TOP > 公開研究会 > 第2回 再エネ講座公開研究会(第2回【部門C】)『カーボンプライシングの制度設計とその経済影響を考える』
2021年9月27日(月)部門C研究会 議事録
2021年09月27日(月)
於:Zoomオンライン会議
2021年09月27日(月)17時〜20時、再生可能エネルギー経済学講座部門Cの研究会が、オンライン会議にて開催されました。今回は、公開研究会という形で行いました。前半は名城大学の李秀澈先生、株式会社価値総合研究所の山崎清様、国立環境研究所の増井利彦様よりご報告いただきました。後半はパネリストの方々との議論と一般聴衆の方々への質問応答が行われました。
日本の2050年カーボンニュートラルに向けた脱炭素政策デザインと経済及び電源構成への影響
- E3MEグローバルマクロ計量経済モデルを用いた分析 -
李 秀澈 先生
本講演は、E3ME(Energy-Environment-Economy Macro Econometrics)モデルを用いて、2050年日本のカーボンニュートラルの達成が日本経済(GDP、雇用、貿易などのマクロ経済)及び電源構成に与える影響を推定することを目的とした。
まずは欧米と日中韓を含め、世界主要国のカーボンニュートラルの実施状況を紹介した。特に、日本政府の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」における部門別2050年カーボンニュートラルの勘定が詳しく説明された。
次に、研究で使っているE3MEモデルの概要、特徴、基本構造、メカニズムに言及した。
そして、カーボンニュートラルに向けた低・脱炭素政策パッケージに関する設定を詳説した。ベースラインシナリオは日本エネルギー経済研究所(IEEJ)の2020年版OUTLOOK2021のレファレンスシナリオを採用したが、カーボンプライシング(CP)、規制、補助金などの政策パッケージをモデルに追加して考慮しなければならない。
最後に、モデルの推定結果により、2050年カーボンニュートラルが日本のマクロ経済及び電源構成に与える影響を予測した。結論として、低・脱炭素政策パッケージからの影響を検討しても、2050年にカーボンニュートラルの達成と経済良好の両立が可能だと確認された。その主な要因として、(1)発電部門の再生可能エネルギーの投資拡大とともに経済各部門で多様な低・脱炭素投資需要の拡大。(2)雇用増加による民間消費需要の増加。(3)化石エネルギー輸入の大幅な縮小による貿易バランスの向上が挙げられた。また、ベースラインシナリオと比較して、カーボンニュートラル政策シナリオによる2050年電源構成予測では、再生可能エネルギーの割合が大幅に増加することがわかった。
その他にも、いくつかの今後の研究課題が挙げられた。
カーボンプライシングによる経済とCO2排出量への影響の試算
山崎 清 様
本報告は、日本のカーボンプライシング(CP)の導入が日本経済に与える影響を説明することが目的であった。
まずは分析で使った三つのモデル(均衡価格モデル、CGEモデル、エネルギー経済モデル)の各特徴を示した。
次に、モデルの設定状況に言及した。ベスラインシナリオは「労働力人口」、「エネルギー効率性」、「企業の生産技術」という三つの点から設定した。同時に、CGEモデルとエネルギー経済モデルもいくつかのシナリオを制定した。CGEモデルでは、ベースラインにおけるエネルギー効率に加えて、消費者の選好と企業の生産技術に対して①標準シナリオ(CP導入)と②構造転換シナリオ(CP導入+経済構造の転換)の二つのシナリオを想定した。また、エネルギー経済モデルでは、エネルギー効率性について①標準シナリオ(CP導入)と②エネルギー効率化進展シナリオ(CP導入+エネルギー効率化の進展)の二つのシナリオを想定した。また、CPの設定は石油石炭税への上乗せで評価して、上乗せ幅が1000円、3000円、5000円、10000円の4つのパターンが含む。他に、税収の使途も①政府支出に全額活用と②政府支出と、民間設備投資に折半して活用の二つの種類に分けられて設定した。
そして、ベースライン試算、CGEモデルによる試算、エネルギー経済モデルによる試算結果が報告された。
最後に、試算結果から①税収の活用方法で経済への影響が異なりうると②経済構造の転換や省エネ効果によって、さらにCO2排出量が削減される可能性があるの示唆を詳説して終わりとした。
AIMを用いた炭素税によるCO2排出削減効果の試算
増井 利彦 様
本報告は、日本における炭素税の導入がCO2排出削減効果や経済への影響を報告することが目的とした。
まず、分析で使っているAIMモデル(アジア太平洋統合モデル)の概要、基本構成、部門および財・サービスの区分を説明して、AIMモデルにおける気候変動緩和策の設定を紹介した。
そして、本試算における将来の想定も詳説した。
最後に、分析結果が報告された。要約すると、(1)カーボンプライシング(CP)として炭素税を導入する場合、CO2・GHG排出削減量は省エネやエネルギーを転換する機器の導入の拡大により、経年的に増加する。2030年のGDPへの影響は、炭素税を導入しない場合と比較して10289円/tCO2においてもマイナス1%未満であり、経済成長は維持される。(2)仮に炭素税のような政策により将来の対策の予見可能性が確保されて、それを契機として省エネ機器等の導入が促進されれば、CO2・GHG排出削減量は拡大する。またエネルギー効率が高まり、エネルギー費用の低下をもたらす結果となり、長期的には経済成長につながる。(3)税収を省エネ機器等の追加費用の補助に使用すると、これらの機器の普及がさらに促進され、CO2・GHG排出削減量はさらに増加して、生産投資とともに省エネ機器の普及がさらに加速して、2030年における経済的な効果もより顕著になる。(4)炭素税の導入は、家計消費に対してマイナスの影響をもたらすが、省エネ機器等の導入によりロスが回復して、税収が追加投資分の補助に使用される場合には10289円/tCO2においてもなりゆきと同等の家計消費となることが明らかになった。
