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No.138 東電PGが公表した新運用・接続方式への期待
-日本版C&Mとの相違点-

2019年7月25日
京都大学大学院経済学研究科特任教授 山家公雄

1.東電パワーグリッドの新方式で空容量ゼロが解消

 5月17日に東京電力パワーグリッド株式会社(東電PG)は、新たな送電運用・接続ルールにて、接続申請が殺到している房総地方の再エネ開発計画に対処していく、との記者発表を行った(申込み総量は1030万kW)。従来ルールだと空容量ゼロとなり、接続には期間9~13年、事業費800~1300憶円もの送電増強工事が必要になるが、1時間毎に主要基幹ルートとなる「佐京連系」を流れる電気の量(潮流)をシミュレーションしたところ、500万kWの再エネ新規接続の前提でも、1%程度の時間と発電量を抑制するだけで済むことが分った(資料1)。

資料1. 佐京連系の想定潮流(系統制約)の試算 -再エネ500万kW追加連系のケース-
資料1. 佐京連系の想定潮流(系統制約)の試算 -再エネ500万kW追加連系のケース-
(出所)東京電力パワーグリッド㈱公表(5/17/2019)を一部加工

 この図は、時間ごとに変動する潮流の量を、大きい方から小さい方へと並べ替えたもので「デュレーションカーブ」と言われる。縦軸は想定潮流で横軸は1年間の8760時間である。左京連系の限界(運用容量)は1300~1400万kWであり、現状(試行前、下の線)の想定潮流は、左端の最大値のところ(最過酷断面)で連系の限界を若干上回る。そのため、現行ルールでは同連系は空容量ゼロとなる。再エネ追加後はカーブは少し上方に移るに留まり、最大値でも連系の限界を1%程度上回るだけとなる。

 このテーマは、5月13日の「No.136 フローベース(実潮流)の送電管理・・・東電の試み」にて既に内藤克彦特任教授により解説されている。本コラムでは、この東電ルールは、既存ルールそして空容量を増やすために弾力化した「日本版コネクト&マネージ(C&M)」とどこが違うのか、に焦点を当てて解説する。

2.日本の送電線運用・接続ルールと空容量対策

従来の系統運用・接続ルール:先着優先

 従来(現行)のルールは、通常(災害等の非常時ではない)時は送電線の容量(運用容量)を超さない(混雑しない)ように電源を接続するルールになっている。すなわち接続された電源はいつでも定格出力目一杯まで稼働できる、全てが同時に最大出力になる瞬間を想定する、最大需要時等の最も流れる用が多い(最過酷)断面を考える、それでも容量を超過しないように流通設備に余裕を持つ、等がルールの骨格を形成していた。接続済み電源には工事中や着工準備中のものも含む(原子力が多い)。さらに、1回線事故時に供給を維持できるよう、2回線のうち1回線は利用せずに待機しておく(N-1運用)。

 空容量ゼロと試算されたときは、その後に接続を申請する電源は、送電容量増強のために費用を負担するか、負担しきれずに断念するかの判断を迫られる。空容量があるうちに接続できた電源と遅れた電源とでは、競争上大きな格差が生じる。こうした状況から「先着優先」ルールと称される。

日本版コネクト&マネ-ジの概観と限界

 この超保守的とも言えるルールの下では、計算上の空容量は直ぐになくなる。再エネ電源開発意欲が大きくなる中で空容量がゼロとなり、再エネ事業者や地元自治体の開発意欲は減退し、電力ミックス目標の達成も危ぶまれるようになり、政府は「日本版コネクト&マネージ(以下C&M)」の導入を進める。これは、保守的な接続ルールを現実に即して緩和するものであり、先着優先の考え方は残る。C&Mには「想定潮流の合理化」、「N-1電制」、「ノンファーム型接続」の3種類が用意され、2018年度よりやりやすいものから順番に実行に移されている(資料2)。

