Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

本講座(第2期)は、2024年3月31日をもって終了いたしました。

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2020年2月17日(月)の部門B・C合同研究会 議事録

2020年2月17日(月)17時から20時
於:京都大学法経済学部法経東館8F リフレッシュルーム

 上記の通り開催された今回の研究会では、高崎経済大学の西野寿章先生と、Cambridge EconometricsのUnnada Chewpreecha様の計2名よりご報告いただきました。以下は、その要約記録です。

日本地域電化史にみられる地域ガバナンス、エネルギーコミュニティと現代的応用への検討
-岐阜県宮村営電気、長野県三穂村営電気、長野県竜丘電気利用組合を事例として-

西野寿章先生

 本報告は、地域が再エネ発電事業を推進する際の合意形成、地域ガバナンスのあり方について、第二次世界大戦前の日本における3つの村営電気事業の成立過程を通じて検討することが目的であった。第1のケースは岐阜県宮村の村営電気、第2のケースは長野県三穂村の村営電気、第3のケースは長野県竜丘村の電気利用組合であった。いずれのケースも世帯数約300で1910~20年代に35/40kWという小水力発電を開発した点、その背景に養蚕における石油ランプの火災リスクと、電灯会社の横暴があった点は共通していた。しかし、設立に際しての1世帯当たり負担額が大きく異なっており、宮村は村有財産が利用されたのに対して、三穂村は全額指定寄附で、竜丘村は全額組合員の出資と借入金で賄われた。そこには村落構造も関わっており、宮村は自作や自小作農が多く中堅層が形成され、竜丘村も繭と生糸の生産で比較的富裕な地域であったのに対して、三穂村は小作や自小作農が多く農家間格差が大きかった。これらの事例から、地域住民に共通の関心が合意形成に果たす役割の大きさ、収益の使途、地域的課題の解決にあることが指摘された。

pdf発表資料(3.7MB)

Can the EU achieve near 100% renewables?:What are the obstacles and roles of policy interventions?

Unnada Chewpreecha様

 本報告は、再エネの拡大が進んでいるEUにおいて、今後の更なる拡大のためには何が必要なのかという問いの検討であった。特に100%を実現するためには、いくつかの化石燃料は利用し続ける必要があるため、CCS(carbon dioxide capture and storage)の活用とバイオエネルギーの利用等は不可欠である。また実現に向けて数々の課題に直面している。一部は電化や化石燃料を原料としない生産方法の開発といった技術的なものであるが、消費者意識の変化や、既存電力システムの改善が挙げられた。その実現に向けた検討として、報告内ではスウェーデンが挙げられた。スウェーデンは、2040年までに消費電力の100%を再エネで賄う目標を掲げている。ただしスウェーデンは、電力生産のおよそ半分が原子力由来であり、しかし水力の追加キャパシティの不足、バイオエネルギー拡大への懸念があるかなで、そのフェーズアウトにおいて脱化石燃料は維持可能なのかという課題がある。他にも運用上の諸々の課題や、政治的・経済的・社会的課題が挙げられたが、気候変動のリスクが無視できないほど甚大なものになっていることが明白になっているなかでは取り組まないという選択肢はなく、その実現のためには政策が求められている。

pdf発表資料(3.96MB)