Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

本講座(第2期)は、2024年3月31日をもって終了いたしました。

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2020年8月31日(月)の部門B研究会 議事録

2020年08月31日(月)14時45分から20時
於:Zoom会議室(オンライン)

 上記の通りオンラインで開催された今回の研究会では、京都大学大学院経済学研究科再生可能エネルギー経済学講座特任教授の加藤修一先生より特別講演をいただきました。続いて、京都産業大学の宮永健太郎先生、佐賀大学の荻野亮吾先生、シン・エナジー株式会社代表取締役社長の乾正博様よりご報告いただきました。以下は、宮永先生のご報告を除きまして、その要約記録です。

EUグリーンディール・「2050年気候中立」を巡る政策―グリーンファイナンスのタクソノミー(分類法)の背景・意義・現況

加藤修一先生

 本講演は、EUのタクソノミーに焦点を当てながら、グリーンファイナンスの動きとその課題を論じたものであった。現在、気候変動問題に取り組む各種ターゲットに比して投資額が不足している投資ギャップが生じており、どのようにファイナンスを実現するかが課題となっている。確かにESG投資やグリーンボンド発行等は拡大傾向にあるが、そのなかでグリーンウォッシングの蔓延や評価基準の乱立、投資家の混乱が生じていることが課題としてある。それら諸課題に対してEUは投資促進に向けたインセンティブとして基準を明確化するためのタクソノミーの検討・導入を実現しようとしている。具体的には、金融市場参加者・大企業・EUと加盟国を対象として、以下の4項目を全て満たす経済活動を環境面でサステイナブルと規定する。その項目とは、「6つの環境目的の1つ以上に実質的に貢献」「6つの環境目的のいずれにも重大な害とならない(DNSH原則)」「最低安全策に準拠している」「専門的選定基準を満たす」の4つである。ここでいう「6つの環境目的」とは、「気候変動の緩和」「気候変動の適応」「水資源と海洋資源の持続可能な利用と保全」「廃棄物抑制や再生資源の利用を増やすような循環経済への移行」「汚染防止・管理」「生物多様性及び健全な生態系の保全及び悪化した生態系の回復」である。これによって投資家は投資判断のための有益な情報を得ることができるようになるが、それが他のアクションプランの諸項目とどのように相互に関係し、グリーンファイナンスの拡大を実現させるかが今後注目される。

pdf発表資料(7.68MB)

長野県飯田市のエネルギー自治に関わる地域ガバナンスの構造―地域自治組織の制度的特徴と公民館の教育機能との関連―

荻野亮吾先生

 本報告は、長野県飯田市の6地区をケースとして、自治体間・内比較と公民館の機能に注目して、地域のガバナンスの構造を理解することを目的としている。「コミュニティの制度化」の代表例である「地域自治区」を取り上げると、導入数上位3つの新潟県上越市と宮崎県宮崎市と飯田市を比較して、飯田市は自治活動組織からの選出委員から構成、まちづくり委員会による交付金配分、委員会制度、自治振興センターと公民館による中間支援が挙げられる。より具体的には、分析対象である6地区それぞれ独自な組織構成、社会経済状況、中間支援の機能、事業運営が分析された。続いて、特徴的である飯田市の公民館体制における公民館の教育機能について、地域の各種団体から公民館の分間組織へと委員などを選任する制度になっており、人材育成・団体育成・関係形成に重要な役割を果たしていることが明らかにされた。今後の研究課題として、地域自治組織導入による公民館の役割の変化、特に学校との関係形成、地区の課題に取り組む団体の育成が挙げられた。

pdf発表資料(1.84MB)

人類の歴史からエネルギーを考える

乾正博様

 本報告は、エネルギーを議論するための前提について検討し、地域新電力、なかでもバイオマスについて考察することを目的とする。歴史的に、木から石炭、石油、ガスへとエネルギー源の重点を推移してきたなかで、人類は森林破壊を拡大させてきた。ではどのような未来を実現するかを考えるにあたって、日本に焦点を当てると、日本は化石燃料を多く輸入しており、エネルギー自給率を下げてきた歴史がある。このような背景から地域新電力に焦点を当て、「自治体出資型」と「民間主導型」の地域エネルギー会社設立それぞれについて検討を加えた。またバイオマス資源、特に森林に着目すると、二酸化炭素の吸収・固着という点から、その利活用は望ましい。蓄積量が過去最大となっている現在、一方で伐採量が相対的に過少である日本は、同様の環境を有しているオーストラリアと比較しても、ポテンシャルは高いとされる。既存の森林資源のエネルギー利用の状況では、熱の形態での損失が大きいという課題がある。日本で設立されたバイオマス発電はほぼ外材であり、ガス化発電が発展途上にある。そして熱利用は小型が適しているといえ、同じ熱量に対しては灯油よりも木質資源が安く可能であり、どのように事業としてそれを実現していくのかが、事業モデルとして明らかにする必要があり、シンエナジーはその一つのモデルを構築・提案し、実施している。

pdf発表資料(8.78MB)