Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

本講座(第2期)は、2024年3月31日をもって終了いたしました。

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2021年3月1日(月)の部門B研究会 議事録

2021年3月1日(月)17時から20時
於:Zoom会議室(オンライン)

 上記の通りオンラインで開催された今回の研究会では、特定非営利活動法人市民電力連絡会の都甲公子様、高橋喜宣様、竹村英明様よりご報告いただきました。以下は、その要約記録です。

市民電力は再エネ主力電源化に貢献できるか

都甲公子様

 本報告は、2014年に設立された市民電力連絡会が発行した「市民発電所台帳2020」の成果を報告するものであった。当該台帳作成のための調査は2016年から5年間継続して実施されてきており、この5年間で調査に参加する発電所数や設備容量は増加し、2019年からは風力と小水力も追加され、調査の成果を蓄積している。調査からは、再エネ拡大への市民電力の貢献、設置コストの下げ止まりの現状、容量規模の拡大と設置形態の多様化、資金調達方法の多様化が明らかになった。しかし、近年の国の制度変更は市民発電所を直撃しており、事業の不安定化、新電力との連携を阻む市場設計がなされている。主力電源化のためには、ポストFITにおける事業のあり方を模索していく必要が提起された。

pdf資料(9.75MB)

日本の太陽光発電の問題点と小水力発電調査 非FIT型再エネ利用の事例紹介

高橋喜宣様

 本報告は「市民発電所台帳」の調査において小水力発電所調査から見えたもの、FITに頼らない再エネ発電所の事例について述べるものであった。小水力全国調査では、2019年版では9か所に留まったので、2020年度は調査対象を拡大して実施した。調査からは、自治体の回答率が高く、農業団体が次に高かった。工事費総額では、200kW未満では工事費総額に相違が見られた。この現象を考えるために、地元企業による小水力事業と自治体による小水力を同規模で比較したケースで、地元企業による非FIT型の工事費が自治体の4分の1で実現したという実例がある。このような非FITでの事業は、国外のみならず日本国内でも複数の取り組み例が見られ、地元市民の手による更なる事例展開が期待される。

pdf資料(11.57MB)

電力自由化時代、市民が電力事業へ挑戦する意義と課題

竹村英明

 本報告は、市民発電所に焦点を当てた日本の再エネの実態と可能性についてであった。日本のエネルギーミックスは、グリーン成長戦略に示されたものでは2050年に化石燃料由来の電源を大きく残すものであり問題がある。2021年以降は非FITの時代であるために、その事業化の展開が望まれる。しかし、接続制限、FITの修了、新電力に不利な電力新市場(ベースロード市場、非化石価値証書、容量市場)が進行し、電力システム改革の有名無実化が明らかになりつつある。また、1月13日の卸電力市場の価格高騰は旧一般電気事業者の売り入札の減少が原因と考えられる。そのなかで市民発電所は、小規模なものが集合することによるメリットを享受し、市民発電所の取り組みを展開していくことが重要である。そこにおいてソーラーシェアは大きな可能性を有している。最後に地域オフグリッドの提案がなされた。

pdf資料(17.94MB)