Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

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No.294 検証洋上風力入札⑥ 定性(事業実現性)評価の不可解

2022年2月8日
京都大学大学院経済学研究科 特任教授 山家公雄

キーワード:洋上風力入札、事業実現性評価、秋田県洋上風力、三菱商事

 洋上風力入札シリーズの6回目である。今回は、定性評価となる「事業実現性」について、三菱商事グループを主に応募グループの(筆者の)評価を披露する。併せて個別評価項目の考え方が曖昧で重複しており、配点も不適切であることを解説する。これは、今回の風力開発が初期開発事業を国が行うセントラル方式ではなく、デベロッパーが行う通常の方式であることに起因する。応募者および地元の認識と紙上で審査する側の認識に乖離が大きかったと考えられる。それでも評価結果は不可解である。

1.定性評価(事業実現性)の結果

 ラウンド1の応募事業は、価格(定量)で120点、事業実現性(定性)で120点の合計240点で評価された。価格は最低水準が120点満点を獲得するが、定性は個別項目の積み上げであり、今回は88点(能代等)、91点(由利本荘)、98点(銚子)が最高点となった。この定性評価に関しては、本シリーズの2回目にて、ある程度取り上げた(「No.285 検証洋上風力入札② 低価格応札の要因と国内産業化実現の危機」)。今回は、評価項目に照らして、より具体的に考察する。

 表1は、ラウンド1入札結果を整理したものである。横軸に3区域と価格の点数、事業実現性の点数とその合計を配している。縦軸は落札グループ(G)を筆頭に合計点の高い順に配している。今回焦点を当てる事業実現性は赤枠で囲っている。価格点で他を大きく引き離した三菱Gは、事業実現性でも高い評価を得ている(能代等で1位、由利本荘で2位)。この定性評価は高すぎると違和感をもつ向きが多い(筆者も)。

表1 ラウンド1の洋上風力発電事業者選定結果
表1 ラウンド1の洋上風力発電事業者選定結果
(出所)経済産業省・国土交通省報道(12/24/2021)を基に作成

 三菱Gが3区域全てに応募しているが(1つの区域はメンバーが異なる)、日風開GおよびJERA-Gは2区域、東電RP-Gはメンバーが異なるが2区域で応札している。すなわち、事業者属性というよりも立地の特性や現場での活動状況により差がつく構図となる(はずである)。三菱Gの評価は88点(能代等)、82点(由利本荘)、91点(銚子)である。直感的にも能代・男鹿・三種は非常に高い。

2.「定性評価」を評価する

 本節では、定性評価(事業実現性に関する評価)について、項目に照らして考察・評価する。表2は、評価基準の概要である。全体で120点満点であるが、これは事業の実施能力80点と地域との調整・波及効果40点から成る。

表2 事業実現性に関する評価基準
表2 事業実現性に関する評価基準
(出所)経済産業省・国土交通省:洋上風力促進小委員会・WG中間報告(2019/4)より抜粋

国内実績を主に層別評価を導入

 まず留意しなければならないのは、事業実現性に関する評価は、事業実績による層別評価を取り入れていることである(表2の最左欄)。トップランナーは10割(国内実績)、ミドルランナー7割(海外実績含む)、最低限必要レベル3割(海外実績含む)と各評価に掛け目が施される。まず国内実績が、そして海外実績が考慮される。この視点で内外のランキングを見てみる(図1)。

図1.洋上風力・ラウンド1参加チームのランキングとグループ構成
図1.洋上風力・ラウンド1参加チームのランキングとグループ構成

「実績」内外トップがグループを組成

 図1の左表は、国内事業量のランキングである。容量・基数からみてユーラス、電源開発、日本風力開発、コスモエコパワーがビッグ4であり、トップランナーを形成している。1位のユーラスと3位の日風開がグループを組んでおり、この点では最強である。トップランナー4社はいずれも落選した。落札グループとしてはシーテックが株主となっている青山高原ウィンドファームが7位にランクインしている。

