Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

本講座(第2期)は、2024年3月31日をもって終了いたしました。

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2019年5月27日(月)の部門B研究会 議事録

2019年5月27日(月)17時から20時
於:京都大学国際科学イノベーション棟 4FミーティングルームC・D

 上記の通り開催された今回の研究会では、立命館大学のラウパッハ先生、京都大学地球環境学舎修士課程の坂本さん、京都大学の中山先生の計3名よりご報告いただきました。本書は、その要約記録です。

日本とシュタットベルケの財務分析に基づく考察

坂本祐太さん

発表資料 本報告は、シュタットベルケ(以下SW)と日本の公営企業・第三セクターの財務諸表比較を行うことで、それぞれの事業体としての構造および経営の状況を明らかにすることを目的とした。比較の対象となる事業区分は、「水道」「交通」「エネルギー」「下水道」「ごみ処理」「通信」である。SWと日本を比較すると、補助金を除いた場合、SWは日本よりも収益性は低いが効率性が高いことが分かった。その要因として、事業数当たりのキャッシュベース利益をSWはプラスを計上していることが指摘されるが、そこにはSWの減価償却費負担が少ないことがあり、引いては総資産規模の小ささに由来する回転率の高さがあった。つまり、SWは日本と比較して少ない固定資産で高い収益を生み出していることが分かった。最後に、このような経営的相違を生み出している要因分析を今後の研究課題とした。

ドイツのシュタットベルケのガバナンスとPublic Value

ラウパッハ先生

発表資料 本報告は、公企業のガバナンスとパフォーマンス評価の問題についてドイツのシュタットベルケ(以下独SW)の事例検討を行うことを目的とした。独SWは、生存配慮の責任と、事業の内部相互補助と赤字補填を特徴とするビジネスモデルによって各種公共サービスを提供している。そして非常に競争的な環境において、高いシェアを占めている。それを可能にしているガバナンスは、民の面と公の面の二面性を指摘できる。つまり、行政の関与と民意による監督を可能にする制度やツールと、一方での経営効率の追求の両立である。ただし、無駄な経費や監督機能の不充分さ、一方での過剰な干渉等による非効率的な経営に陥るリスクが高まっており、非債務的なアウトカムの管理が求められている。そこでPublic Value概念が着目され、理論的な研究成果を蓄積しつつあり、更に実践例もあることが紹介され、その発展が今後の研究課題として示された。

村レベルの再生可能エネルギー100%シナリオと地域付加価値創造―西粟倉村における発電・熱供給事業

中山先生

発表資料 本報告は、岡山県西粟倉村の再エネ事業が生み出した付加価値の推計を通じて、再エネ事業の可能性を分析することを目的とした。西粟倉村が取り組んでいる小水力発電事業は、総合して投資や設備維持に必要な費用を上回る付加価値を地域に創造していることが明らかになった。太陽光発電事業についても、採算性は確保できており、両事業ともに地域に大きな価値を生んでいる。また木質バイオマスによる熱供給事業については、事業開始後6年目には投下した補助金以上の付加価値を地域に生み出すことが示された。以上3事業の検討から、山間地域における再エネ事業は地域経済の持続可能な発展に寄与しており、更には100%自給シナリオも将来的に実現可能なものとしてシミュレートされた。