Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

本講座(第2期)は、2024年3月31日をもって終了いたしました。

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【2月28日(水)オンライン開催】
第10回公開研究会(高橋産業経済研究財団助成研究)
『脱炭素先行地域によるまちづくり』

2024年2月28日 脱炭素まちづくりシンポジウム議事録

 2024年2月28日、脱炭素先行地域に選定されている上田市、高山市、宮古市の3つの自治体をお招きし、将来の脱炭素化とその取り組みを通じてどのようにまちづくりを進めていくのかを探るシンポジウムを行った。シンポジウムでは初めに3つの自治体よりそれぞれの取り組みをご講演いただき、後半に京大側チーム3人から日本版シュタットベルケに関する調査研究の発表を行った。

※システムトラブルにより予定していたタイムテーブルより変更がございます。

NPO法人上田市民エネルギー理事長 藤川まゆみ様

 NPO法人上田市民エネルギー理事長の藤川様より、「第4回脱炭素先行地域-ローカル鉄道と市民がともに支え合う『ゼロカーボン×交通まちづくり』」というタイトルでお話いただいた。同NPO法人は上田市や地元企業・組織とともに、市内を走る上田電鉄別所線とエネルギー供給を絡めた事業計画を共同提案し、脱炭素先行地域に選ばれた。中でも沿線地域での太陽光発電や自営線と蓄電池を生かしたエネルギーマネージメント、電力小売りの詳細についてお話ただいた。また計画において取り組む、別所線の利用者減と経営悪化、高いマイカー依存、市街地のスプロール化、スポンジ化といった地域課題に関する背景についてもお話いただいた。その解決策としてラストワンマイルの整備や、鉄道の運賃低減を通じたモビリティーマネジメントを通じ、市のCO2排出で約31%を占める運輸部門の脱炭素を進めていく展望をお話いただいた。

高山市飛騨高山電力株式会社 代表取締役 井上博成様

 高山市の井上様より「岐阜県高山市での脱炭素先行地域の取り組みとこれまで自身の森林における取り組み」というタイトルでご発表いただいた。はじめに井上様ご本人の原体験および背景から生まれた森林資源と木質バイオマス発電に対する課題意識と自身の営む事業にお話いただいた。また井上様の市への働きから始まった高山市の自然エネルギーを活用したまちづくりについての経緯を述べられた。さらに脱炭素先行地域に応募した計画をご自身が営まれてきた木質バイオマス・小水力発電事業と絡めながらお話いただいた。事業を営む上での合意形成や取り組み実施のフローをお話いただいた。そしてその取り組みとご自身の研究についての関わりをお話いただいた。最後に取り組みの全体像と展望で締めくくられた。

宮古市エネルギー・環境部 三上巧様

 宮古市エネルギー・環境部の三上様より、「岩手県宮古市の脱炭素に向けた取り組み~再生可能エネルギーで持続可能なまちへ~」というタイトルでお話いただいた。はじめに東日本大震災を背景とした再エネを軸とした復興プロジェクトとして、これまで市が行ってきた宮古発電合同会社、宮古新電力株式会社、市内公共施設・事業者の連携による再エネ地産地消の仕組みづくりについてお話ただいた。それを踏まえ、これからの取り組みとして、市のエネルギー政策と宮古版シュタットベルケの確立による地域内経済循環の創出の展望をお話いただいた。さらに宮古市の脱炭素先行地域の計画提案を踏まえながら、市が行っている取り組みと市役所内での推進体制ならびに脱炭素地域づくり協議会を中核とした連携体制についてご紹介いただいた。

京都大学チーム
静岡大学 太田先生

 太田先生より「脱炭素化を図る上での公営電気事業の役割と機能の検証」というタイトルでお話いただいた。初めに報告までの概要と地方公営企業・地域における主要課題としての脱炭素化の背景とそれにまつわる議論についてご説明いただいた。まず初めに、地域課題の解決において組織体制と知の集積の重要性について問題提起いただき、長野県と山梨県の事例をご紹介いただいた。山梨県における企業局と民間企業との連携による水素エネルギー活用についてお話いただいた。次に長野県の取り組みとして企業局が地域主体を取りまとめて小水力開発を行っている事例をご紹介いただいた。そして両者の事例から池上淳が提起した「インフラストラクチャー」としての公営電気事業の議論を展開された。

広島修道大学 白石先生

 白石先生より「日本版シュタットベルケ」とケーブルテレビ事業の可能性というタイトルでご発表いただいた。まず研究背景として、今までのご自身のドイツ・シュタットベルケの概念研究を踏まえ、日本版シュタットベルケを具体化する事業モデルにおいて電力だけではなく、ケーブルテレビ事業にそれを担い得る可能性があるのではないか、という仮説提起をご説明いただいた。そのケーススタディとして、鳥取県西部地域を商圏に持つ中海テレビ放送の事例をご紹介いただいた。そして日本版シュタットベルケへの提言として、サービスの総合性と地域間関係でとらえていく必要性をお話いただいた。そして最後に日本においてはドイツとは異なる「シュタットベルケ的協働」の概念を提唱された。