 図1の右図は欧州におけるシェアを示している。今次入札に登場する事業者をみるとOrsted17%、RWE10%、Equinor2%、Eneco2%となっている。Orstedは、秋田では日風開・ユーラスと千葉では東電REと組む。RWEは九電みらい、EquinorはJERA・電発、Enecoは三菱商事・中部電力の子会社であるが事業者の一員ではない。先行する欧州勢のどことチームを組むかは落札のカギを握ることは容易に想像がつく。逆に欧州勢も組むべき日本の事業者を評価することになる。この点では日風開・ユーラス・Orstedは強力な布陣であり、国内2位の電発とEquinorも有望である。そして国内実績は乏しいが買収したEnecoを擁する三菱Gも侮れない存在との位置づけである。

 ここで、表2に戻り、性能評価を項目ごとに見ていく。まず「事業の実施能力」80点をみていく。これは「実績」30点、「事業実現性」35点、「安定的な電力供給」15点から成る。事業実現性はさらに「事業計画の実現性」20点、「リスクの特定及び対応」15点、「財務計画の適切性」0点から成る。安定的な電力供給はさらに「電力安定供給」10点と「最先端技術の導入」5点からなる。

 30点を占める「事業実績」であるが、三菱Gは必ずしも高くはない。国内では三菱商事および三菱ESが主体的に行った陸上風力事業は一つもない。シーテックは中堅事業者に留まる。三菱商事が子会社化したオランダのエネルギ-事業者Enecoは欧州では実績があるが、日本ではない。ユーラス・Orstedと組む日風開Gは断然優位にたつ。国内2位の電発とEquinorを擁するJERAグループも優位にある。

 表3は、応札事業者の運転・メンテナンス能力を示している。この点でも日風開Gは優位にある。日風開はメンテナンス子会社を有し、外部委託を受注している。日風開とユーラスはそれぞれ研修センターを設けている。一方、シーテックは一部自社実施、東電RPは外部委託、電源開発は一部を外部に委託している。また、日風開とユーラスは、日本初の洋上風力O&M会社を秋田県能代市に地元企業の大森建設と2020年に設立している。さらに両者は、地元大学と人材育成及び地元貢献に関する協定を締結しており、事業遂行や具体的な地域貢献について真剣に検討していることが分る。アカデミーの視点では、三菱Gも地元大学と研究活動を主に協定を締結している。

表3 応札事業者のO&M実施・訓練設備整備状況、アカデミア創設構想
表3 応札事業者のO&M実施・訓練設備整備状況、アカデミア創設構想
(出所)各社のHP等より作成

不明瞭な「事業実現性」を詳細考察 三菱Gは高くない

 次に35点の「事業実現性」であるが、筆者の三菱G評価は低い。「事業計画」20点、「リスクの特定と対応」15点はともに不安が多い。「地元調整先行組」に比べて運転開始時期が2~3年遅い(由利本荘では4年遅いとの噂もある)が、これは非常に問題である。自民党再エネ推進議連の会議においては、この点が最も問題視された。また、超低価格の要因として、個々のリスクを低く評価し積み上げていることが推測される。2/4付けの読売新聞朝刊では、「入札審査の関係者」が「計画の具体性が群を抜いていた」とのコメントを紹介しているが、計画が具体的でもリスクの生じる確率を低く(甘く)みれば、それは無意味である。なお、別の複数の「入札審査の関係者」は見解が全く異なるとの噂もある。

 これは推測だけはない。まず、前述のように国内実績が見劣りする。地域調整と関わるが、秋田では三菱Gは地元市町村や漁組と殆ど接触がなく、風況調査、地盤調査、送電線敷設に係る地権者調整を先行組はきっちり実施しているが、三菱Gはほとんど実施していない。先行組とは能代等では大林組、日風開、住友商事そして由利本荘ではレノバ、日風開である。運開時期が遅いことは準備不足・調査不足・地元調整不足の表れであり、大きなリスクを孕んでいる。財務計画評価の0点は意味不明であるが、個別事業の調達価格を評価するFIT制度においては、事業リスクをきめ細かく評価するプロジェクトファンアンスが基本である。筆者には「三菱Gの価格ではプロファイを組むことが困難」という声が寄せられている。プロファイが組めないということは、事業リスクの把握や配分が不可能ということである。

