Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

本講座(第2期)は、2024年3月31日をもって終了いたしました。

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2021年3月29日(月)の部門C研究会 議事録

2021年03月29日(月)
於:Zoomオンライン会議

 2021年03月29日(月)18時~20時、再生可能エネルギー経済学講座部門C研究会が、Zoomオンライン会議にて開催されました。今回は、名城大学の李秀澈先生、Cambridge EconometricsのUnnada Chewpreecha様よりご報告いただきました。

日本の2050年カーボンニュートラルの実現がエネルギー構成および日本経済に与える影響分析
- E3MEマクロ計量経済モデルを用いた分析 -

李 秀澈 先生

 本講演は、2050年日本のカーボンニュートラルの実現がエネルギー構成および日本経済に与える影響を推定することを目的とした。まずは欧米と日中韓を含め、世界のカーボンニュートラルの状況を紹介した。その中で、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」における部門別の勘定と重要な成長分野が詳しく説明された。次に、研究で使っているE3MEモデルの概要、特徴、基本構造、メカニズムを説明した。そして、日本エネルギー経済研究所(IEEJ)の2020年版OUTLOOK2021のレファレンスケースをベーズラインシナリオとして設定し、原発の特殊性を考慮し、比較対象となる政策シナリオを原発あり(政策シナリオⅠ)と原発2040年フェーズアウト(政策シナリオⅡ)の2つのケースとしたことが示された。また、E3MEモデルを用いて、2050年まで日本がカーボンニュートラルを達成するための政策パッケージ(原発ありの政策シナリオⅠと原発2040年フェーズアウトの政策シナリオⅡ)が二酸化炭素排出量と削減率、電力需要、電力構成、GDP、部門別経済と低・脱炭素投資需要、電源コスト、雇用に与える影響を推定し、それぞれの影響と理由を説明した。最後に、結論として、原発あり(政策シナリオⅠ)の政策パッケージと原発2040年フェーズアウト(政策シナリオⅡ)の政策パッケージのいずれでも2050年にカーボンニュートラルの実現と経済良好の両立が可能だと確認された。その主な要因として、(1)発電部門の再生可能エネルギー投資の拡大とともに経済各部門で多様な低・脱炭素投資需要の拡大(2)雇用増加による民間消費需要の増加(3)化石エネルギー輸入の大幅な縮小による貿易バランスの向上が挙げられた。また、低・脱炭素政策によるエネルギーコストの上昇は、2050年になってもベースラインシナリオに比べて45%〜55%上昇にとまり、化石エネルギー費用負担の大幅な縮小分を考慮すれば、経済にはあまり負担にならないことが明らかにした。他に、いくつかの今後の研究課題が挙げられた。

pdf資料(3.79MB)

E3ME-FTTs: Modelling of Japan Net Zero

Unnada Chewpreecha 様

 本報告は、E3MEとFTTの具体的な内容を紹介し、それに基づいた日本におけるE3MEモデルのアプリケーションの具体的な設定方法を詳しく説明することを目的とした。まず、E3MEモデルが世界の政策課題に対応するためのマクロ計量モデルであることを説明した。続いて、E3MEにおけるFTTの主な特徴と、FTT政策がE3MEに与える影響について詳しく説明した。次に、E3MEモデルで日本のシナリオを構築するための具体的な手順をステップバイステップで説明した。その中で、具体的なステップは(1)仮定シナリオの定義(IEEJ2021をベースラインとし、原発を含むケースと含まないケースを区別する)(2)ポリシーの定義およびIEEJ2021による日本のE3MEベースラインの校正(3)ポリシー入力によるシナリオファイルの設定(4)E3MEの収益リサイクルコードの設定(5)ベースライン、シナリオの実行および解決策の模索(6)E3MEフロントエンドによるモデル結果の検証(7)主要な調査結果の発表の7つの部分から構成されていた。最後に、参加者の質問に耳に傾け、それに答えることで終わりとした。

pdf資料(2.57MB)