京都大学経済学研究科博士後期課程 鈴木伸様

 鈴木様から「フィンランド自治体財政における公営エネルギー事業―日本版シュタットベルケへの示唆」というタイトルでお話いただいた。はじめに日本版シュタットベルケの検討において公営エネルギー事業の役割が重要であり、また研究課題として世界各国の事例研究が重要であることを説明された。その上でフィンランドの事例は「自治体コンツェル」と呼ばれる公営事業・自治体出資企業の集合体で自治体経営と自治体出資のエネルギー事業についてお話いただいた。そしてオウル市の事例を通じて、日本版シュタットベルケへの示唆として、フィンランドの自治体コンツェルと日本の自治体経営の類似性から、日本における自治体コンツェルンの検討が課題ではないか、という展望をお話いただいた。



※冒頭、通信トラブルのため進行が乱れたところがございます。ご了承ください。

 カーボンニュートラルに向けて、脱炭素先行地域の選定が進み、全国的にも「カーボンゼロシティ」宣言を行う自治体が増えつつある。なかでも先進的な自治体は、環境目的のみで脱炭素先行地域の取り組みを行うのではなく、魅力ある都市・地域づくりの一環として行っている点に特徴がある。これらの自治体は、事業を進める事業体/事業主体の創設を求められる。再生可能エネルギーを供給する地域新電力を中核に、まちづくりを担う主体を育んでいる事例が増えつつある。「日本版シュタットベルケ」とも呼ばれるこうした動きを検討していくにあたり、こうした先進的な自治体の事例を見ていくことは重要であろう。

 本シンポジウムでは、以上の点で先進的な取り組みを行っている脱炭素先行地域の高山市、上田市、宮古市の担当者をお招きし、事業のエッセンスをお話しいただくとともに、とくにその事業体/主体形成に焦点を当ててご報告を頂く。また、京都大学側研究チームからも日本版シュタットベルケに関する学術研究の成果を発表し、その後に、全体討論を通じて脱炭素先行地域地域を通じたまちづくりと、日本版シュタットベルケの可能性/将来像についてディスカッションを行い、参加者とともに考える機会としたい。

1.主催

京都大学再生可能エネルギー経済学講座

2.開催日時

2月28日(水)
16:30 - 19:30 <オンライン開催>
※事前予約が必要です。後記のURLからお申込みください。

3.プログラム(敬称略)

16:30 - 16:35
挨拶:諸富徹(京都大学経済学研究科)

第1部:3つの自治体からの脱炭素先行地域のまちづくりに関する事例発表

16:35 - 16:55
井上博成(飛騨高山電力株式会社 代表取締役)
「岐阜県高山市での脱炭素先地域の取り組みとこれまで自身の森林における取り組み」

pdf資料1-1(井上博成)(3.92MB)

16:55 - 17:15
三上巧(宮古市エネルギー・環境部 部長)
「岩手県宮古市の脱炭素に向けた取り組み~再生可能エネルギーで持続可能なまちへ~」

pdf資料1-2(三上巧)(6.37MB)

17:15 - 17:35
藤川まゆみ(NPO法人上田市民エネルギー 理事長)
「ローカル鉄道を市民がともに支え合う『ゼロカーボン×交通まちづくり』」

pdf資料1-3(藤川まゆみ)(4.82MB)

第2部:日本版シュタットベルケに関する京都大学側研究チームの学術研究発表

17:35 - 17:55
太田隆之(静岡大学)
「(仮)脱炭素化を図る上での公営電気事業の役割と機能の検証」

pdf資料2-1(太田隆之)※無断引用不可(896.1KB)
内容の取扱いにはご注意いただき、無断引用はお控えくださいますようお願い申し上げます。

17:55 - 18:15
白石智宙(広島修道大学)
「『日本版シュタットベルケ』とケーブルテレビ事業の可能性」

pdf資料2-2(白石智宙)(1.05MB)

18:15 - 18:35
鈴木伸(京都大学博士課程)
「フィンランド自治体財政における公営エネルギー事業―日本版シュタットベルケへの示唆」

pdf資料2-3(鈴木伸)(9.91MB)

18:35 - 19:30
総合討論(コーディネーター:諸富徹)

※終了時刻は若干前後する場合がございます。

4.参加定員

約300名様
※セミナーの録画および録音等はご遠慮いただいております。

5.参加費

無料
※事前のお申込みが必要です。

6.参加のお申込みについて

ご参加をご希望される場合は、下部URLよりお申込みいただきますようお願い申し上げます。
▼参加申し込み
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_pf931nJqRO6D7AOwYUwqCw

7.セミナー使用システムについて

Zoomウェビナーを使用してのオンラインシンポジウムとなります。
主催者側からお送りするURLにアクセスいただくことでご参加いただけます。
※通信料はご参加者さまご負担となりますので、Wi-Fi環境下でのご参加をおすすめします。

8.その他・開催進行について

ご質問は、Zoomの「Q&A」を使って受け付けますので、「Q&A」に質問事項をご記入ください。可能な限り、回答させていただきます。

※報告資料について

開催当日の9:00以降に講座HPならびに以下リンク先に順次掲載させていただきます。
https://drive.google.com/drive/folders/1J1irrLBocwd-gdNNNp3-lcj7YxHcqhT6?usp=sharing
なお、登壇者による資料は一部非公開とさせていただいているケースもございます。すべての報告資料が公開されるわけではない点、予めご了承ください。

※本研究会は録画され、公開研究会終了後に再エネ講座HPでの公開を予定しております。

ご不明な点につきましては下記までお問合せください。

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京都大学 大学院 経済学研究科
再生可能エネルギー経済学講座
〒606-8501 京都市左京区吉田本町
E-mail:ree.kyoto.u@gmail.com
電話:075-753-3474
Website:https://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/stage2/top/
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