Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

本講座(第2期)は、2024年3月31日をもって終了いたしました。

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2021年5月31日(月)の部門B研究会 議事録

2021年5月31日(月)16時から20時
於:Zoom会議室(オンライン)

 2021年5月31日(月)16時~20時、再生可能エネルギー経済学講座部門B研究会が、Zoomオンライン会議にて開催されました。特別講演では京都大学大学院再生可能エネルギー経済学講座 安田陽特任教授から、研究会では宇都宮市環境政策課 篠原武志様、静岡大学 太田隆之准教授よりご報告をいただきました。

国際規格制定の現場から
~風力発電耐雷設計専門家会合の事例を中心に~

安田陽先生

 これまで数多くの国際規格制定の現場で活躍されてきた安田先生より、ご自身の体験などを踏まえ、国際規格制定のプロセス、日本の課題とその対応などが報告された。

 前半は「規格」「標準化」の定義やその意義が解説され、国際規格と国家規格との関係などが整理された。また、国際規格と日本の法令との関係について解説されるとともに、規格と法令体系のギャップがある旨の指摘があり、規格と法令で用語が異なる例も多いことが紹介された。

 後半は、国際標準化機構(ISO)と国際電気電子標準会議(IEC)、国際電気通信連合(ITU)の関係について歴史的経緯を踏まえての解説があった。また、国際規格策定プロセスが紹介されるとともに、国際規格に日本の意見を反映させるための国内体制が紹介された。また、実際の国際規格策定に向けた議論の現場でのお国柄の違いなども紹介された。

 最後に日本の課題とその対応についてのまとめがあり、①技術リスク・法務リスク増大を防ぐとともにガラパゴス製品になることを避けるため、規格の変化をウォッチする必要があること、②規格制定の議論に参画することが必要であること、③「ものづくり」と同時に「しくみづくり」に関与することが必要であることなどが提言された。

pdf資料(安田)(2.55MB)

地域新電力を中心とした持続可能な脱炭素モデル都市構築

篠原武志様

 前半では、宇都宮市の課題(将来の人口や人々の活動に見合った「都市構造」への転換)やその対応としての施策(LRTやバスを組合せた交通ネットワーク等)について紹介があった。

 後半では、LRT沿線の低炭素化を促進が目指されていること、そのための手段として地域新電力設立が予定されていることなどが紹介された。地域新電力は、家庭用太陽光発電の卒FITや市所有のごみ発電の電力を買い取り、公共施設やLRTへ供給するとともに、事業収益を地域還元していく構想となっている。地域新電力による効果として、①市の事務事業に係るCO2排出削減、②地域に留まるお金の増加、③雇用創出、④LRTをゼロ・カーボン・トランスポートとしてブランディングできること、⑤公共施設の電気代削減などが挙げられた。更に、今後のVPP(バーチャルパワープラント)事業などにおいても地域新電力が中心的な役割を果たすことが想定されているとした。

pdf資料(篠原)(5.86MB)

近年の公営電気事業の現状と課題に関する調査研究報告

太田隆之先生

 人口減少下における地方公営企業は地方における主要課題の1つ。しかし主に議論されているのは上下水道、病院事業などであり、公営電気事業はほとんど議論されてきていない。また、電力システム改革の進展など公営電気事業の経営環境が大きく変化している状況である。

 そのため本研究は、公営電気事業の事例調査を行うことで、①公営電気事業の現状と課題の所在と対応等を把握し、②今後の公営電気事業の経営等に示唆を示すことが目的とされた。

 岩手県、富山県、長野県、島根県、神奈川県を分析事例として経営比較分析などが行われ、各県の公営電気事業の経営状況などが整理された。また、各県の売電収入の推移、一般競争入札の導入、FIT活用状況、インフラ更新・改修問題対応、売電価格問題対応、地域貢献問題対応についても整理がなされた。

 最後に、①CO2排出ゼロを国の目標にするならば、水力発電の更新の必要があり、競合状態にある部品調達、人員確保に対して国から何らかの支援があってもいいのではないか、②「企業性」の発揮、「経済性」の実現は重要であるが、経営面のパフォーマンスが(一定期間)悪いことをもって電気事業の民営化を即検討することには慎重であるべきといった見解が示された。