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No.68 フィンランドにおける自治体出資エネルギー会社と自治体財政について
- ヘルシンキ市の事例を通じて -
2024年3月
鈴木 伸
京都大学大学院経済学研究科 博士後期課程
近年日本では電力自由化に伴う地域新電力の登場により、自治体の財源としてのエネルギー事業が注目されている。その制度設計の参考としてドイツのシュタットベルケが注目されているが、他の国での同様な組織体の研究が少ないため、本ディスカッションペーパーではフィンランド・ヘルシンキ市における市が所有するエネルギー会社であるHelen Oyの財務を分析した。はじめにフィンランドの自治制度である「自治体コンツェルン」を紹介した後、Helen Oyの歴史を整理した。次にヘルシンキ市と自治体コンツェルンの財務の分析と、コンツェルン内でのHelen Oyの位置づけを確認した。そして2017~2022のHelen Oyの財務を売上、費用の面から分析し、ウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格高騰の影響と売電部門と熱供給の収益の比率が大きいことを明らかにした。最後に考察としてHelen Oyが自治体財政に対する重要性を示した上で、日本の制度へのドイツのシュタットベルケとは異なるモデルとしての自治体コンツェルンの可能性を示した。
キーワード:フィンランドにおける再エネ、地域新電力、シュタットベルケ、公営エネルギー、自治体財政