの分析がある。実際の社会では、利得行動が変わる。私はプレイヤーと環境の相互作用を反映するため、資源再生パラダイムゲームをつくった。このようなアプローチに対しては、未来に不確実性がなにもない完備情報ゲームによる実験にすぎないという批判がある。しかし現実は完備情報ではない。したがって不完備情報ゲームが求められている。

 ゲーミング実験というものもある。これを用いると他の手法では見落とされるかもしれない重要な可能性を発見できる。例えばエネルギー事業者が直面している、短期的な利益と長期的な投資の葛藤を考えることができる。私はエネルギー事業者が共有する主観的現実が、エネルギー転換の進捗に与える影響について調べた。何回か実験を繰り返し、実験結果が分岐する条件(原因)を調べた。事業者の葛藤を、価格競争、新技術の投資効果、化石燃料の価格の3点で表現した。自分で再エネをやるか、他から安い石炭を買うかを選ぶ。パラメータの決定として、参加する人数が2人だと実際の市場のようにならず、参加人数が多すぎると実験協力者を集めるのが大変なので5人に設定した。動学的最適化モデルを活用した。

 質問紙調査のクラスター分析の結果、プレイヤーの不安が高いと不幸な結果になり、不安が少ないと幸福な結果になるということがわかった。これを解釈すると、競争的な世界観では、結果的にエネルギー転換が遅れ、逆に協調的な世界観は順調なエネルギー転換が起こる。ただし協調的な世界観が共有された市場は、フリーライダーに弱い。競争・協調・独占という経路が選ばれうる可能性を発見したことに意義がある。プレイヤーの経験をモデル化するというゲーミングの方法は、対象の認知・行動が変化するかに焦点を絞るのは現実の公共政策と同じだと思う。教育・科学技術コミュニケーションへの応用もでき、エネルギーシステム分野での実践例もある。

pdf発表資料(4.28MB)