資料2. 日本版コネクト&マネージのイメージ
資料2. 日本版コネクト&マネージのイメージ
(出所)電力広域的運営推進機関

 「想定潮流の合理化」は、電源が全て同時に定格容量で稼働する前提は非現実的であることから、特に柔軟運転用の火力発電や天候により変動する再エネは実態に合わせて低くする。しかし、ベースロード電源である原子力は未稼働設備を含めて定格を維持するほか、最過酷断面を前提とする考え方は残る。試算の結果全国で600万KW程度の増加が見込まれるとされた。これは、考え方からしてC&Mの象徴的な意味合いがあったと思われるが、成果は小規模だ。その理由として、全国需要の1/3を占める東電管内は増えなかったことが挙げられている。東電は既に実施済みだったのだ。東電は増えるどころかマイナスになってしまったとの話もあり、「合理化」にはいろいろなやり方があるようだ(ガイドラインを見ても専門的でよく分らない)。

 「N-1」電制は、1回線分の空容量について、緊急時に出力抑制することを前提に接続を認めるものである。しかし、接続できる設備数に制限を設ける、予想が難しいとするループ系統を除く等の制約が設けられ、出力抑制の順番は今後検討される(当面は新規を抑制)。全国で4000万kW程度の増加が見込まれるとされる。

 「ノンファーム型接続」は、既設電源をファーム接続、新設電源をノンファーム接続とした上で、運用容量と想定潮流の隙間を利用することを前提に接続を認めるものである。しかし、ファーム接続の電源が優先的に流れるので、検討する断面を増やしてもノンファーム接続の電源の出番は少ない、需要が少ない断面では新設の出番はより少ないのではないかとの声も上がる。利用できる量が不透明で(少なく)ファイナンスがつかないことが懸念され、今後の検討課題となっている。

 なお、C&Mは現状の送電容量を前提に(送電増強投資を前提とせずに)、ルールの弾力化で接続を増やそうとするものである。C&M実施後でも空容量がない場合は、従来ルールの通り増強投資やそれに伴う負担金の発生が接続の前提となる。接続を要望する事業者が複数ある場合は「募集プロセス」と称する入札手続きを経ることとなる。

3.東電PGモデルとは何か? 時々刻々の実潮流シミュレーションを行うことである

「最過酷断面」は合理化の妨げ

 ここで、もう一度東電モデルを思い出してみる。C&Mの「想定潮流の合理化」とどこが違うのか。最過酷断面で判断するか、時々刻々のきめ細かい試算をするかの違いである。最大需要発生時等の一断面で超過すると(資料1の左上)、空き容量ゼロと判定され、送電線増強を前提とした「大変な」プロセスに入る。ところが超過分がごく僅かとなると、直ちに接続できることになる。

 それでは、これは一部のメディアが称しているように「ノンファーム型接続」なのか。そもそも「ノンファーム型接続」は広域機関の複雑な説明をみてもよく分らない。「混雑時に先着の電源を優先し、新たに接続した電源を抑制する」ということは理解できるが(資料2)。東電の図は新規接続を含めた潮流曲線が描かれており、新規も殆ど稼働できることがわかる。

市場メカニズムを活用した実潮流シミュレーションが肝

 印象(操作?)の問題ともいえるが、東電ケースは「時々刻々の市場メカニズム(メリットオーダー)に基づいた需給情報をインプットしている」ことが肝である。ノンファーム型は時々刻々試算を前提としているのか不明である。少なくとも新規接続後の曲線を見せていない。ノンファーム型は新規接続の可能性は低いとみられているが、東電モデルは可能性は劇的に向上する。

 東電のデュレーションカーブ(想定潮流)をみるとファーム接続かノンファーム接続かは本質的な違いではないように見える。カーブの左端でほんの少し超過している箇所を誰が抑制するのかという問題である(資料1)。「新規接続をまずは認めて超過する分の抑制は誰かが行う」という議論になる。文字通り「コネクト&マネージ」である。公平性・効率性という観点では、欧米のように市場メカニズムを活用してコストの高い(メリットオーダーで採択されない)ものを抑制することであろう。

 以上、現時点での我が国における系統運用・接続に関するルール、考え方を解説してきたが、資料3はそれを整理・比較した表である。

資料3:送電運用、接続に係る考え方比較表
資料3:送電運用、接続に係る考え方比較表
(出所)山家

 本考察によれば、「最過酷時の一断面」で判断する場合と「時々刻々変動する断面」で判断する場合との差は非常に大きいことがわかる。東電PGの試行は、送電線有効利用に関し大きく前進するものであり、全国のスタンダートとなることが期待される。6月1日より実施開始とされているが、速やかにより詳細な情報公開を強く求めたい。

(キーワード) 東電パワーグリッド、実潮流試算、日本版コネクト&マネージ