 「安定的な電力供給」15点であるが、安定供給と将来価格低下で10点、新技術で5点から成る。安定供給と前述の事業実現性は同類と考えられ、区別することが難しい。新技術のポイントはどのメーカーの風車を選択するかに大きく依存するが、今回は応募12件のうち8件がGEの12MW機種(ハリアデX)を選択しており、大きな差はつかないと考えられる。一方、複数のグループがIEC認証未取得の風車を採用しているが、マイナス要因となる。

 安定供給と将来価格低下は、議論を呼んでいる。安定供給は前述の事業実績、事業実現性との違いを見出しにくく、三菱Gの評価は低くなる。一方で、三菱Gの運開遅延は将来価格低下にはプラスとの評価がある。エネ庁もそうした見方をしていたようだ。時間を延ばすことで次世代機種の完成を待つことは戦略はあるのだが、エネ基では2030年までに5.7GWの洋上風力稼働を織り込んでおり、公募の考え方として早期運開を評価することとなっている。自民党の先生方からも「運開時期を伸ばすことで価格低下を待つ」戦略は非常に不評である。三菱G自身もそうした考えはないと明言している、と聞く。

「地域調整」を徹底考察 極端に低い秋田漁組評価

 「地域との調整」は自治体が10点、漁業協同組合(漁組)等が10点である。地元からはこの点数配分が低いとの不満が大きい。自治体は県というよりも立地市町村が直接の当事者となる。原子力発電等の電源立地交付金の交付対象を見ても分る。漁組は最大の関係者であり、ここの了解がないと海域を占用できないが、これは再エネ海域利用法にも明記されている。三菱Gは漁組の評価が非常に低い。特に能代・男鹿・三種地区の評価が低く、地元自治体や漁協は挨拶にも来なかった三菱Gが選ばれた審査結果に驚いている。エネ庁は「県の意向」を強調するが、市町村や漁協の意向を直接確認したのであろうか。漁組は、能代・由利本荘ともに驚きと不安が非常に大きく、今後の円滑な進捗が懸念される。

 以下は、実例である。
●ダイヤモンドオンライン(2022/1/27)
「もうやけ酒を飲むしかない。こんな値段で三菱商事は地元のことを真剣に考えてくれるのか。漁協は何の説明も受けていない。最後は組合員が決める。反対だってあり得る」(秋田県のある漁港)
●山形県遊佐区域法定協議会での伊原山形県漁協理事発言(1/24/2022)
「エネルギー庁は----地域と漁業の共存、という言葉を何度も話されました。本当にそうなのかと言う疑問が湧いております。----去年の暮れの秋田県、千葉県銚子沖の3地域の発表を見てみますと、地域振興とか漁業振興よりも価格重視になっていると思っています。---公募者事業計画の評価のところに配点区分がありますけれど、非常に疑問と不安を持っています。もし今回の3海区のようでしたら遊佐町の業者は最後まで賛成することが多分できないと思っています。その上で、価格だけではない漁業振興や地域振興を重視した採点ルールをぜひ考えてもらいたいと思っています。」

地元調整は風力開発そのもの

 どうして、地元市町村や漁組の評価が重要なのであろうか。それは、地元の理解がないと風況や海底地盤調査が困難で、建設費やスケジュールを固めることが出来ないからである。送電線敷設ルートを固めることもできない。「地域経済等への波及効果」は地域が10点、国内が10点であるが、地域10点は地域調整とほぼ同義である。地元との信頼関係構築のなかで現実的な振興策は議論されていく。地域調整は20点ではあるが、地域振興や事業実現性の基盤となるもので、全体の120点を決定づけるものと言っても過言ではない。今回は、まだ「国が開発段階を担うセントラル方式」ではなく、「従来型の風力開発事業」である。事業者の「開発力」が評価される公募であり、それ以外に具体的に評価する術はないと考えられる。

