Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

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No.16 石炭火力発電と原発のフェーズアウトの日本経済と環境影響分析
- E3MEマクロ計量経済モデルを用いた分析-

2020年6月2日
李秀澈*・何彦旻昔宣希諸富徹・ Unnada Chewpreecha・Hector Pollitt
*名城大学経済学部産業社会学科 教授

 本稿では、「発電部門の石炭火力・原発のフェーズアウトは経済と両立が可能か」という「問い」に対して、マクロ計量経済モデルを用いて定量的な回答を求めた。すなわち石炭火力と原発の新規建設は行われずに、減価償却期限が到達したものから順次閉鎖する発想から2050年までにフェーズアウトした時に、経済(GDP、雇用などマクロ経済)と環境(電源部門の二酸化炭素排出)に与える影響について、E3ME(Energy-Economy-Environment Macro Econometrics) モデルにより推定を行った。
その結果、2050年までの長期を想定する場合、いずれのシナリオでも経済に悪い影響は殆ど与えないことが確認された。その要因として2050年までの長いタイムスパンでは、再生可能エネルギー発電のコストが持続的に下落し、それが既存の石炭火力と原発を代替しても、経済への負担にはならないという事情を挙げることができる。そして 発電部門における2050年の二酸化炭素排出量は、石炭火力フェーズアウトケースは、2017年より40%ほど削減された。

キーワード:石炭火力フェーズアウト、原発フェーズアウト、E3MEマクロ計量モデル、低炭素電源、日本経済影響、二酸化炭素排出量