Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

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No.279 ポジティブ・ゾーニングに関する一考察 
-ドイツ法の構造と若干の日独比較―

2021年12月9日
                          専修大学法学部教授 髙橋寿一

キーワード:土地利用計画、ポジティブ・ゾーニング、促進区域

1.はじめに

 地球温暖化対策推進法改正法(以下、「温対法」)が2021年6月に成立した。本法は、2050年までに温室効果ガスをゼロにするという意欲的な目標を設定し、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)による発電を積極的に推進することをその目的の一つに掲げている。そして、再エネ発電設備、とりわけ野立て太陽光発電設備や風力発電設備がその建設をめぐって地域住民との間に紛争を惹起する事例が後を絶たないことから、温対法では、「促進区域」を設定することによって、再エネ発電設備を区域内に誘導して、地域住民との紛争を最小限度に抑制しようとしている。

 かかる手法は、「ポジティブ・ゾーニング」(以下、“PZ”と称し、設定された区域を「促進区域」と称する)と称されており、従来のわが国で主流であった「ネガティブ・ゾーニング」(以下、“NZ”と称する)方式から、土地利用規制の手法を転換しようとするものである。かかる手法は、19世紀以降西欧諸国が土地開発一般の基本的手法としてきたところであって、筆者が研究対象としているドイツにおいても、土地開発手法としての有効性は学界および実務界において従来からほぼ疑義なく承認されているところである。

 そこで、本コラムでは、一方で地域住民や地域の環境との矛盾・衝突を回避しながら、他方でPZによって再エネ建設を促進してきたドイツを素材にして、その概要を経緯も含めて紹介・検討するとともに1、わが国で現在進行している温対法の促進区域制度と若干の比較・検討をしたい。なお、本制度については環境省の検討会で具体化作業が現在進行中であるので、本稿は、2021年11月末日時点での公開資料を前提とした論稿であることを予めお断りしておきたい。

2.基本的構造と風力発電設備の特例

 ドイツの土地利用計画法制を見る場合、出発点となるのは、「建築(開発)不自由の原則」である。「計画なければ開発なし」の原則として紹介されることも多い2。ドイツでは、全国土にわたって、土地所有者が自由に開発・建築できる土地はどこにもない。もとより規制の手法は、都市の内部か外部かで異なるが、野立て太陽光や風力発電設備など主に郊外部に建てられる再エネ発電設備も含めて、建築・開発行為は、全国土にわたって原則的に規制されている(建設法典30条、34条および35条)。

 それでは、開発・建築を希望する事業者はどうするか。郊外部においては、市町村が策定した域内全域を対象とする現在及び将来の土地利用の方向付けに関する土地利用計画(以下、「Fプラン」)を前提として、小規模なエリアを対象に地区詳細計画(以下、「Bプラン」)を策定して、その中で当該エリアが開発・建築が可能な区域として指定されることによって初めて、事業者は、開発・建築行為を行うことができる。ただし、これは都市計画の観点からの許容性であって、建築物単体の安全性は州毎の建築秩序法上の建築許可によって担保される3。この両者の規制は、わが国の場合よりも格段に厳しい。「厳しい」というのは、開発・建築事業者からすれば、規制の網の目の詳細性・厳格性のほかに、FプランおよびBプランの策定過程において極めて周到な公衆参加制度が設けられているからである。野立て太陽光や風力発電設備についても同様であって、上記の手続きを踏まえた計画が策定されて初めて設備の建築が可能であった4。このような法構造の下では、地域住民との摩擦・軋轢は最小限度に抑制される。実際、野立て太陽光発電設備について言えば、地域との紛争はドイツではほとんどない5

