京都大学

再エネ大量導入を前提とした分散型電力システムの設計と
地域的な経済波及効果に関する研究プロジェクト

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サントリー文化財団研究助成イベント情報

研究代表からのご挨拶

プロジェクト全体の研究概要

【部門A】再エネ大量導入を前提とした電力系統の設計、運用、投資に関する研究

【部門B】再エネの地域経済波及効果の定量評価、事業主体、地域ガバナンスに関する研究

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サントリー文化財団研究助成 イベント情報

サントリー文化財団研究助成プロジェクト 第4回研究会
第3回研究会
第3回研究会
2017年7月1日(土)、於:京都大学

 サントリー文化財団研究助成プロジェクト第4回研究会のシンポジウム「再エネによる地域の持続可能な発展〜その地域付加価値と事業の担い手を考える〜」が、2017年7月1日(土)に京都大学にて開催されました。

 今回の研究会では、地域主導の再生可能エネルギーに取り組む実践者や研究者から合計9名による講演が行われました。セッションは、基本講演1名に始まり、@地域新電力、Aバイオマス、B地熱、C小水力からそれぞれ2名に報告頂きました。

 まずは、基調講演としてラウパッハ先生(立命館大学)から「地域の環境エネルギー政策と地域経済効果〜長野県の事例からの考察〜」について報告頂いた。
 ラウパッハ先生からは、地域経済付加価値モデルの概要と長野県に地域付加価値分析を実装した事例について紹介頂きました。地域付加価値分析から得られる考察として、@具体的な政策目標設定の重要性、A横断的な責任体制の構築、Bステークホルダーの動員、C都市公社のリスクと可能性、D公共性と公益性の強調を挙げました。

 次に、地域新電力をテーマに、みやまスマートエネルギー株式会社の磯部さんと京都大学の稲垣さんから地域新電力の取り組みと研究について報告頂きました。

 磯部さんからは、みやまスマートエネルギーの取り組みと、事業を通して得た知見と考察について紹介頂きました。
 取り組みを通して挙げられる課題は、@電力需給オペレーションの内製化、A経営安定基盤づくり、B自治体とうまく共存した経営体制、C資金繰りの4つが挙げられます。
 今後の展開としては、@再エネ比率の拡大、A全国自治体との再エネ融通の連携に取り組んでいる。最終的には、電力データを活かした生活カルテを利用したデータビジネスの展開で、地域主導による幸せなみやま市を目指す。

 稲垣さんからは、新電力事業を取り巻く環境と、自治体間連携の有効性に関する考察について紹介頂きました。
 現在、@インバランスリスクの低下、AFIT特例による再エネ発電量予測の不要、B電力市場価格の安定、C新電力業務に必要な需給管理システムの価格低下など、制度と市場的な背景から、小規模になりがちな地域新電力の追い風になっている。
 3つの地域新電力モデルを想定して連携の有効性を検証した結果、@地域新電力間の連携は収益の押し上げ効果がある、A需要規模が小さい地域新電力による連携も事業性が上がる、Bバイオマスのようなベース電源を所有する地域電力とと太陽光発電を所有する地域新電力との電力融通は効果的と出た。
 今後の研究の展望としては、本モデルの精度向上と、地域sん電力がもたらす地域経済波及効果について定量的に評価したい。

 次に、バイオマスをテーマに、北海道下川町の高橋さんと京都大学の小川さんから下川町におけるバイオマスの取り組みとその経済効果の研究について報告頂きました。

 高橋さんからは、下川町で計画している地域熱供給について報告頂きました。
 現在下川町では、1760kW木質バイオガス発電と1100kW熱供給を整備した地域熱供給を推進している。また、下川町役場の担当部署が担っていた事業を、シュタットベルケ機能を持つ下川地域熱供給会社に任せる。下川町、町内事業者、町民のそれぞれの視点から、森林バイオマス熱電併給事業によるメリットとデメリットを挙げました(資料参照)。
 最終的に、バイオマス熱電併給事業が整備されたあとは、住居や熱利用事業に対する安価な熱供給による新たな付加価値を目指す。

