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No.326 我が国一般送配電事業者のネットワーク次世代化に向けた取り組み(後編)
―配電事業等ローカル系統を巡る動きと系統設備形成の最適化事例―

2022年7月14日
京都大学大学院 総合生存学館 教授 長山浩章
一般社団法人 カーボンニュートラル推進協議会 理事

(*)本稿は(一般社団法人)カーボンニュートラル推進協議会1 における筆者論文(2022年6月27日公開 https://carbon-neutral.or.jp/topics/column/266.html)に修正を加えたものである。

キーワード:配電事業、マイクログリッド、BTB

 最後の後編では①新たな配電事業の定義とマイクログリッド、②ネットワークの効率化投資と設備形成の最適化の例として、中地域3社(関西・北陸・中部)連携による常時交流連系(ループ)形成と、南福光連系所の設備のスリム化、BTB(Back to Back)廃止の検討について取り上げる。

1.配電事業とマイクログリッド

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 配電事業とマイクログリッドについては、配電事業と指定区域供給制度で4つのパターンが考えられる(図1)。配電事業ライセンスがでてきた背景を考えてみる。これまでの特定供給および特定送配電では、特定の需要家に合わせた自営線で特定地域に供給をするが、自営線建設の高コストでの運営が事業拡大の制約になってきたことがある。宮城県東松島市や北海道鹿追町等は、マイクログリッドの事例であるが、自営線ネットワークは環境省の補助や自治体による負担であり、これ以上本スキームの事業拡大が困難であった。そこで、配電ライセンスの免許を受けた事業者が一般送配電事業者の所有する送電線を貸与・リースされる形で高額な自営線建設を回避しようという動きがあった。他方、一般送配電事業者は無条件での送電線貸付を回避したい。以上から、配電ライセンス、指定区域供給の制度が整備されることになった。これまでマイクログリッドは、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)で技術研究上では支援されていても「需要家の利益を守る」という電気事業法との関係が説明できなかった。配電事業者が電気事業法の中に初めて位置づけられ関係が整理されたという点が、今回の改正の大きな進展である。

 指定区域供給制度 は、ハード(電線)を切り離して、一般送配電の区域内に離島のような閉じた系統を作ろうというもので、物理的に送電線を切るというものである。他方、配電事業の定義はソフト(運営)の切り離しで、地域の特色に合わせた展開を可能にするライセンス供与を行うものである。

1)指定区域供給制度

 指定区域は離島と同じように、その地域の人による(この点で配電ライセンスとは異なる)事業となる。一般送配電事業者の申請に基づき、国が(ア)「一般送配電事業の効率的な運営に資すること」、(イ)「当該区域内の電気の安定供給を阻害するおそれがないことの基準に適合すると認められるものを指定区域とし、平時から主要系統から独立して運用することを可能とする制度となった(資源エネルギー庁(2021))。

 一般送配電事業者にとってのメリットは、指定区域を切り離すことでコストを下げられることにある。配電事業者としてのメリットは、初期の段階で配電線があり、その地域での事業から収入の予想がつくことである。

2)配電事業ライセンス

 配電事業と指定されるであろう場所は、もともと経済合理性がない地域であった。今回のような省令で紐付けることにより、一般送配電事業者の参入を促すことができる。そこで本スキームが組成され、以下のようなことが決められた。

 「改正電気事業法では、配電事業を営もうとする者は、経済産業大臣に対し、①配電事業の参入許可申請を行い3、許可後に、②引継計画の承認申請4と、③託送供給等約款の届出を行うことが必要とされた」5。託送料金については「託送供給等約款の届出時には、事業実施期間中の託送料金などの供給条件が適切であることの確認を行う6とされているが、託送料金については事業者が独自に届出・申請ができることになる。

 こうした配電事業ライセンスの地域は次世代スマートメーターにより、15分毎の計量値、5分毎の有効電力・無効電力量の計量・送信も可能となると思われる。

図 1 配電事業と指定区域供給制度の組み合わせによる4つのパターン
図 1 配電事業と指定区域供給制度の組み合わせによる4つのパターン
出所:資源エネルギー庁(2021)「第二次中間取りまとめ」、総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 持続可能な電力システム構築小委員会、2021年8月10日等をもとに筆者作成

3)配電事業と指定区域供給制度に係る4パターン

(1)パターンA:配電事業も指定区域供給制度も非適用のパターン

 一般送配電事業者による供給(いわゆる通常の供給形態)であり、自由化のなかで小売は自由に選べる。ここでのNW事業者の義務は一般送配電事業者が行い、小売としての義務は小売電気事業者が行うことになる。尚、小売事業者としての義務には電源計画や需要計画の提示、日々の需給管理、市場価格変動への対策、非化石証書の購入などの業務に加え、電気事業法に基づく法令遵守、消費者への説明といったものがある。