難しい波及効果の判断

 「波及効果」20点は、「地域経済」10点。「国内経済」10点から成る。「国内経済波及」については、三菱Gの販売価格はFIT上限価格の1/3~1/2の水準で、発電コストは官民協議会目標の2035年までに実現する8~9円/kWh(調達価格11~13円/kWh)の水準である。協議会で決まった事業規模やスケジュールを基礎にゼネコン等5社は作業船を発注しており、JEFエンジニアリングも資材工場建設を決めている。筆者に寄せられる情報は「あの価格では投資は無理」が殆どである。

 「地域経済波及」は、この時点では評価は難しい。グループ構成会社や協力会社の地域特産品販売等の提案もあるようだが、筆者は、再エネ由来電力や環境価値の地元利用そしてサプライチェーンへの組み込みが基本だと考えている。地域調整に真剣な事業者には今後地元とwin-winの関係を築いていく素地がある。また、人材育成は産業化を実現する上での大前提で決定的に重要であるが、地元での育成機関創設や訓練施設設置は、具体的な地域貢献になる。表3で示したが、日風開・ユーラスは地元大学と提携し人材育成に取り組む。三菱Gはやはり地元大学と協力し、研究開発向けのデータ提供等を目指す。

 少し敷衍すると、三菱Gの地元の評価は、能代等と由利本荘で異なる。どちらも漁組の評価は低いのだが、由利本荘はまだ評価する向きがある。最大の違いは、北都銀行の子会社であるウェンティジャパンがチームに入っていることである。地銀の北都銀行とウェンティがあるていど地元貢献に関わっていると考えられる。

地域調整は評価されず 地元のフラストレーション

 以上から、筆者の三菱Gに対する評価は低い。一言でいうと「開発」を殆ど行っていないのである。開発の遅れ運転開始の遅れを価格のみで大挽回する戦略を採ったとみえる。

 他のグループを見ると、開発に真剣に取り組んでいたのは、能代等での大林組、日風開、住友商事であり、由利本荘でのレノバ、日風開であり、地元の信頼は厚く、評価は高い。市町村や漁組はこれらの事業者を県に推薦したと考えられる。これらの事業者の価格は22~27円/kWhと相対的に高く、工期は短い(運開時期が早い)。価格をみると大林組、レノバ、日風開が高く、三菱Gを除く他のGは一段低く、三菱Gは極端に低いという3層構造となっている。地元調整、定性評価の劣位を価格で挽回しようとしたと考えられる。そういう視点からの審査が必要であった。地元から見ると、馴染みの事業者は全て消え、会ったこともない事業者が当選したことになる。

3.疑問が多い定性評価

公表結果と異なる筆者評価

 以上の評価を基に秋田県に関して整理したものが表4である。横軸は各評価項目を2地区それぞれに配置している。項目は実績、実現性、地域調整、地域波及の4つに纏めている。「実現性」は多くの小項目を含むが区分にあまり意味がないと判断した。縦軸は応募グループを事業実現性評価の高い順に評価点数(括弧内は価格)を配置している(公表ベース)。◎〇△×は筆者の評価である。イメージとしては、◎:100% 〇:70% △:30% ×:0%である。

表4 ラウンド1 応募グループの定性評価(秋田)
表4 ラウンド1 応募グループの定性評価(秋田)
出所)経済産業省・国土交通省報道(12/24/2021)を基に山家作成

評価結果は不可解

 以下は、この表を受けてのコメントである。公表結果には多くの疑問がある。
・発表された三菱Gの評価がかなり高い。
・日風開、大林組の評価が低い。
・地域調整◎〇で運開時期が早いレノバ、大林組、日風開の応募価格が相対的に高い。
・価格は「レノバ、大林組、日風開」と「JERA、住商、九電みらい」と「三菱G」の3層を形成している。
・三菱Gでは、比較的地元評価の高い由利本荘が82点で、全く評価されていない能代等が88点で、由利本荘よりも6点高くなっている。