 小川さんからは、地域付加価値分析の紹介の後、下川町を事例に森林バイオマス熱電供給事業(CHP事業)の地域付加価値分析について報告を頂きました。
 今回の分析では、発電規模・出資者・総事業費・事業スキームなど下川町の実際の計画に従って試算した。CHP事業によって、事業者の利益が最も大きいが、税収と所得も一定の付加価値が配分されていることを示した。事業運営会社が町内に存在すれば、法人住民税も税収に加算される。また、試算の結果、インフラ整備後の事業運営段階で年間平均で1800万円の町税収入の増加が試算された。

 次に、地熱をテーマに、地熱情報研究所の江原先生と京都大学の山東さんから地熱発電の状況とと地域への経済的貢献について報告頂きました。

 江原先生からは、地熱発電政策の経緯と現状について説明頂いた後、地熱発電の推進に関する研究会で取り扱われた経済評価の結果について紹介頂きました。
 経済効果の評価では、大規模の場合、地域への効果を大きするために一定の還元を考慮する必要がある。その際に、従来の域外民間資本による地熱開発モデルでは地域付加価値があまり見込まれないため、安定稼働段階に入ってから地域の部分的なオーナーシップへの取り組みなど考慮する必要性を挙げました。
 大規模地熱発電が地域でより受け入れられるようにするためには、開発時点から地域資本が参加できるスキームを作り、地元にも経済的な恩恵を生む必要がある。また、地域付加価値の観点から見て、地熱発電の温排水を使う熱利用事業を促進することも地域貢献には欠かせない。

 山東さんからは、地熱発電における地域付加価値分析(地熱RVA)の紹介と、地元出資率が付加価値に与える影響について報告頂きました。
 新たに作成した地熱発電における地域付加価値分析の作成方法と試算結果について試算した。そこから得られた地熱発電の特徴は、地域に落ちるお金の中から発電事業者が得る事業者の税引後利潤の割合が大きいため、地元出資率を上げないと地域付加価値額はそこまで反映されないことがわった。
 そこで、地元出資率の変化が与える地熱RVAの影響を比較検証した。さらに、キャピタルリサイクリングモデルを参考にし、リスクの高い初期投資段階時点での地元出資を避けて安定段階で投資する場合の試算検証を行った。その結果、投資時期が遅れても地元出資率を上げれば地域付加価値に反映されることがわかった。
 今後の課題としては、地域付加価値に影響を与えると思われる発電後の温排水を利用した熱利用事業を併せた地域付加価値分析が求められる。

 最後に、小水力発電をテーマに、地域小水力発電株式会社の古谷さんと京都大学の井上さんから、高知と高山での取り組みについて紹介頂きました。

 古谷さんから、土佐山高川区における小水力発電株式会社の設立までについて、地元での裏話を交えながら報告頂きました。
 古谷さんの地域小水力発電株式会社は、開発と設計(通称CHE)を担い、土佐山高川区で設立する一般社団法人との共同出資の法人を計画した。一般社団法人土佐山高山区は、地域住民の有志で出資するために設立した法人で、発電から得た収益で、地域の神社を修繕することを目的とした。
 計画から4年かけて、住民出資の小水力発電事業の形ができてきた。今後は、発電所に一部出資する一般社団法人が地域の合意形成と地域振興に携わる

 井上さんから、岐阜県高山市における木質バイオマスと小水力と地域金融に関して報告頂きました。
 固定価格買取制度(FIT)施行後、これまで消極的だった金融機関は再エネ融資を増やした。しかし、そのあとの系統接続保留問題以降、融資判断が慎重になった上、出力制御の対象となった発電事業についてはプロジェクトファイナンスとして実施できないケースもある。
 今後再エネへの地域ファイナンスを増やすためには、事業主体側としては、条件を満たせば地域内のファイナンスから資金調達が可能であり、ハイブリッド融資によって内部資金の少ない地域企業でも資金調達可能であることが検討できた。また、ファイナンスの役割について地域活性化のためには、事業構築段階と運営段階においてともに体験することで理解を深めて、地域の需要を取りこぼさないためにリレーションバンキングサイクルが重要であることもわかった。

