Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

本講座(第2期)は、2024年3月31日をもって終了いたしました。

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2020年5月25日(月)の部門B研究会 議事録

2020年05月25日(月)
於:Zoomオンライン会議

 2020年05月25日(月)17時〜20時、再生可能エネルギー経済学講座部門B研究会が、Zoomオンライン会議という形で開催されました。今回は、公益財団法人日本住宅総合センター研究部の小谷将之様、京都大学大学院地球環境学堂の坂本祐太様よりご報告いただきました。

インフラ・公共サービスの効率的な維持・管理のあり方について
−ドイツ・シュタットベルケの事例から−

小谷 将之 様

 本報告は、日本の人口減少と高齢化による自治体の運営が難しくなるという事実に基づいて、ドイツでの現地調査と分析を通じて、シュタットベルケ(SW)が有力な解決手段として日本のインフラ・地域問題を解決できるかどうかについて議論することを目的とした。まずはSWの概念を紹介して、ドイツでこのシステムの実際の運用状況を言及して、日本国内での動きも説明した。次に、現地調査によるNürtingen、Ulm/Neu-Ulm、Dresden、Frankfurt am Main、Mannheimの5都市のSWシステムを比較して、出資会社、自治体の関与、監査役会の関与、経営陣の専門性、経済的効果、情報開示などの観点からSWのポイントをまとめた。それから税制度、会社法(ガバナンス)、情報開示などの違さを比較して、SWが日本への適用に向けた問題を議論した。最後に、日本の自治体におけるケーススタディ(泉大津市)を紹介して、導入のポイントを提言して終わりとした。

pdf発表資料(5.01MB)

シュタットベルケの優れているところ
− 収益性とシュタットベルケ・システムに着眼して −

坂本 祐太 様

 本報告は、シュタットベルケ(SW)のビジネスモデルの詳細分析を行い、SWの優れている点を明らかにして、日本版SWの理想像を明確になることが目的であった。ドイツのヴッパタール市のSWを例に、SWの収益性とSWシステムという特殊性に関する調査・分析結果を説明した。「SWの収益性」に関しては、(1)純利益の8割程度は市場競争にさらされない事業から生じている(2)競争市場下にある事業の売上規模は小さいものの営業利益率は7〜10%であることから高水準なパフォーマンスを発揮している(3)SWの収益の源泉は、エネルギー小売(約10〜15%)と、グリッドビジネス(約40〜50%)との二分野が大きいという3点が指摘された。「SWシステム」としての特殊性は4つにまとめたが、主に(1)基本的なSWの法体制は民間企業の会社法に基づいており、それに対して自治体が事業を規制する形で制限を利かしている(2)民間企業としての経営の自由度は独立しているのだが、実態としては自治体が影響力を多分に発揮できているとも言える(3)公益的事業体ではあるもののアグレッシブな経営が実現している(4)複数インフラ事業を抱えるシナジー効果として最も大きいと考えられるのは大企業としての生産性向上である、などの発見があった。最後に日本版SWの理想像を構築して、理想像に関するアドバイスを提言した。

pdf発表資料(5.31MB)