 上記の法体系を日本法と比較すると、興味深い様々な比較法的考察ができるのであるが、本稿では省かざるを得ない6。一点のみ述べれば、ドイツのこの制度の下では開発・建築需要には迅速に対応することができない、という難点がある。再エネ設備についても同様である。ドイツでは1990年に「電力供給法」、2000年に「再生可能エネルギー法」を制定して、FIT制度を通じて再エネの普及・拡大に本腰を入れるようになったが、その主要な担い手として期待された風力発電設備については、上記の法制度の下では迅速な建設が期待できないおそれがある。そこで、ドイツ政府は、1996年に建設法典を改正して、以下のように、陸上風力発電設備の立地規制を緩和した。すなわち、ドイツでは、郊外部での建築物の建築は基本的には禁止されるが、農業経営建物7ごみ処理場などの法定の建築物(以下、「特例建築物」と称する)については建設法典(日本でいえば都市計画法)上は許容される。上記の法改正では、この特例建築物の一類型として、新たに風力発電設備が加えられた(35条1項5号)。これによって、風力発電設備を郊外で建設する場合には、基本的には連邦イミッシオン防止法と州建築秩序法の双方の許可を得れば、建設が可能となった。ところが、この両法の許可は、法定の具体的要件を満たしさえすれば許可が下りるため、この改正内容のみでは、今度は逆にドイツ全土にわたって風力発電設備が無秩序に建設されるおそれが出てくる。そこで、上記の改正と同時に、促進区域(具体的には州の行政管区8策定する広域地方計画上の「優先区域」または上記Fプラン上の「集中地区」ないし「特別地区」などと称される)が指定された場合には、区域外での建築を原則的に認めないことを内容とする規定が新設された(建設法典35条3項3文)。ドイツ政府は、このようにして、一方では、(イ)促進区域内で再エネ発電設備(風力発電設備)の建設を促進し、他方で、(ロ)促進区域外での環境・景観保全を図ろうとしたのである。

 それでは、促進区域がどのようなプロセスを経て指定されるのか、また、市町村などによって指定された促進区域が狭小な場合には、上記の(イ)の要請が満たされないことになるが、この点はどうだったのであろうか、項を改めて検討しよう。

3.促進区域の選定とその運用実態

 まず、ドイツの促進区域の設定の仕方についてみてみよう。ドイツではこの点については、陸上風力発電設備を対象として、裁判所によって法政策形成が行われている。連邦行政裁判所は、2002年の判決を嚆矢として、州の行政管区や市町村などの計画策定主体が履践すべき手続として、概要次の手順を定めた9。まず、(イ)事実上・法律上の理由によってそもそも風力発電設備の用地に供することができないエリアを排除する(厳格な禁忌地域(harte Tabuzone))。ここには環境上配慮を要するエリアの他にも多様なエリアが包含される。次に(ロ)市町村の将来の土地利用構想との整合性など、計画策定者の見地から設備用地とすべきではない(sollen)エリアが排除される(柔軟な禁忌地域(weiche Tabuzone))。そして、(ハ)(イ)および(ロ)の残余地が潜在地域(Potenzialzone)と称され、促進区域はこの潜在地域から選定される。その選択は計画策定主体に委ねられ、潜在地域すべてを促進区域とする必要はない。促進区域の面積が当該自治体総面積に占める割合は、当該自治体の所属する州の方針や具体的な状況(地勢、風況、市街化の程度など)によって異なるが、たとえばヘッセン州では自治体毎に概ね2%が目安とされている。

 しかし、市町村の中には環境悪化や地域住民の反対を懸念して風力発電設備の設置を望まないものも少なくない。そのような市町村は、潜在地域の中から敢えて狭小な面積の促進区域しか選定しない。前述したように、促進区域が指定されれば当該市町村(または当該行政管区)内では促進区域以外で再エネ発電設備を設置することが非常に難しくなるため、僅少な促進区域を設定してさえおけばその外側での設備建設を阻止することができる。

 ドイツでは、1990年代末から、この問題がとりわけ陸上風力発電設備をめぐって生じた10。風力発電設備の域内での設置を忌避するために策定された自治体の土地利用計画は「妨害計画」(Verhinderungsplan)とか「イチジクの葉計画」(Feigenblattplan)11などと称されている。たとえば、ある自治体は、潜在地域が域内に15か所もあるにも拘らず、その中の1か所しか促進区域として指定せず、促進区域の面積は域内総面積の僅か0.05%に過ぎなかった12。そこで、促進区域の外側での建築を希望する風力発電事業者が、建築許可を求めて訴訟を提起し、当該訴訟の中で促進区域を含む自治体の土地利用計画(Fプラン)の無効を求めた13

 興味深いのは、本件を含む多くの裁判所が、促進区域の設定を含むFプランや広域地方計画について、これを「妨害計画」にあたるとして、計画を無効と判断している点である14。その根拠とされたのが、連邦行政裁判所の一連の判決で形成された以下の原則である15

 「市町村は、立法者の特例に関する決定を尊重しなければならず、風力利用のためには実質的な方法で建設のための空間を創出しなければならない。」(下線部は筆者)