 研究会には全国から33名が参加しました。各セッションの電源別でそれぞれ特色のあるお話をもとに、討論が活発に行われ、参加者の中で現状の認識の共有と今後の課題や改革の方向性を確認する上で、きわめて有益な研究会となりました。
 今回の研究会でサントリー文化財団の研究会は最後になりますが、これまで4回の内容の濃い研究会を通して、同じ問題意識と志を持つ人たち同士でつながることができました。
 今後も引き続き、研究会で得た知見とつながりをもとに、再エネによる地域の持続可能な発展を目指します。この場を借りて、サントリー文化財団による研究助成に対して感謝申し上げます。

サントリー最終研究会 プログラム

サントリー最終研究会 プログラム

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ラウパッハ先生(立命館大学)

ラウパッハ先生(立命館大学)

地域の環境エネルギー政策と地域経済効果
〜長野県の事例からの考察〜

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磯部さん(みやまスマートエネルギー株式会社)

磯部さん(みやまスマートエネルギー株式会社)

自治体主導地域エネルギー会社の事業担い手形態について

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稲垣さん(京都大学)

稲垣さん(京都大学)

地域新電力事業おける自治体間連携の有効性に関する考察

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高橋さん(下川町)

高橋さん(下川町)

下川森林バイオマス熱電併給事業の可能性と将来の事業体制について

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小川さん(京都大学)

小川さん(京都大学)

地域付加価値分析の理論と活用
〜下川森林バイオマス熱電併給事業を例に〜

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江原先生(地熱情報研究所)

江原先生(地熱情報研究所)

最近のわが国の地熱発電の状況と地熱発電の地域への経済的貢献

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山東さん(京都大学)

山東さん(京都大学)

地域経済に貢献する地熱発電事業の形態について
〜地域経済付加価値分析から見る地熱発電の特徴から〜

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古谷さん(地域小水力発電株式会社)

古谷さん(地域小水力発電株式会社)

小水力発電事業を地区住民主体て実現する仕組み
〜高知市土佐山高川区を例に〜

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井上さん(京都大学)

井上さん(京都大学)

再生可能エネルキーと地域金融
〜岐阜県高山市ての実践を通して木質ハイオマスと小水力に焦点を当てて〜

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サントリー文化財団研究助成プロジェクト 第3回研究会
第3回研究会
第3回研究会
2017年3月18日(土)、於:京都大学

 サントリー文化財団研究助成プロジェクト第3回研究会「再生可能エネルギーによる地域再生の人文社会科学的解明、知見の国際的移転、そして理論と実践の相互作用による人的ネットワーク形成」が、2017年3月18日(土)に京都大学にて開催されました。

 今回の研究会では、地域主導の再生可能エネルギーに取り組む若手再エネ実践者研究会との共催で行われました。第一部ではFIT法改正と電力システム改革に関する政策について、第二部では政策の転換期におけるエネルギー市場について実践者の方々から報告を頂きました。


 まず、第1テーマの政策に関しては、政策担当者より、FIT改正法と電力システム改革の取り組みに関する包括的な説明と、系統制約に代表される、再エネ伸長に向けての課題の指摘が行われた。これを受けて再エネ事業家の観点から鋭いコメントがなされた。参加者との討論も含めて論点をまとめると、下記のようになる。

1)FIT改正法については、買取価格の低下に対し不満の声が聞かれず、再エネ拡大のためのコスト低減として妥当な価格水準との声が多かった。また、系統接続の権利を確保したまま実際に発電事業を開始しない未稼働案件や、送配電買い取りへの移行なども評価する声が多かった。また、FIT改正法に対し、基本的に事業者として対応できるものとの共通認識が得られた。
2)課題が多いとして議論が集中したのは、系統制約問題であった。これを解消すべく、系統増強の工事費負担金を複数の事業者で共同負担する「電源接続案件募集プロセス」については、電力会社はまじめに対応してくれているものの、うまく機能してなく、新しい系統ルールを整備するためにも、廃止した方がよいとの意見が複数出された。
3)系統制約の課題は、以下の3点であるとの共通認識が得られた。@現在は発電設備容量に基づく系統の空き容量となっており、実際に送電される電力量には空きがある。送電量が設備容量を超えるときだけ新規連系の事業者の発電設備の出力抑制をおこなえば現行設備のままでも再エネ導入が相当程度進むこと、A上位系統増強が必要であれば、それを新規連系の事業者に課すのではなく、送配電事業者がいったん増強費用を負担し、電力利用者に託送料で徴収することを基本とすべきこと、B新規の上位系統建設については、個別案件に対応するのではなく、全体の系統増強の一環として計画すべき。