1.主催
京都大学再生可能エネルギー経済学講座
2.開催日時
9月27日(月)17:00~20:00 <オンライン>
事前予約が必要です。
後記のURLからお申込みください。
3.プログラム
17:00-17:05(5分)諸富 徹(京都大学)挨拶
17:05-17:30(25分)李 秀澈(名城大学)「日本の2050年カーボンニュートラルに向けた脱炭素政策デザインと経済及び電源構成への影響-E3MEグローバルマクロ計量経済モデルを用いた分析ー」
pdf資料(李)(3.68MB)
httpNo.32 日本の 2050 年カーボンニュートラルの実現がエネルギー構成及びマクロ経済へ与える影響分析
httpNo.246 2050年カーボンニュートラル達成は日本の経済とエネルギーミックスにどのような影響をもたらすのか。
http経済成長への影響について検証する カーボンプライシングについて考える 03 | EnergyShift (energy-shift.com)
17:30-17:35(5分)質疑応答:研究会メンバー(パネリスト)による質問受付
17:35-18:00(25分)山崎 清(株式会社価値総合研究所)「カーボンプライシングによる経済とCO2排出量への影響の試算」
http株式会社価値総合研究所提出資料「カーボンプライシングの経済影響等に関する分析結果について」
18:00-18:05(5分)質疑応答:研究会メンバー(パネリスト)による質問受付
18:05-18:30(25分)増井 利彦(国立環境研究所) 「AIMを用いた炭素税によるCO2排出削減効果の試算」
pdf資料(増井)(1.45MB)
http国立環境研究所提出資料「AIM/CGE [Japan]を用いたカーボンプラインシングの定量化」
18:30-18:35(5分)質疑応答:研究会メンバー(パネリスト)による質問受付
18:35-18:40(5分)休憩
18:40-19:00(20分) 諸富 徹(京都大学)「共通の論点について」
19:00-19:30(30分)ディスカッション前半
:研究会メンバー(パネリスト)によるディスカッション
19:30-20:00(30分)ディスカッション後半
:一般聴衆の方々の質問にお答えするディスカッション
※終了時刻は若干前後する場合がございます。
4.参加定員
約300名様
※セミナーの録画および録音等はご遠慮いただいております。
5.参加費
無料
※事前のお申込みが必要です。
6.参加のお申込みについて
※ご参加をご希望される場合は、下部URLよりお申込みいただきますようお願い申し上げます。
http参加申し込み
7.セミナー使用システムについて
ZOOMウェビナーを使用してのオンラインシンポジウムとなります。
事前にご登録やPCにシステムをダウンロードしてない場合でも、主催者側からお送りするURLにアクセスいただくことでご参加いただけます。
※スマートフォン・タブレットからはアプリをダウンロードしていただく必要がございます。
※通信料はご参加者さまご負担となりますので、Wi-Fi環境下でのご参加をおすすめします。
8.その他・開催進行について
1.前半の質問受付
上記【プログラム】の休憩前までの時間(前半)では参加者の皆様から、それぞれの発表に対する確認事項等の簡単な質問のみ受け付けます。
【参加者の皆様からの質問】
ご質問はZoomの『質疑応答(Q&A)』を使って受け付けますので、休憩前までに「●●先生への質問」と明記し、『Q&A』を使って質問事項をご記入ください。適宜、登壇者による書き込みにより、回答いたします。
2.後半の質問受付
上記【プログラム】の休憩後の時間(後半)では、各発表の中身に関するディスカッションに資する質問を受け付けます。
【参加者の皆様からの質問】
Zoomの『質疑応答(Q&A)』へ、休憩後の入力をお願いします。後半のディスカッションにて、モデレーターの諸富が適宜選択して質問を読み上げ、議論、回答させて頂きます。時間制約により、すべての質問を取り上げることができない場合があること、予めご容赦頂ければ幸いです。
※報告資料について
開催当日の12:00(正午)以降、本ページ、ならびに以下リンク先に順次掲載させていただきます。
httphttps://drive.google.com/drive/folders/1vDFIBUA_5H4roWhUrF5ivVP7Jd9cUcZN?usp=sharing
なお、登壇者による資料は一部非公開となり、すべての報告資料が公開されるわけではない点、予めご了承ください。
※本研究会は録画され、公開研究会終了後に再エネ講座HPでの公開を予定しております。
ご不明な点につきましては下記までお問合せください。
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京都大学大学院 経済学研究科再生可能エネルギー経済学講座
E-mail:ree.kyoto.u@gmail.com
HP: http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/stage2/top/
〒606-8501 京都市左京区吉田本町
TEL:075-753-3474
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