Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

本講座(第2期)は、2024年3月31日をもって終了いたしました。

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第二期 京都大学再生可能エネルギー講座
キックオフ・シンポジウム

プログラム

日時:2019年3月21日(木・祝)
会場;京都大学芝蘭会館稲盛ホール(シンポジウム)、山内ホール(パーティー)

[Ⅰ]第2期キックオフ・シンポジウム(13:00-17:30)

主催者あいさつ(13:00-13:20)

1) 江上 雅彦(京都大学大学院経済研究科科長)
2) 須藤 豊 (エネルギー戦略研究所株式会社代表取締役社長)
3) 伊藤 宗博(株式会社ガスアンドパワー代表取締役社長)
4) 諸富 徹 (京都大学大学院経済学研究科兼地球環境学堂教授)

第1部 基調講演(13:20-14:20)

橘川 武郎(東京理科大学教授)

【休憩10分】

第2部 研究内容をめぐる議論(報告20分、助言15分、計35分×3=105分、14:30-16:30)

【1】研究部門A
報告者:安田 陽 (京都大学特任教授)
助言者:原田 達朗 (九州大学教授)

【2】研究部門B
報告者:スミヤ-ヨーク・ラウパッハ (立命館大学教授)
助言者:山下英俊先生(一橋大学准教授)

【3】研究部門C
報告者:李秀ちょる先生(名城大学教授)
助言者:増井利彦先生(社会環境システム研究センター[統合環境経済研究室]室長)

【休憩10分】

第3部 パネルディスカッション(第2部登壇者全員+橘川先生、コーディネーター:諸富、16:40-17:30)

1)助言者のコメントを受けての報告者のリプライ(3分×3名=9分)
2)橘川先生からのコメント(5分)
3)助言者の追加コメント(3分×3名=9分)
4)以下、終了時刻まで諸富のコーディネートで自由討議

[Ⅱ]第2期再エネ講座キックオフ記念パーティー(18:00-20:00)

芝蘭会館山内ホール

議事録

2019年3月21日(木)

於:京都大学医学部創立百周年記念施設 芝蘭会館稲盛ホール

キックオフシンポジウム 2019年3月22日(木)13時~17時30分、第2期再生可能エネルギー経済学講座 キックオフ・シンポジウムが、京都大学にて開催されました。今回のシンポジウムでは、第1部で東京理科大学の橘川先生に基調講演をしていただき、第2部では部門AからCの部門代表者から今後5年間の研究計画についてご報告がなされ、助言者の3人からコメントがなされました。

第1部 基調講演

・再生可能エネルギー主力電源化への道 橘川武郎様(東京理科大学)

 人類の飢餓の解決には豊かさが必要なので化石燃料の消費が必要になるが、温暖化に対応するためには化石燃料の使用を抑制せざるを得ない。やるべきことは省エネとゼロエミッションの電源を使う必要がある。原発には使用済み核燃料の処理という未解決問題があるので、再エネを最大限導入することが重要となる。

 日本の電力会社のコアコンピタンスは発電力ではなく系統運用力なので、太陽光・風力が入ってきたらラッキーだ。電力会社は高いから送電線をつくらないというが、法的分離をしてもネットワーク部門は総括原価が残る。かかった料金はコストで取り返せるので、送電線をつくるという解は十分にありえる。世界中でESG投資が言われている。太陽光・風力のための、逆潮のための送電線をつくるという投資がこれほどぴったりのものはない。株価・社債がよくなれば、つくる可能性は十分ある。

 分散型電源・ネットワーク重視型の経営では、再エネを再エネで調整するのが有効だ。蓄電池・火力ではなく、ダム式水力や揚水を使う。電気を熱で、再エネを再エネで調整すれば、電気を電気で調整するから再エネは高いという従来の考えを払拭できるのではないか。熱、分散型、再エネの主力電源化に取り組んだエネルギー事業者が生き残るだろう。

第2部 研究内容をめぐる議論

安田:部門Aでは電力系統の解析・需給バランス解析を行う。障壁研究も盛り込みたい。託送料金が本来あがってもいいはずという問題提起もしたい。

原田:ネットワーク料金が上がっても、発電部門で競争が起きればトータルで電気料金が下がる可能性がある。期待している。

ラウパッハ:部門Bでは、
1 地域経済社会への影響と地域発展モデルの定量分析
2 地域レベルの転換の担い手のあり方。
3 地域ガバナンスのあり方
を行う。さらに公共価値理論に注目している。

山下: 日本では地域主導が少ない。システムが集権的なままでは技術だけ分散型でも解決できない。ドイツとの前提条件との違いを考慮して、日本に何が言えるか考えてほしい。電力事業に対応する実績を持つ事業体がない。政策論的にはどのようなアウトプットを想定しているのか考えてほしい。

李:部門Cでは、エネルギー構造転換のマクロ経済・産業影響及び政策手段を研究する。研究目的は、脱炭素社会実現に必要な炭素価格の推定だ。E3MEモデルは、CGEとは異なる前提に基づいている。

増井:結果に至るメカニズムの説明を丁寧に行い、ブラックボックスに思われないことが大事だ。多様な将来像の分析(ロバストな施策の検討)も必要だ。需要側の行動変容の効果も考慮するべき。豊かでもエネルギーは消費しないという未来が来る。2050年ゼロを実現するロードマップも提示してほしい。IPCCへも貢献してほしい。

第3部 パネルディスカッション

橘川:対抗仮説と比較した場合の、再エネ導入ケースに相対優位があるのかどうかまで踏みこんで分析してほしい。日本には、1960年代には810もの協同組合があったが、それらを効率化した歴史がある。温室効果ガス排出量ゼロ目標は現実性があるのか。国内ではなく海外も含めたものか。

諸富:定量分析に力を入れたい。これまで日本ではそのような研究は多くない。これから政策選択をするときには、海外の比較分析もするが、日本の状況を踏まえた分析もする。前提・シナリオ自体のリアリティも検討したい。