 第2テーマのビジネスでは、様々な立場の事業者から、報告があった。
@買取価格低下の下でビジネスを成り立たせるために、コストダウンの取り組みについて紹介がなされた。これは、太陽光発電ビジネスのコストの日独比較で、建設工事費がとくに格差が大きい(日本が高い)と判明したことから、この部分の生産性を引き上げるにはどうすればよいかという問題意識から生まれた。具体的には、ドイツから素人でも設置可能な革新的課題を輸入、プロの施工事業者と素人の参加者が協力して工事を行うことでコストダウンを図る仕組み。初期段階の検証では、設置工事の人件費のうち10%程度の削減可能性があることがわかり、今後作業工程全体の見直しにより25%の経費削減を目指すという。
A地域での再エネ事業を展開していくうえで、すでに系統容量が軒並み各地域で0となっており、当面は自家消費型の太陽光発電、省エネ、蓄電池、熱事業など、系統制約問題に引っかからないエネルギー事業に注力していることが報告された。
Bまた収益の一部を基金に入れて地域貢献に用いていることも報告された。こうした、再エネ事業を通じた地域発展という考え方は、この若手実践者研究会の一貫した問題意識でもある。
C電力小売事業の視点から、地域新電力とは何か、そのビジネス上のリスクとは何か、それがどのようにして地域再生に寄与できるのかが分かりやすく説明された。とくに福岡県みやま市の試みが、日本における地域新電力事業のモデルとして先導的意義を持っていることが強調された。伴い、ドイツにおけるシュタットベルケ(都市公社)が再エネをはじめとするエネルギー事業に果たしている役割の重要性、そして日本でもこうしたシュタットベルケ(地域新電力)を立ち上げることの重要性、また都市間連携を進めていくことの重要性が強調された。

 研究会には、若手再エネ実践者研究会メンバー約30名が参加、全体として水準の高い、かつ熱のこもった討論が行われ、認識の共有と今後の課題や改革の方向性を確認する上で、きわめて有益な研究会となった。

研究会プログラム

研究会プログラム

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真野様

真野様

改正FIT法と自然エネルギーを取り巻く現状と課題

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自然電力株式会社 川島様

自然電力株式会社 川島様

政策へのコメント

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在ドイツ日本国大使館参事官 川又様

在ドイツ日本国大使館参事官 川又様

ドイツとの自治体連携を通じた再生可能エネルギー普及促進プロジェクト

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たまエンパワー株式会社 山川様

たまエンパワー株式会社 山川様

日本の屋根に革命を

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コミュニティエナジー株式会社 南原様

コミュニティエナジー株式会社 南原様

電力自由化後、FIT改正後の政策環境下でのビジネス

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株式会社E-konzal 榎原様

株式会社E-konzal 榎原様

FIT改正後のビジネス

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サントリー文化財団研究助成プロジェクト 第2回研究会
2016年7月16日(土)、於:京都大学

 サントリー文化財団研究助成プロジェクト第2回研究会「再生可能エネルギーによる地域再生の人文社会科学的解明、知見の国際的移転、そして理論と実践の相互作用による人的ネットワーク形成」が、2016年7月16日(土)に京都大学にて開催されました。

 今回の研究会では、自治体主導で再生可能エネルギーに取り組む福岡県みやま市・東京都・静岡県浜松市・長野県飯田市・北海道下川町・岡山県西粟倉村・岡山県真庭市の7つの地域から担当者に来て頂き報告を頂きました。

 みやま市の磯部氏からは、みやまスマートエネルギー株式会社を中心とした地域新電力の取り組みについて報告頂きました。みやま市が55%出資する新電力会社で、太陽光買取の電力買取サービスと低圧電力販売のみやまでんきを運営している。特に、HEMS事業には力を入れており、各家庭で収集したデータをもとに、高齢者の見守りサービスなんでもすっ隊など、エネルギーを通して住民のみなさんに新しい市民サービスづくりに取り組んでおります。今後は100世帯対象に自治体が配電網を所有する実証実験に取り組むとのことです。