 筆者は山形県の総合エネルギ-政策アドバイザーを11年間務めており、隣県の秋田情勢にはある程度通じているが、銚子はあまり詳しくない。しかし、銚子も評価結果がよく分らないという話を聞く。三菱Gは、銚子は地元調整にかなり力を入れており、地元の評価も高いとの情報がある。事業実現性の評価は東電RPが98点、三菱Gは91点とであり、両者ともにかなり高い。そして評価の高い三菱Gが東電RPに7点差を付けられている。状況を把握している地元にとりこの結果は分らないというのである。

 また、秋田の最高点91を上回る。再エネ海域利用法成立のかなり前から地元調整が始まっており、アカデミー構想がある秋田よりも、銚子の方がどうして高いのか不思議である。

情報開示・総括なしに新たな入札に移れるのか

 ラウンド1の入札結果は、関係者に激震を与えた。全く想定外の低価格提示もさることながら、実現性評価が非常に不可解だったのである。事前の合意されていた(行きわたっていた)評価の考え方とかけ離れていると受け止められた。あれだけの価格差があると、想定された定性評価の通りに落ち着いたとしても総合評価は覆らない可能性はある。しかし、定性(実現性)評価と定量(価格)評価は密接に関連しているし、何よりも洋上風力事業に意欲を持つものが、選ばれるためにこれからどうしていいか分らない状況にある。評価項目と評価方法が不明瞭なのである。

理解されない「FIT入札」と「開発力勝負」

 今回の入札結果は、多くの論議を呼んでいる。評価の前提としてどのような考え方・ルールで入札が行われ、それがきちんと評価されたのか、という点に尽きる。まず、FIT入札であることの理解が不十分であった。入札だから、実現可能性を前提に、価格が低ければいいと思われがちだ。洋上風力は事実上日本にまだ存在せず、サプライチェーンの整備もこれからである。長期的な産業育成を前提とした発電費用に適正利潤を乗せた「調達コスト」をカバーするFIT制度の下での入札である。国内産業がシュリンクするような価格競争を想定してはいない。三菱Gの価格がFITの理念に見合うのかという視点が重要になる。

 三菱Gの超低価格の理由として「協力会社のアマゾン等が高い小売価格あるいは環境価値を購入する約束があるので応札価格を低くできた」という説が流布し、複数のメディアがこれをスクープ的に取り上げたことも混乱を大きくした。あくまでFIT枠組の入札であることを資エ庁は断言し、三菱Gも同様の見解としている。しかし、見解表明に時間を要し(三菱Gは不透明)、いまでも多くのメディアは「アマゾン利益補てん説」を疑っていない。

 もうひとつの基本ルールは、開発行為を国が行う「セントラル方式」ではなく、その前段階の「通常の開発方式」を競うことであった。通常の電源開発は、地元の理解を得て、建設場所や送電線敷設ルートを押さえ、風況や地盤調査等を行い、費用やスケジュールを確定する一連の行為である。これが事業実現性であり、評価も「国内開発の実績」や「現場での調整力」が主たる評価対象となっていた。トップランナー等の層別評価、地元との調整、地元からの受け入れ度合が評価されるはずであった。応募しているグループも対応する地元もそうした認識の下で、グループを組成し、時間と費用を使って準備を進めてきていた。ところが、結果は「開発力」は殆ど評価されずに価格だけで決まることとなった。通常の開発方式は、地元調整抜きでは価格も定まらない。セントラル方式に完全移行するにはしばらく時間がかかる。混乱と不透明感は、今回からセントラル方式であるかのような誤解に起因する。

早急な情報の開示と解説を

 一般に、メディアや研究者を含んで、このような事情は分かりにくい。関係者が自ら説明することは「負け犬の遠吠え」と一蹴される懸念がある。政府が決めたことでもあり、疑問の声を出すにも勇気がいる。しかし、このまま不透明な状況で次やその次の入札を続けることは、国内サプライチェーンの一画を担わんとしていた事業者や、長期的な雇用と価格低下を享受できる消費者を含めてハッピーでは全くない。早急な情報の開示と結果解説が不可欠である。