京都大学 大学院経済学研究科・経済学部

研究科長・学部長あいさつ

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経済学研究科長 経済学部長
依田 高典

京都の四季

ここ千年の都・京都にて、京都大学経済学部・大学院経済学研究科へ、皆さまをお迎えできたことを心から嬉しく思います。京都の四季は美しいです。春は洛東・哲学の道を逍遥し、夏は洛北・貴船で涼を楽しみ、秋は洛南・醍醐で月を愛で、冬は洛西・嵐山で雪を踏む。皆さまにとって、とても大切な青春の1ページの始まりです。時を惜しんで、学問に励むと共に、良き思い出を作ってください。京都大学経済学部は、2019年に学部創立100周年を迎えた、日本最古の経済学部の一つです。京都大学は自由の学府として、何よりも学生自身の自学自習の精神を尊重してきました。好きこそものの上手なりけれと、利休居士は遺しています。人生は長いです。好きな人生の主題を見つけて下さい。

 

思い出

私が京都大学経済学部に入学したのは1985年春でした。よく覚えています。入学式の前日に茶話会が開催され、学部長、研究所長を差し置いて、新入り教員だからと謙遜しつつ、口を開くや、独演を止めない御仁がいました。「法学部でなくて経済学部で良かった。経済学ほど面白い学問はない。社会に応えられる学問を学んで欲しい」。さすがに大学というところは、怪人物のいるところだと感心しました。
ゼミ選択の折りに、その怪人物の名前が伊東光晴であることを知るや、この御仁に勝とうと、敢然と伊東ゼミの門を叩き、毎週のゼミの度に論争を挑みました。勝てませんでした。この御仁は挑戦的な若者を愛し、卒業の秋に就職の挨拶にうかがった折り、長嘆息して「惜しいねえ」と言いました。その一言で、私は人生の主題を悟り、翌年の大学院進学を決意しました。人の出会いは人生を変えます。

 

2つの主題

さて、私は2021年春に学部長・研究科長に就任しました。人生は短いです。多くのことを望みません。
私は2つの主題に注力したいと思います。

第一の主題は、文理融合教育の推進です。経済学ほど面白い学問はありません。今、経済学はいわゆる人工知能のようなデータサイエンスと融合し、新しい実証的学問として、世界を変えつつあります。京都大学経済学部はいち早く理系入試を取り入れ、文理融合教育を目指してきました。これからも全学のセンター・研究科と協力して、経済学とデータサイエンスの融合教育に取組んでいきます。文系学生は理系の科学技術知識を、理系学生は文系の文化歴史芸術を身につけて下さい。日本は今、国際競争の苦境の中で呻吟しています。従来型の狭い知識人では、これからの荒波を乗り越えられません。皆さまは文理の枠を飛び越えて、新しい時代の波を作って下さい。

第二の主題は、国際的研究力の強化です。国民は自由の学府・京都大学の卓越した研究力にこそ心から期待しています。湯川秀樹先生のように、福井謙一先生のように、山中伸弥先生のように、私たちは卓越した世界的研究で、社会に応えたいと思います。そのためには、教員の働き方の革新と役割の分担が必要です。チームとして、経済学研究科の研究力を強化しなければなりません。そして、大学院生の皆さまこそ、その輪の中心に陣取り、従来型の学問体系に果敢に挑戦しなければなりません。私はその環境整備のために、力を尽くしたいと思います。皆さまは国境の枠を飛び越えて、新しい学問の波を作ってください。

 

京都の四季、再び

人生は長いようで短いです。掻痒として焦ることもあるでしょう。人生は短いようで長いです。汪洋として戸惑うこともあるでしょう。私たちは皆さまに焦る自由、戸惑う自由を与えたいと思います。
そうした時には、春に洛東・哲学の道を逍遥し、夏に洛北・貴船で涼をとり、秋に洛南・醍醐で月を愛で、冬に洛西・嵐山で雪を踏む。京都の美しい四季を愛でて下さい。