 上記引用の前半部分は、前述した建設法典の改正によって風力発電設備が特例建築物として位置づけられたことを指す。連邦行政裁判所は、立法者のこの意思決定を根拠として、上記引用の後半部分のように市町村は法律上適地の選定義務を負うことと判示し、この義務を履行せずに策定された計画を違法であり無効と判断したのである。そこで、無効と判断された市町村や行政管区は、促進区域の選定作業を再度やり直すことになる。その場合には、上記の(ロ)の段階に立ち戻って、今度は、促進区域を従来よりも拡張した内容を有する計画を策定しなければならない。

 連邦行政裁判所による一連の判決は、全国の市町村に大きな衝撃を与えることとなり、各市町村は妨害的な促進区域を指定することを躊躇するようになった16。かくして、ドイツでは市町村(連合)ないしは州の行政管区レヴェルにおいて促進区域の指定・拡張が進行して行った。上記の判決によって、促進区域がドイツ全土で実際に量的にどの程度拡張されたかは不明であるが、連邦行政裁判所の上記の決定が、市町村や州の行政管区の行動に大きな影響を及ぼしたことは疑いない。かくして、ドイツでは、裁判所も具体的な判決を通じて、立法府の再エネ促進政策を背後から支える機能を担っていった。ドイツで風力発電設備の建設が大きく進んだ要因の一つは実はここにある。

 再エネ発電設備を中心とするドイツのPZに関する経緯および構造は上記の通りである。全国土にわたる建築不自由の原則を前提としたPZであるが故に、PZは建築抑制からの「解放」を意味する。ただし、そこでの「解放」は決して建築自由の状態になるのではなく、Fプラン・Bプランによる詳細な規制に服し続けるのが開発の一般的原則である。しかし、前述した通り、ドイツでは風力発電設備の場合には例外的にFプランまたは広域地方計画のみで建設が可能とされる。Fプランや広域地方計画という規制の目の粗い土地利用計画では計画区域内の濫開発を防ぐのに必ずしも十分ではない場合がある。それ故、促進エリアの内部では地域住民との摩擦・軋轢が生じる場合もある。もっとも、そのような事態を望まない市町村は、この場合にも、法律上策定を義務付けられていないBプランを予め自主的に策定して風力発電設備の立地をコントロールしている17。換言すれば、上記の連邦法上のネックは、自治体の計画策定によって解決され得るのである。

4.若干の検討

 さて、これらを前提としてわが国で現在進行しているPZの動向をいかに評することができるか。本来であれば、温対法の促進区域の制度を検討の俎上におくべきであるが本稿執筆時点ではまだその全体像が明らかになっていないので、この点の詳細な検討は別の機会に回して、以下では基本的論点のみ述べる。

 第一に、わが国の国法との関係である。2で述べたドイツ法と比較した場合のわが国の基本的特徴は、建築や開発をする際に法制度上何らの拘束を受けないエリアがなお存在していることである。また、都市計画法や農振法などの適用はされるが規制が極めて弱い地域(いわゆる白地地域)も広範に存在する。その結果、少なくとも以下の2点が重要な論点となりうる。

 (イ)このような法制度(「建築自由原則」とか「必要最小限規制原則」18などと称される)を前提とする場合、そこでのゾーニングは主にネガティブ・ゾーニングとならざるを得ない。すなわち、保全すべきエリアをNZによって確保し、それ以外は緩やかな規制に委ねる、という手法である。このような手法の下では、そもそもPZの意義が、ドイツの場合と比較すると大きく低減する。敢えてPZを指定しなくても開発・建築が可能だからである。そうすると、それにも拘らずPZを用いるとするならば、敢えて促進区域で開発・建築を行おうとするインセンティブを事業者側に付与しないと促進区域内に開発・建築を誘導できない。温対法の促進区域についても、インセンティブとして許可などのワンストップ手続が用意されているが、ワンストップ手続は個別法の実体法上の許可要件まで緩和するものではない。また、促進区域内で再エネ発電設備を建設することで、事業者側にとっては協議会への参加などによって自由な建設が制約され、地域への寄付金などの地域貢献も求められる。事業者は、果たして敢えて促進区域内での再エネ発電設備の建設を選択するであろうか。

