農業政策論 (公共政策大学院)
政策論基礎 (大学院基礎科目)




2011年度 農業政策論

科目名: 農業政策論/Agricultural Policy
(単位数) 2
(開講期) 後期
(授業形態) 演習
(曜日・時限) 隔週木曜日1-2限
(テキスト) 『農業と経済』各号

(概要)

 日本農業はとくに1980年代半ば以降、「国際競争力」や「効率化」の名のもとに、その生産基盤を大きく掘り崩されてきた。極端なまでに低い食料自給率、近年の食の安全性をめぐる混乱、そして農村・山間部の疲弊は、その必然的な帰結である。農業は本来、安定した食料供給という重要な経済価値の担い手であるだけでなく、地域経済の活性化や高齢者・女性の雇用創出をもたらし、国土・水・生物多様性・アメニティの保全と涵養といった生態環境価値、さらに社会的・文化的価値を生み出す「多元的価値産業」であるとされる。そこでは、市場原理だけでは適切に処理することのできない外部経済・外部不経済への視点が欠かせない。農業経済学が一般経済学諸理論の単なる応用問題ではありえず、つねにフィールド研究や政策研究との接合を要求されてきたのはそのためである。そして実際、農業政策がつねに「農業保護」を基本としてきたのも、WTOやFTA/EPAを通じて農産物貿易の「自由化」を推進する米国等の先進輸出国自身が国内では手厚い農業保護政策を続けているのも、農業問題を経済(資本)の論理だけで処理しきれないことの傍証である。
 本講義では、農業問題(その学問的反映としての農業経済論および農業政策論)の基礎知識を有しない受講生が多いことを想定し、本格的な学術文献を取り上げることはせず、まずは農業・食料をとりまく諸問題への知的関心をもってもらうことに心がける。農業政策に限らず、公共政策は理論から出発するのではなく、現実から出発するべきであると考えるからである。
 具体的には、農業経済/政策論の研究者・学習者のみならず、農水省関係者、自治体農政部、農協関係者などに広く読まれている月刊誌『農業と経済』をテキストに取り上げ、受講者が興味をもったテーマを取捨選択しながら輪読し、適宜補足的な解説を加えながら、参加者全員で議論し、認識を深めていく。
  • 10/06 ガイダンス...1限のみ
  • 10/13 TPP(環太平洋経済連携協定)の背景と問題点:講義と討論
  • 10/27 「農政の地方分権を興す」2010年4月号
  • 11/17 「食品をめぐる人と産業の結びつき」2011年9月号
  • 12/08 「農業でつくる生物多様性」2010年9月号
  • 12/22 「期待される大学の地域貢献:地域連携・産学連携」2011年2月臨増
  • 01/12 「生き残りをつかむ集落支援」2010年10月号
  • 01/11 総括討論とレポート課題の提示...1限のみ


2011年度 政策論基礎

科目名: 政策論基礎A/Introduction to Economic Policy A
(単位数) 2
(開講期) 前期
(曜日・時限) 水曜日3限
(テーマ) 競争力とサスティナビリティへの政策論的アプローチ
(備考) 本講義は、経済政策とそれに密接に関連する分野に関し、研究上の基礎となる素養・基礎知識を、基本文献の熟読とそれに基づく討論によって習得することを目的とする。本年度は「競争力・サステナビリティへの政策論的アプローチ」を緩やかな統一主題としたうえで、久野・塩地・植田・黒澤の4名の教員がオムニバス形式によって担当する。
(担当する日程) 4/20、4/27、5/11
(テキスト) 『農業と経済』2011年5月臨増「急浮上するTPPで日本農業はどうなる」を予定
(概要) 個別テーマ「WTO農業交渉とTPP協定の政治経済学」--- WTO農業交渉が行き詰まる中で急展開するFTA/EPA政策の背景にある国内外の政治経済的利害関係とイデオロギー状況について、とくにTPP協定を題材に検証する。
  • 4/20 
  • 4/27 
  • 5/11 
(参考)
 【塩地】「新興国における自動車産業保護・育成政策」
 【植田】「地球温暖化防止レジーム:各国環境・エネルギー・産業政策と国際制度」
 【黒澤】「日欧米の産業政策体系と産業競争力動態」
 

2009年度 農業政策論

科目名: 農業政策論/Agricultural Policy
(単位数) 2
(開講期) 後期
(授業形態) 演習
(曜日・時限) 金曜日2限
(テキスト) 『農業と経済』各号
(概要)
  • 10/16 「どこへ向かう世界の農業政策」2009年6月号
  • 10/23 「農商工連携:農業・農村の未来を拓くために」2009年1/2月号
  • 11/06 「農村定住をささえるスモールビジネス」2008年11月号
  • 11/27 「食品汚染事故:問われる危機管理」2008年9月号/「米の信頼は確保できるか」2009年4月号
  • 12/04 「食料調達の裏側:CSRブームを問う」2008年7月号
  • 12/11 『緑の帝国』(政策論基礎と合同)
  • 12/18 同上
  • 01/08 同上
  • 01/15 同上
  • 01/22 「都市に農業をとりもどす」2009年5月号


2009年度 政策論基礎

科目名: 政策論基礎A/Introduction to Economic Policy A
(単位数) 2
(開講期) 後期
(曜日・時限) 金曜日2限
(テーマ) 国際的な経済連関への多様なアプローチ
(備考) この授業は岩本武和教授(国際金融論)、黒澤隆文准教授(工業経済論)とのリレー講義で、各4回の授業を担当する。
(担当する日程) 12/4、12/11、12/18、1/8 (農業政策論と合同)
(テキスト) マイケル・ゴールドマン『緑の帝国: 世界銀行とグリーン・ネオリベラリズム』京都大学学術出版会、2008年
(概要)
 市場における経済活動は、たえず国家、国際機関、企業、産業団体、市民社会組織等の利害関係主体による物質的・非物質的な影響力の行使を通じた調整過程=政治過程によって媒介されなければならない。そこで本講義では、社会過程や政治過程の経済学的分析ではなく、経済過程の社会学的・政治学的分析の手法と視点を検討する。テキストは、世界銀行の開発援助を開発の「知」の生産、普及、消費という社会的過程においてとらえると同時に、その過程に関与する利害関係主体の諸関係を、フーコーの言説分析とグラムシのヘゲモニー論を援用しながら明らかにしたものである。
  • 12/11 第1章 世界銀行を理解する
  • 12/18 第2章 世界銀行の台頭
  • 01/08 第3章 知識の生産:世界銀行のグリーンサイエンス
  • 01/15 第4章 あたらしい学問の誕生:環境知識の生産/第5章 エコ統治性と環境国家の生成


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