 東京都環境公社の小島氏からは、東京都が取り組み始めた再エネ由来のFIT電気供給モデル事業について紹介頂きました。2020年までに20%の再エネ電力利用割合を目標としており、7月から東京都の2つの公共施設に電力を供給しており、気仙沼のバイオマスと調布市の太陽光発電から電力を調達しています。また、FIT共同調達と需給調整の技術支援としてみやまスマートエネルギーと協定を結び、いずれは需給調整を自分たちでできるように目指します。

 浜松新電力の平形氏からは、太陽光発電事業を利用した地域新電力事業を核としたスマートシティを目指して、NTT系企業と地元企業などと共同出資して設立した地域新電力会社について紹介頂きました。市内の太陽光発電(1.05万kW)と廃棄物発電(1500kW)から電力を調達して、しないの高圧受電中心の顧客に絞って電力を供給しております。今後もバイオマス発電や小水力発電など安定した電源を増やす予定とのことです。

 飯田市の小川氏からは、これまで太陽光中心に進めてきたエネルギー自治の取り組みについて紹介頂きました。公共施設の屋根に異例の20年の一括契約で太陽光発電を設置するなど地域振興のために再エネに取り組みました。飯田市は全国に先駆けて再エネ資源は市民の財産であると定義づけた地域環境権を制定し、再エネを通じた地域づくり事業を「公民協働事業」と位置付けて、飯田市による事業の信用補完、基金の無利子融資、助言の支援を進めました。また、上村地区では地域主導型の小水力発電にも取り組んでおり、市場メカニズムを活用して公民協働事業に取り組むことを目指すとのことです。

 下川町の高橋氏からは、現在取り組むバイオマス熱電併給事業について紹介頂きました。下川町は、循環型森林経営を理念としており、平成10年の下川産業クラスター研究会から取り組みがスタートしている。今後計画されているバイオマス熱電併給事業では、@燃料チップ供給事業、A発電事業、B熱供給事業があり、熱電併給事業でさらなるエネルギー支出の流出抑制と林業の活性化を進める。

 西粟倉村の上山氏からは、西粟倉村が目指す百年の森林構想とその取り組みについて紹介頂きました。改修工事でFIT適用になった小水力発電所「めぐみ」の他に、新たな小水力発電の事業調査などを実施している。また、西粟倉村には地域外からの移住者が起業するローカルベンチャーの事例が近年増えており、製材する森の学校や薪ボイラーの村落エナジーなど木質資源を活用したベンチャーが多く活動している。さらに、西粟倉村では、長期的な森林管理をするために、森林所有者と「長期施業管理に関する契約」を結ぶことで、長期的な森林管理をできるようにしている。今後、公共施設や農業ハウスなどに木質バイオマスを活用した地域熱供給を段階的に整備することを計画している。

 真庭市の小山氏からは、バイオマス産業杜市を目指す取り組みにについて報告頂きました。真庭におけるバイオマスの取り組みは1993年の「21世紀の真庭塾」から始まっており、主に@バイオマス発電、Aバイオマスリファイナリー、B廃棄物資源化、C産業観光に取り組んでいます。特に最近では、もともと流通団体目的だった団地をバイオマス関係に使途変更して、バイオマス発電とバイオマス集積場を整備した。バイオマス発電が始まったことで、山林所有者に500円/tの仕組みを実現しました。

みやまスマートエネルギー株式会社 磯部様

みやまスマートエネルギー株式会社 磯部様

活力ある地方創生を目指した地域新電力の挑戦
〜みやま市が取り組むエネルギー政策について〜

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東京都環境公社 小島様

東京都環境公社 小島様

再エネ由来FIT電気供給モデル事業について

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浜松新電力 平形様

浜松新電力 平形様

株式会社浜松新電力の取り組みについて

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飯田市 小川様

飯田市 小川様

エネルギー自治を目指す飯田市の地域エネルギー政策

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下川町 高橋様

下川町 高橋様

下川町森林バイオマス熱電併給事業計画

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西粟倉村 上山様

西粟倉村 上山様

再生可能エネルギー事業への取り組み
〜岡山県西粟倉村での事例紹介〜

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真庭市 小山様

真庭市 小山様

森林と共に暮らすまち
〜バイオマス産業杜市をめざして〜

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サントリー文化財団研究助成プロジェクト 第1回研究会
第1回研究会
第1回研究会
2016年4月16日(日)、於:京都大学 楽友会館