(2)パターンB:指定区域供給制度は非適用、配電事業が適用

 千葉県いすみ市、関電工、東京電力パワーグリッド 木更津支社の3者による地域マイクログリッド構築構想がある7

 京セラと鹿児島県知名町、和泊町の3者は、沖永良部島で配電網ライセンス制度により自営線の新設を行わず既存配電網を活用するマイクログリッドを構築8。九州電力送配電の沖永良部島の例ではDGR(デジタルグリッドルーター)を活用している。

 パターンBの事業では、基本的には一般送配電事業者の系統と常時接続する。非常時には一時的に系統を切り離すケースもある。小売は引き続き小売電気事業者が行い、需要家には小売の選択は自由である。自治体等が出資する「地域新電力」が独自の系統運用とサービス(託送料金メニュー、需給運用、災害時の対応)などで特色を出し、配電網の託送料金と小売り事業収入により収益性を確保する。

 地域マイクログリッドは、パターンBの型で推進され、当面は緊急時独立運用型、DERの運用技術が高まってきた段階で系統の混雑管理型の要素も入ってくるものと思われる。将来的には個別のマイクログリッドを接続し全体を管理するような形になり、グリッドエリア全体の重要かつ優先順位の高い負荷に対して継続的、かつ段階的に再生可能エネルギーが主導となるバックアップ能力等の向上が必要になるだろう。

(3)パターンC:配電事業は非適用であり、指定区域供給制度は適用される

 現状の離島における供給と同じ=ユニバーサルサービスとして、本土並みの料金水準で小売供給をする義務(離島等供給義務)が一般送配電事業者に課せられる。北陸電力の舳倉島において太陽光発電、蓄電池、EMSを組み合わせた取り組みなどがある。本土並みの料金水準のため、実際の供給コスト以下での電気の供給となる。(但し、仮に小売事業を行いたい事業者がいれば、参入はしても良い)。NW(ネットワーク)事業者の義務も小売としての義務も一般送配電事業者が担う。展開例としてはごく小規模な限界集落(仮に需要が増加する見込みがあるなら、線を繋いだほうがメリット大のため)となる。一般送配電事業者が電源を設置することで、その地域の配電線を除去することができるので、配電線のメンテコストなどが削減される。また、配電系統が伸びていたことによる災害時の電柱倒壊などが回避可能である。

 一般送配電事業者による接続型マイクログリッドの運用(パターンA)だと優先回復や周波数逸脱許容などの独自ルールでの運用が難しくなるが、このパターンCだと異なる約款が適用できるため一般送配電事業者の管理でも独自運用が期待できる。

(4)パターンD:配電事業は適用、指定区域供給制度も適用

 離島等に新たに配電事業者が参入するのと同じイメージであり、電力量調整供給や周波数維持等を委託せず、自ら実施することから発電事業ライセンスの取得も必要になる。本土の系統並みの料金水準で小売供給する。NW事業者の義務は一般送配電事業者に残りつつ、託送供給等のNW事業者の義務は配電事業者が負う。ネットワークミスの責任は配電事業者(技術)にあり、小売り事業者としての責任(消費者への説明)は一般送配電事業者(上と同じ事業の事もあり)にある。 配電事業者が独自の系統運用で地域特性に応じた供給をしつつ、配電線のメンテコストなどが削減できるメリットがある。また、災害時の電柱倒壊などが回避可能である。

2.系統設備形成の最適化事例-南福光連系所のBTB廃止検討

 中地域3社の地域内連携の強化を行い、運用を拡大するために、中地域3社交流ループの増強と更新時期を迎えた南福光連系所の廃止がなされる予定(2026年目処)である。本連系所は同一周波数(60Hz - 60Hz)の交直変換装置(BTB: Back to Back)で、平成11年3月(1999年3月)から北陸 - 中部電力間でBTB経由での融通が開始された。BTBのメリットは、交流と異なり、流通する電力の量を直流DCの容量設定で設定可能であることから、送電量調整ができ双方で安定した運用ができることである。BTBとなった背景には、1965年の関西電力御母衣の開閉所事故で9、関西電力の70%の需要家が停電するという事故の影響もあった10。このループを用いない放射状系統は長らく運用された。南福光連系所も、中地域3社の系統がループになり広域停電となるのを防ぐ役割を担う。

 2011年3月の東日本大震災までは、北陸電力志賀原発の電力を24時間365日、中部電力方面へフルに送電していたが、2011年3月以降の稼働率は高くなかった。300MWのBTBの廃止により、北陸電力から東日本に送電するためには、代わりに交流の連絡母線2本が常時連系し、能登半島を含む石川県北部の再エネ、志賀原発が再稼働した場合等の電力が、中部の越美幹線及び飛騨直交変換所を経て東京電力方面に送電されることになる。関西方面へは黒部ダム等の水力を運ぶ北陸幹線の大部分が廃止され、これもループ交流系統の中に吸収されることになる。

