Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

本講座(第2期)は、2024年3月31日をもって終了いたしました。

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2019年6月24日(月)の部門C研究会 議事録

2019年6月24日(月)
於:京都大学法経済学部東館 地下1Fみずほホール

 2019年6月24日(月)17時〜20時、再生可能エネルギー経済学講座部門C研究会が、京都大学にて開催されました。今回は、京都大学経済学研究科博士課程のDellatte Josephさん、京都大学経済学研究科の諸富先生、京都府立大学公共政策学部の川勝先生よりご報告いただきました。

Linking ETSs in East Asia: Process, Alignments and Reforms

Dellatte Josephさん

Dellatteさん 本報告は、東アジア3カ国に存在する現行の排出量取引市場がお互いにリンクできるかについて討論することを目的とした。パリ協定は、各国の排出量削減目標を達成するために各国の緩和策として協調的アプローチを概説していた。将来の潜在的な関係について、日本、中国、韓国の間ですでに議論が行われている。日本(東京都・埼玉県)、中国、韓国の排出量取引市場の歴史や現状が紹介されて、「キャップ」、「カバーする範囲」、「コンプライアンス」、「割当」、「柔軟性メカニズム」、「価格管理メカニズム」、「罰則」、「オフセット」などの要素を比較して、また将来の潜在的な関係を考慮すると、3カ国の関係性にリンクすることが推奨されると指摘がされた。しかし、リンクする前に、環境的野望、実施段階、キャップの種類、配分、オフセットなどの相違点について注意されるべきだとも言われた。最後に、3カ国の排出量取引市場の連携的なの枠組みを提案した。

pdf発表資料(7.17MB)

環境省カーボンプライシング小委員会における最近の議論について(CPの日本経済へのインパクト)

諸富先生

諸富先生 本報告は、環境省カーボンプライシング小委員会の最近の議論を紹介して、カーボンプライシングが経済成長に寄与する可能性を探ることを目的とした。約10年前の議論の中で、人々はカーボンプライシングと経済成長は共存できないと考えたが、現在ではカーボンプライシングがむしろ成長と両立することが、国際的にほぼコンセンサスになりつつあるため、小委員会は気候変動問題と経済・社会的課題の同時的な解決の可能性に関する議論を再開した。しかし、背景として現在日本は労働生産性と炭素生産性の両方とも国際的見て非常に低い水準にある。この問題を解決するために、労働生産性を高めていくための最低賃金制度の導入と炭素生産性を引き上げるためのカーボンプライシングの導入、実は気候変動政策と産業・経済成長政策が並行して求められることを意味すると指摘された。

pdf発表資料(1.1MB)

北米のカーボンプライシングに関する研究成果と今後の課題
(カナダの事例を中心に)

川勝先生

川勝先生 本報告は、カナダの事例についての議論を通じて、環境連邦制度が地球規模の気候変動解決に向けた行動方針を補完する重要な要素になり得るかどうかを評価することを目的とした。最初に北米のサブナショナルカーボンプライシング(以下S-CP)に焦点を当てた。ブリティッシュコロンビア州は、S-CPを実施して、経済や所得分配に悪影響を及ぼすことなく、一人当たりの温室効果ガス排出量を10%削減することに成功し、持続可能な目標を達成している。S-CPはいくつかの問題があるが、地域から発生する行動は近隣地域をある程度促進する可能性があり、地方からの行動は国の行動を補完する貴重なものになる可能性もある。次に、カナダの垂直的協調的CPと、このCPから日本がどのようなアドバイスを得ることができるかは、今後の研究課題として示された。

pdf発表資料(885.87KB)