2011年3月の東日本大震災と、それにともなう福島第一原発事故を契機とし、これまで、(1)分散型電源に基づく新しい電力システムの設計と、(2)それを地域経済の再生につなげるための条件、を明らかにするための研究に取り組んできました。
その結果、(1)については、既存の電力インフラを活用しながら法的・経済的条件を整えれば、再生可能エネルギー(以下、再エネと略す)を中心とする分散型電源を、一定比率まで導入することは可能なこと、長期的には、分散型電源の大量導入に相応しい電力系統の設計図を描いて着実な投資を行い、費用負担ルールを整備すれば、一層多くの分散型電源導入も可能なことが分かってきました。
一方、(2)については、海外では主としてドイツの現地調査を通じて、@分散型電源の担い手が、実は大手電力会社ではなく、協同組合・個人事業家・中小企業などによる小規模事業体であり、彼らを通じて地域に所得と雇用の波及効果がもたらされていること、A再エネの固定価格買取制度によって、再エネとコジェネを中心に分散型電源/熱源が増え、それらのネットワーク化や、電力・ガス・熱源を融合した地域的最適エネルギー利用が課題になっていること、Bこれらを推進するために、市営電力会社が配電網を買い戻す「再公有化」がドイツ全土で進行していることが明らかになってきました。