 この工事の対策費用は電磁誘導対策や遮蔽器の遮断、容量増加システムの回収で、数十億円程度とされている11。またN-2故障時における供給信頼度の向上や、上記の運用容量の増加などの面でメリットがあるとされている12

図 2 中地域3社連携による取り組み(設備形成の最適化)
図 2 中地域3社連携による取り組み(設備形成の最適化)
出所:北陸電力送配電(2022年4月12日)「ネットワークの次世代化に向けた取組と課題」系統ワーキンググループ 第38回 資料2-1に追記

3.終わりに 直近と今後の議論

 2022年7月13日の再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 において、北海道~東京/東北ルートの海底直流送電(HVDC)のルートや北海道の洋上風力を地内系統へ接続するケースがよいのか、多端子で接続するケースがよいのか、について議論された。また、HVDCを含む地域間連系線等をどのような事業体制で、どのように費用回収するのか(社会的便益のうち、安価な電力の広域流通を実現する価格低下効果は一般送配電9社の託送料金及びJEPXの値差収益による負担、CO2削減は再エネ特措上の賦課金方式による負担、停電率減少などの安定供給は各地域の託送料金負担)?が議論された。弱い系統の部分は、短期的にはプッシュ型ノンファーム、再給電、デマンドレスポンス、蓄電池、マイクログリッドなどを組み合わせて対応し、同時に中長期的な観点から送配電設備の増強を行うことになる。

 今後、再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会など審議会では、電力ネットワークの次世代化のトピックとして発電側課金の問題、さらに自己託送スキームによる「オフサイト型コーポレートPPA」など重要な問題が討議されることになる。なお、オフサイトPPAは、電気事業法上の「自己託送」の中で、再エネ電源の主体と需要家に間に「密接な関係があるグループ内融通」という形でいったん、整理されたが、このビジネスモデルに対する再エネ特措上の賦課金の徴収をどうするのか?なども含まれると思われる。

謝辞

 本稿の作成に当たっては、中部電力パワーグリッド様、北陸電力送配電株式会社様、株式会社日立製作所様には、南福光BTB等施設見学、意見交換等でご協力をいただいた。この場を借りて御礼申し上げます

参考文献

  • 資源エネルギー庁(2021)「第二次中間取りまとめ」、総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 持続可能な電力システム構築小委員会、2021年8月10日
  • 鈴木浩(2020)「電力系統と電力系統技術発展の系統化調査」、国立科学博物館技術の系統化調査報告、Vol.29 2020 March.
  • 中部電力株式会社、北陸電力株式会社、関西電力株式会社「広域需給調整の概要について」(2020年3月12日)
  • 電力広域的運営推進機関(2021)「マスタープラン検討に係る中間整理」、広域連系系統のマスタープラン及び系統利用ルールの在り方等に関する検討委員会事務局、2021年5月20日
  • 長山浩章(2021)「我が国における再生可能エネルギー政策の動向」、生活協同組合研究、Vol.551 pp.22-38

1 (一般社団法人)カーボンニュートラル推進協議会 https://carbon-neutral.or.jp/
2 長山(2021)の一部を改稿
3 配電事業の参入許可申請は、地方公共団体等が申請をすることも考えられるが、配電事業者は株式会社であることが必要であるため、事業開始までに株式会社を設立する必要がある。(出所:資源エネルギー庁(2021))
4 一般送配電事業者から設備の譲渡又は貸与を受けて配電事業に参入する場合は、「引継計画」の作成が必要である。(出所:資源エネルギー庁(2021))
5 資源エネルギー庁(2021)
6 資源エネルギー庁(2021)
7 関電工(2021年7月15日)「いすみ市地域を対象とする地域マイクログリッド構築事業について」https://www.kandenko.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/07/20210715isumilh5b7fbzh0etr6f5zgtu.pdf
8 https://www.kyocera.co.jp/newsroom/news/2021/001676.html
9 「関西電力の(当時の)主要電源であった水力発電の大半が脱落し、系統周波数の大幅な低下によって他電力会社の連系分断とエリア内の火力電源の脱落を招いたために、深刻な停電が発生した。」鈴木浩(2020)
10 「また、資料としては残っていないが、「系統計画金言集」もつくられ、関西電力の系統計画の中心的考え方となった。例えば、電源線を途中、変電所で分岐してはいけない。山から里まで来る大きな送電線から分岐をしてはいけない。電源線と連系線を分離する、また、系統構成として、ループ系統はつくってはいけない。放射状の櫛形系統にすることなどである。」鈴木浩(2020)
11 電力広域的運営推進機関(2021)
12 電力広域的運営推進機関(2021)