Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

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No.34 韓国温室効果ガス排出量取引制度及び第1期計画期間(2015-2017)の企業の炭素経営

2021年6月8日
長崎大学大学院
水産・環境科学総合研究科
准教授 昔宣希

 本ディスカッションペーパーは、韓国排出量取引に関連するシリーズペーパーとしては、制度設計、割当方式、取引市場の現状について記述した以前ペーパーに続いて、韓国の温室効果ガス排出量取引制度の導入、背景と政府体制の特徴を分析し、また、ビジネス側の観点を中心に、K-ETS導入と運用をめぐる主なイシューを把握した。また、第1期のETS対象企業の対応現状を整理した。K-ETS導入の主要なギアとなったのは、韓国政府が省エネと温室効果ガス削減政策の原則を自主規制から交渉合意に切り替えた後、市場メカニズムを活性化する政策(炭素価格)へ転換したことと思われる。また、これに対して、企業が、K-ETSの導入に強く抵抗して、低い政策受容の立場を示したが、それにもかかわらず、政府の大々的政策転換に対して一方的な反対より妥協策を模索したことも考えられる。第1期間の初期段階では、企業は割当権に内在された限界を単に総量準拠の問題として認識し、したがって、炭素市場を観望(wait and see)する傾向を示した。しかし、第1期末には、経営陣の認識と関心が高まり、特に大企業では、内部炭素価格を設定して、積極的な炭素経営を実施したことが見られた。K-ETSと産業のこのような経験は、炭素価格の導入を準備または検討している他の国や地方政府に参考のものになるだろう。

キーワード:炭素経営、企業の見方、温室効果ガス排出量取引制度、内部炭素価格、韓国