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2019年8月26日(月)の部門B研究会 議事録
2019年8月26日(月)15時から18時
於:京都大学法経済学部法経東館B1F みずほホール
上記の通り開催された今回の研究会では、EY新日本有限責任監査法人の関隆宏様と松村隆司様、横浜市立大学の宇野二郎先生の計3名よりご報告いただきました。本書は、その要約記録です。
将来推計から見る日本の公営企業の課題と先進的な取組事例
EY新日本有限責任監査法人
関 隆宏 様
松村 隆司 様
本報告は、日本の公営企業のうち上下水道とガス分野における経営環境について、ケーススタディを通じてその現状と課題を明らかにすることを目的としたものであった。上下水道は、厳しい収益環境と職員減少、高年齢化による組織の脆弱化の一方で老朽化が進む水道設備の更新をしなければならない状況にある。その解決策の一つとして、広域化が採られている。広域化によって、個別事業体のままの場合に比べて、水道料金を改善できる自治体が多くあることが推計された。ただし改善には地域間格差が存在しており、人口規模が大きいほど広域化によって水道料金は悪化することも指摘された。また複数の広域化やコンセッションの検討事例が報告され、いずれの選択肢にしても、見える化と住民を巻き込んだ議論の必要性が提起された。公営ガスは、市町村合併と自由化を契機として、公務員の定員削減とプロパー職員の減少による技術継承が課題となり、その解決のために事業譲渡とコンセッション方式が加速している。大津市企業局のケースでは、コンセッション方式を導入し、大津市によるモニタリングを行いながら、サービスの向上と公共水準の確保の両立を目指す取り組みが紹介された。
pdf発表資料(3.12MB)
制度としての地方公益企業―地域志向と環境配慮の視点から
横浜市立大学 宇野 二郎 先生
本報告は、日本独特の制度である地方公営企業法の制定経緯とその変遷について、起点であった水道事業を対象として見ていくことが目的であった。水道事業は、市町村公営が原則とされ、その下で発展した大都市水道事業のあり方が戦後の独立採算性と直営方式を主な内容とする地方公営企業法に影響を与えたという。公営水道のモデルとされた東京市の水道事業をケースとすると、慢性的な水不足を抱えていた当該地域では安定供給が最優先課題とされ、起債を財源とした拡張事業が進められ、東京オリンピック直後が需要のピークであった。東京都はその財源を水道料金によるファイナンスで賄う方式を採用し、その他の大阪市のような大都市との相違が見られた。水道事業は典型例であるが、それ以外の公営企業をみた場合、地方公営企業にはいわゆる「当然適用」で独立採算のものから、税金で賄うものまで幅が存在している。そこにおいて、例えば事業間の内部補助を考えると、日本の地方公営企業法の有する課題は何か、継続して議論すべき多数の論点が提起された。
pdf発表資料(1.26MB)