(ロ)仮に、上記の誘導がうまくいったとしても、次に、促進区域内の立地コントロールをどうするのか、という問題が出て来ざるを得ない。わが国の法制度の下でPZを用いても、促進区域内の土地利用コントロール手法が別途用意されていなければ、促進区域内部での無秩序な土地利用を排除することはできない。このことは、促進区域を広範に設定すればするほど問題は大きくなる。温対法の促進区域では、協議会の設置(同法22条)や事業者の策定する地域脱炭素化促進事業計画の市町村による認定(同22条の2)などを通じて土地利用コントロールをしようとしているが、いずれの手法もその採用は自治体の任意である。また、仮に自治体がそれらの手法を利用しようとしたとしても、事業者の側がこれらの手続きに乗らずに独自に建設を進めることも法制度上は排除されていない。この後者の場合には、再エネ事業者はワンストップ手続を利用できないことになるが、事業者にとっては、温対法の手続きに乗るか乗らないかは、おそらく建設予定地域の土地利用規制の内容、地域住民の意向、建設までに許容される時間的スパンなどの諸要素で決まってくるものと思われる19。この問題はドイツでも生じており、それへの対処を自治体が独自に行っていることは前述した通りである。

 第二に、国法の上述の構造を前にして、近年では再エネ発電設備の建設をコントロールするために独自の再エネ条例を設ける自治体も多い(全国で150以上20)。そこで、かかる条例と温対法の促進区域制度との関係についても検討しておきたい。本稿の問題意識からすると、これらの自治体のパターンは、下記の二つに分類される。

 (イ)NZ方式であって、禁止区域を指定する類型である。環境保護などの観点から開発・建築を抑止する区域(抑制区域)を設ける条例がある。この手法は、上述の国法の基本的構造と同様である。すなわち、区域内の開発・建築は抑止し得ても、区域外のそれについては特段の規制が設けられない。したがって、区域外のエリアを対象にして、温対法の促進区域を指定していくことには違和感はない。

 (ロ)次に、一方で上記のような抑制区域を設けつつ、他方でその外側のエリアについても、再エネ設備建設の前段階で市長への届出や事前協議、市長の同意などの手続きを要求する類型である21。これは、外側のエリアについては、事業者に対して一定の規模(近年は10kWが多い)以上の太陽光発電設備を建設する場合には、事前に自治体との接触を促すものである。この類型は、自治体がそのエリア全域にわたって何らかの立地コントロールを試みるものであって、第一で述べた国法上の難点を克服することを意図している。もっとも、事前協議や届出義務を課しても、その義務の履行を確保するための手法が、指導、助言、勧告、氏名(事業者名)の公表など法的強制力を持たない場合がほとんどであって、実効性の点ではなお問題が残る22。そして、この類型については、当該自治体の再エネ設備立地に対する基本的姿勢によって、その運用の仕方には大きな幅が生ずるものと思われる。すなわち、以下の通りである。

 (α)まず、審査基準が比較的緩やかな場合である。この場合には、基準さえ満たせば抑制区域以外のエリアのどこでも建設が認められることになるので、立地誘導効果は大きなものではない。この場合には、上記第二(イ)と同様、温対法の促進区域を指定していくことは難しくない。

 (β)これに対して、審査基準が厳格でそれを満たすことが容易ではない場合もある23。この類型は、とりわけ土地開発型の再エネ発電設備の立地に対して消極的・抑制的な自治体の場合にはしばしば見られるところである。このような土地利用規制は、前述のドイツとの比較で言えば、「妨害計画」的であるといえよう。したがって、この場合に温対法の促進区域を設けることは容易ではない。ドイツであれば、裁判所による判決を通じて促進区域を設定・拡大していくことが可能であったが、わが国の場合には、〈促進区域を設けても濫開発にはならない〉という安心感を自治体が持てるような制度的仕組みにしていくしかあるまい。この場合には結局、上述した第一で指摘した点が改めて問われることになる。

5.おわりに

 本稿で指摘したわが国の土地利用計画・土地利用規制の基本的構造は、戦後の土地開発において、周知のような様々な問題を引き起こしてきた。今日の再エネ設備の建設をめぐって各地で起きている現下の問題は、正にわが国のこれまでの土地法制度の延長線上で生じている問題である。ここに手を入れない限り、根本的な問題の解決にはならず、同種の問題は今後も継起するであろう。

 温対法の促進区域制度が最終的にどのような形で具体化されるにせよ、制度目的を達成するためには、関係当事者が緊密に連携・対話しながら協働していくしかない。そこでは、とりわけ、市町村、地域住民、再エネ事業者のパフォーマンスが決定的に重要である。その際の執行・運営体制を支える機能を温対法の促進区域制度が果たすことができるのかが今まさに問われている。