 サントリー文化財団研究助成プロジェクト第1回研究会「再生可能エネルギーによる地域再生の人文社会科学的解明、知見の国際的移転、そして理論と実践の相互作用による人的ネットワーク形成」が、2016年4月16日(日)に京都大学にて開催されました。
 
 宮永先生(滋賀県琵琶湖環境科学研究センター)からは、「社会的企業」という視点から地域分散型・地域主導型のエネルギーシステムの担い手としての組織主体やその経営のあり方についてご報告いただきました。地域分散型・地域主導型エネルギーシステムの担い手として、今後のあり方を考えるための重要なポイントとして、「法人格」「資源動員戦略」「Multi Stakeholder Governance」という3つの論点に着目されました。

 清水先生(龍谷大学)からは、地域住民の視点から地域再生につながる再生可能エネルギー発電事業のあり方、可能性、課題についてご報告いただきました。採算性や汎用性を重視する「流通エネルギー」、国家規模でエネルギーを考える「戦略エネルギー」、食・住・社会関係など様々な価値が伴う「自給エネルギー」から、地域再生に寄与する価値の実現について述べられました。

 宮永先生と清水先生のご報告に対して、成先生(中京大学)からは、再エネ分野における社会的企業と、条件不利地域におけるwellbeingに関するご討論がなされました。また、他の先生方からは再エネに適した法人格と制度や、アダプティブガバナンスに関して飯田市やタイの事例などを挙げられました。


 中山先生(京都大学)からは、ドイツにおける配電網の再公有化の動きを挙げて、電力網の地域経営の可能性についてご報告いただきました。再公有化が進んだ要因には、大手電力会社のサービスの質への不満など6つの要素を挙げられました。

 西野先生(高崎経済大学)からは、日本における戦前の電力会社を振り返って、公営電気の可能性についてご報告いただきました。現在の大手電力会社は国家総動員法で合併されるまでは、日本に731の電気事業者があり、当時は都道府県など公営が当時儲かる事業だったので、財政改善のために自治体がエネルギーに力を入れていた点に注目しました。

 中山先生と西野先生のご報告に対して、諸富先生(京都大学)からは、公社による電力事業の場合は長期的な視点と公益的な視点から再エネ導入など事業展開が可能であることと、ドイツ連邦カルテル庁が指摘した配電網の細分化に対する懸念した点について挙げ、公益性と安定した分散型殿両システムについて討論しました。また、都道府県営の配電網事業と市町村の役割に関して、米国やドイツにおける州と市町村の役割分担を参考に討論しました。

 ラウパッハ先生(立命館大学)からは、ドイツの都市公社はどう時代に対応できたのか?という視点から、欧州エネルギー市場の転換におけるドイツシュタットベルケの戦略についてご報告いただきました。都市公社は電力だけでなく、ガスや熱供給、ごみや水などインフラ系サービスの総合的供給するのが自治体公社の特徴である。ドイツの発送電分離で都市公社は消えると思われたが、法人化戦略と提携戦略で都市公社は生き残った過程を説明いただきました。

 山下先生(京都大学)からは、ハンブルクにおける発電・小売事業と配電網事業の再公有化の推進要因についてご報告いただきました。ハンブルクでは政治主導で設立されたハンブルクエネルギー(HE)と、住民投票でシュトロームネッツ(SH)の2つの再公有化の事例を挙げ、唱道連携モデルより、HEとSHの再公有化における連合資源を6つの要素(公的法的な権限、世論、情報、支持者、資金、卓越した統率力)で比較しました。

 ラウパッハ先生と山下先生のご報告に対して、千葉先生(五反田法律事務所)からは、ドイツの自治体が保有する配電網事業のコンセッション権利と電力自由化、ハンブルクにおける2つの公社の推進要因について討論しました。特に、再生可能エネルギーの住民参加の事例として、山下先生からご報告があったシュトロームネッツ公社が行った住民投票の制度について注目しました。

最後に、6人の先生方からとても参考になるご報告をいただきました。また、報告をもとにした討論はとても有益で、研究者の方だけでなく、現役の自治体職員の方々からも各地域の実例を伴ったご意見を多くいただき、多様かつ活発な議論が行われました。

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