1再エネ発電設備の立地を対象とし土地利用計画法制の日独比較については、髙橋寿一『再生可能エネルギーと国土利用』勁草書房(2016年)においてすでに行っている。

2髙橋寿一『農地転用論』東京大学出版会(2001年)第1章、同「「建築自由・不自由原則」と都市法制」原田純孝編『日本の都市法II』東京大学出版会(2001年)37-60頁など参照。

3わが国でも都市計画法と建築基準法は別建ての法律であるが、ドイツでも同様である。

4「であった」と過去形にした理由は直ぐ以下で述べる。

5野立て太陽光発電設備については工場跡地、元演習場、鉄道・高速道路の沿線などの限られた土地上で建てられた設備のみがFITの適用を受け、FITの適用を受けない場合であっても、市町村がFプラン、Bプランを策定し、そこで位置づけられた場合に初めて建設が可能となる。

6その詳細については、前掲注2)に掲げた文献を参照されたい。

7それと関連する限りでのバイオマス設備も含む。

8州ごとに名称は異なり、地方(Region)と称する州もあるが、いずれにせよ州の管区である。

9BVerwG, Urteil vom 17.12.2002, BVerwGE 117, S. 287.

10野立て太陽光発電設備については、前掲注5)を参照。

11旧約聖書のアダムとイブの「イチジクの葉」の逸話になぞらえて、「(開発から)隠す」という意味合いがある。

12このような市町村は少なくない。たとえば、筆者の分析したハイデルベルク市の場合、Fプランの集中地区の市域総面積に占める比率は0.13%に過ぎない。その経緯も含めた詳細につき、髙橋寿一「陸上風力
発電設備の立地選定」楜澤能生/佐藤岩夫/高橋寿一/高村学人『現代都市法の課題と展望』日本評論社(2018
年)153頁以下を参照。

13BVerwG, Urteil vom 21. 10. 2004-4C2/04-, juris.

14その詳細につき、髙橋・前掲注1)163-166頁参照。

15BVerwG, Urteil vom 17. 12. 2002, BVerwGE 117, S. 287に始まり、 BVerwG, Urteil vom 13. 12. 2012, BVerwGE 145, S. 231 など、この見解は、今日においても維持されている。

16この間の経緯につき、Reinhard Hendler/Jochen Kerkmann, Harte und weiche Tabuzonen: Zur Miserie der planerischen Steuerung der Windenergienutzung, DVBl 2014, S. 1369ff.

17フライブルク市前都市計画局長Wulf Daseking氏(現フライブルク大学教授)への2017年9月に実施したインタビューによる。

18この用語については、藤田宙靖「必要最小限規制原則とそのもたらしたもの」藤田/磯部力/小林重敬編『土地利用規制立法に見られる公共性』土地総合研究所(2002年)7頁以下参照。

19この点は、農村再エネ法のように発電事業者から提案があった時点で促進区域を設定する方法であれば、促進区域内部での再エネ発電設備の設置については、農村再エネ法の手法に則して事実上処理されていくであろう。しかし、温対法の場合には、この手法以外に、予め広域的な促進区域を指定する手法を主たるものとして想定しているので(環境省「地域脱炭素に向けた改正地球温暖化対策推進法の施行に関する検討会」第2回資料4(2021年9月)5頁、第3回資料2(2021年10月)4頁など)、本文で述べた問題は事実上生じることになるものと思われる。

20ただし、150としても全国の市町村数約1700の僅かに9%弱に過ぎない。残りの91%の自治体は独自の条例を有しておらず、その場合には本文第一の点がそのまま当てはまることになる。もっとも、土地開発一般に適用される条例や要綱で再エネ設備建設に対処している自治体もあり、実際にはもっと多くの自治体が再エネ発電設備の立地に対処している。

21抑制すべき区域を設けずに市町村全域にわたって事前協議等の手続を課すところもある。

22罰則(罰金や過料)まで規定している条例は極めて少ない。なお。再エネ特別措置法および資源エネルギー庁の策定したガイドラインでは、事業者には条例を含む関係法令の遵守が求められ、それに違反した場合には再エネ事業計画の認定が取り消されることがあると定められているが(再エネ特別措置法9条3項2号、15条、規則5条の2)、これによって問題が解消されるかは筆者はなお慎重である。詳細につき、髙橋寿一「再生可能エネルギー発電設備の立地法制と地域の受容」専修法学論集143号(2021年)49頁以下参照。

23たとえば、関係する地域住民全員の同意を取り付けることを要件とする場合などが典型である。したがって、この類型では敢えて抑制区域を設ける必要性は事実上なくなるであろう。